ビジネスQ&A

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経営者のよくあるお悩み一問一答

Q
省エネ2019.08.08
Q1336. ポンプや送風機の回転速度調整による省エネとは?(その3)

A.

これまで、(その1)と(その2)で、ポンプや送風機にインバータを取り付け、回転速度を下げて流量を減らすことにより消費電力を大幅に削減できることなどを示しました。今回は、その回転速度調整の効果に大きな影響を与える実揚程について記します。

1.実揚程とは

ポンプを用いた設備では、図1のように、ポンプは配管内での抵抗および吸込みと吐出の高さの差に勝ち、かつ、所定の流量を出す必要があります。それら抵抗などの合計が(その2)で述べた全揚程です。

図1 実揚程と損失

その全揚程は、図2に示すように次式のように成り立っています。
全揚程=実揚程+配管損失水頭+吐出し速度水頭 ... ①
ここで、実揚程は液体を上に持ち上げる仕事で図1のように、次式で表せます。
実揚程[m]=吐出し水位-吸込み水位 ... ②

図2 全揚程の内訳

吐出し量(流量)との関係の観点から、この実揚程は図3のように流量にかかわらず一定であるので固定抵抗といいます。

一方、配管の抵抗による損失や吐出し速度のエネルギーによる損失は流量により変わるため、変動抵抗といい、図3のように、流量の2乗に比例します。

以上から、流量を減らした効果が現れるのは、全揚程から固定抵抗、すなわち実揚程を差し引いた変動抵抗分であり、実揚程分には効果がないことがわかり、次式が成り立ちます。

変動抵抗=〔全揚程-固定抵抗(実揚程)〕∝流量2 ... ③

(注) ∝は「比例」の関係を表す数学記号

したがって、流量調整(減少)による省エネを検討する際には、実揚程と全揚程を把握することが必要です。

図3 全揚程と固定抵抗

2.実揚程がほとんどない場合

流量調整による省エネ効果が出ない実揚程ですが、実際には実揚程がゼロに近い場合が多いのでその例を挙げます。

図4は、大型ビルにおけるセントラル空調で、冷水をチラーと空調機との間でクローズドで循環している場合のイメージ図です。この場合は密閉回路になるため、実揚程はゼロになります。

この図4はビル空調の例ですが、工場において、チラーからの冷水を、冷却器(熱交換器)に送り製品を冷却する回路も同様の図となり、密閉回路ですから実揚程はゼロになります。

図4 密閉回路の例
図5 冷却塔の例

図5では、ポンプから6.6mの高さで吐出されていますが、式②のように、実揚程は吐出し水位と吸込み水位の差ですから、ポンプの位置は関係ありません。 この図では実揚程は1.1mです。

以上のように、実揚程がゼロであったり、ゼロに近い例が多くあります。そのような場合には大きな省エネ効果が期待できます。

また、実揚程は単純な、水位の差ですので、(ゼロでない場合も)比較的容易に計測できます。次は、全揚程を求めることが課題になります。

3 圧力計等による全揚程の把握

 

ポンプの運転管理のために、多くの場合、吐出し側に圧力計、吸込み側に真空計等が取りつけられています。これらの圧力計などを利用し、全揚程を把握することができます。

このとき、揚程の単位は[m]ですが、圧力計の読みの単位は[Pa]です。したがって、換算が必要であり、以下のように行います。
圧力と揚程の関係は次式のようになります。3 )

P = ρ g H ... ④
これから
H = Pg ... ⑤
ここで、
P :圧力[Pa]     (注) Pa = N/m2であり、 N = kgm/s2
ρ:流体の密度[kg/m3
g :重力加速度[m/s2
H :揚程[m]

すなわち、水の場合、
ρ=1000 kg/m3g =9.80 m/s2ですから、圧力P =0.098 MPaのとき、揚程は式⑤により、
H =10 mになります。

(1) 吸上げの場合

全揚程と圧力計等の読みの関係は図6のようになります。
したがって、
全揚程=圧力計の読み+真空計の読み+吐出し速度水頭-吸込み速度水頭 ... ⑥
ここで吐出し口径と吸込み口径が同じとき(注)は「吐出し速度水頭-吸込み速度水頭」はゼロになるため
全揚程=圧力計の読み+真空計の読み ... ⑦
となり、圧力計等の読みで全揚程がわかります。

(注)式⑥において、「吐出し速度水頭-吸込み速度水頭」は他の項にくらべ数値が小さいため、ここでは、吐出し口径と吸込み口径が同じでなくてもゼロと仮定します。

実揚程は、図6の「実揚程」で示される液面の高さの差です。

図6 圧力計と揚程(吸上げの場合)

(2) 押込みの場合

全揚程と圧力計等の読みの関係は図7のようになります。
吸込み側の連成計の読みが正の場合、
全揚程=吐出し側圧力計の読み-吸込み側連成計の読み
となります。

実揚程は、図7の「実揚程」で示される液面の高さの差です。

図7 圧力計と揚程(押込みの場合)

4 省エネ効果の概算

これまで述べた方法で、現状の全揚程と実揚程がわかれば、流量を減少させたときの省エネ効果を以下のように概算できます。

(1) 全揚程の計算

流量をQ1からQ2に減らしたときの前後の全揚程をそれぞれHt1Ht2 、実揚程をそれぞれHr1Hr2とすると
式③から(全揚程-実揚程)が流量の2乗に比例するので
Ht2 - Hr2 ) / (Ht1 - Hr1) = ( Q2 /Q1 )2 ... ⑧
ここで、たとえば、流量減少比Q2 /Q1 = 0.8、実揚程は変わらず、Hr1 = Hr2 = 2.5 [m]、現状の全揚程をHt1 = 10.0 [m]とすると、式⑧から流量減少後の全揚程が
Ht2 = 7.3 [m]
と求まります。

(2) ポンプの省エネ効果

ポンプの動力P[kW]は以下のように表されます。
P = k×Q×H ... ⑨ 2)
ここで、
k : 流体の密度、ポンプの効率等による係数
Q : 流量[m3/min]
H : 全揚程[m]
式⑨の各項に、現状は「1」、流量減少後は「2」の添え字を付け、前者で後者を除すると以下の式が成り立ちます。
P2 / P1 = ( Q2 /Q1 ) ・ (H2 /H1 ) ... ⑩
ここで(1) より
Q2 /Q1 = 0.8
H1 、H2 は(1) ではHt1Ht2ですので、
H2 /H1
= 7.3/10.0
= 0.73
このとき⑩から
P2 /P1 = 0.58
となり、42%の省エネになります。

(注)インバーターを新たに取り付ければ、インバーターによるロスが5%ほど生じます。

以上のように、実揚程がゼロでなくても、現状の全揚程、実揚程を求めれば、流量を減らしたときの省エネ効果を概算できます。

(注)(その2)では、実揚程をゼロとしたため、全揚程Hが流量Qの2乗に比例することからポンプの動力Pが流量の3乗に比例するとして省エネ率を計算しました。


【参考文献】
1) 水口雄二朗、楽勝!ポンプ設備の省エネ、(財)省エネルギーセンター、2010、p.71
2) 高田秋一、堀川武廣、わかる!ポンプの選び方・使い方、(株)オーム社、2000、p.10、p.12、p.29
3) 公益社団法人 空気調和・衛生工学会、空気調和・衛生工学便覧(第14版)、2010、vol.2 、p.4、p5、p.6

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