ビジネスQ&A

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経営者のよくあるお悩み一問一答

Q
製造・設備2017.11.15
Q1268. 5Sを後戻りさせないためにはどうしたら良いですか?

 昨年、カンボジアに縫製工場を開設し、本格生産に入りました。品質及び生産性は5Sからが当社のモットーであり、早速日本から改善担当者を送り5S活動をスタートしました。1ヵ月程度の活動で見違えるようにきれいになりましたが、現地訪問の際工場に入ってみると乱雑な状態に戻っていることが発見されました。その後何度かテコ入れを図るものの後戻りを繰り返しています。どうしたら良いでしょうか?

A.

 日系企業の多くは国内では5Sがほぼ完成しており、維持するための仕組みや組織もあることから、5Sの本当の意味を理解せずに、国内工場の5Sをそのまま海外工場に持ち込んでいるケースが大半で、5Sを継続させるのは難しいという悩みを意外に多く持っています。
 しかし本当の5Sができていれば継続は可能であり、5Sそのものに継続のための仕組みがビルトインされています。以下に5Sの勘違いとそれを正す本当の「5Sの意味」を解説します。

【清潔の意味とは?】

5Sを「整理・整頓・清掃・清潔・躾」と多くが理解していますが、「清潔」の正しい理解は「標準化」であり、3S(整理・整頓・清潔)の状態を維持することです。「清潔」を国語辞典で引くと、「清潔な身なり、清潔な人柄」という意味が出てきます。これをそのまま「5Sの清潔」の意味として理解している例が非常に多く、現場改善コンサルタントの間にも誤解が蔓延しています。ある企業の5S巡回チェックリストの項目には、「清潔」の項目に、「帽子、作業服、作業靴の着用が正しいか?」、「頭髪、爪の長さが適切か?」という項目がありました。これらは「標準化」をチェックするものではなく、「躾」のチェック項目とすべきです。

【躾の意味とは?】

同様に「躾」を国語辞典で引くと、「子供などに礼儀作法を教えて身につけさせること」という解説があります。5Sにおける躾とは、「3Sを習慣づけ維持し、更により良い方法を探究すること」、「職場のルールや規律を守ること」、「決めたことを必ず守るように徹底すること」を指します。これらは日本人では当たり前のことですが、海外工場の従業員は学校できちんと学ぶことができずに就業している場合もあり、就業前にセミナーを開いてきちんと説明しないと基本的なことを実践できません。また転職率が高く、新しく採用した従業員の5S知識はゼロですので、きちんと教育してから現場に配置しないと、苦労して構築してきた5Sが崩れてしまう元凶となります。
 ここまで説明してきた正しい5Sの理解を以下の図1に示しました。最初の3つのS(整理・整頓・清掃)を繰り返し実施するためには標準化(4S)が必要です。また3Sの習慣づけやルールの遵守のための躾(5S)も必要で、整理・整頓・清潔のサイクルを繰り返し実施し、5Sのレベルを向上させる原動力となります。

図1 5S維持改善図

【5Sリーダーの設置】

日本人の相互監視能力は高く、特に悪い習慣を見つけた場合には、指摘や忠告は躊躇なく従業員間で行われます。ところが海外の工場では従業員はお互いに無関心で、いわれたことだけを就業時までやればよいという考えが強く、悪いやり方や習慣は放っておくとそのままとなり、よい方法や習慣が崩れ始めます。「朱に交われば赤くなる」という諺がありますが、海外工場においては、従業員は悪い習慣ばかりを真似てしまう傾向にあります。
 このような悪いやり方や習慣を直ちに正す役割を持つ者を各職場に配置する必要があります。これが「5Sリーダー」です。一般的には、スーパーバイザーが任命されるケースが多いですが、現場経験が2年以上ある、関心の幅が広い、他の従業員と積極的にコミュニケーショができる、5Sについて正しく理解し実践できる、という要件で一般従業員の中から選抜するのも1つの方法です。
 また、職場リーダーにはインセンティブを与えることが必要であり、手当を付けたり、実績が上がった場合には表彰し給与を増額したりするなど処遇します。

【経営者の後押し】

通常、5Sの状態を維持・改善するために5Sチームを組織し定期的に巡回しますが、上記の5Sリーダーは5S巡回チームの構成員となり、工場長がリードします。海外工場ではなかなか優秀な人材、特によいやり方や習慣を経験した従業員は多くなく、活動は停滞しがちになりますので、経営者の強力な後押しが必要です。5S巡回を工場長の年間の行動計画に入れさせ、実施結果を数値化し報告を義務付けることが必要です。また外部コンサルタントを採用し5S巡回や社員教育に当たらせ、工場長をフォローさせることも検討に値します。

日本はものづくり大国として名を馳せており、そのレベルは世界一といっても過言ではありませんが、長いものづくりの歴史の中で5Sの導入を経験した方々は既にリタイアしており、完成された仕組みが優秀な後継者により維持されています。一方、海外の多くの工場は今まさに構築段階です。今一度5Sの意味と仕組みを再確認され、海外工場の実態に合った構築・維持方法を検討されることをお願いします。

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