ビジネスQ&A

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経営者のよくあるお悩み一問一答

Q
省エネ2017.11.01
Q1196. 超低温冷蔵(マグロの冷蔵に求められる温度)について

A.

 マグロ、カツオなどの大型の高級魚の貯蔵に使われる保管温度マイナス50℃以下の冷蔵倉庫は、超低温冷蔵倉庫(F4級)と呼ばれます。これまで超低温冷蔵倉庫でよく使われていた冷媒はR-22でした。R-22は2020年に製造自体が全廃と決められていますが、誰もが納得する新冷媒は見つかっていないのが現状です。

マグロ、カツオなどの大型の高級魚の貯蔵に使われる保管温度マイナス50℃以下の冷蔵倉庫は、超低温冷蔵倉庫(F4級)と呼ばれます。

大西洋やインド洋などで獲ったマグロは鮮度を失わないように船上でマイナス60℃以下に凍結され、冷蔵庫で保管し、日本に移送します。その後、各地の港に着いたマグロは全国にある約400か所の超低温冷蔵倉庫に保管され、出荷されます。これまで超低温冷蔵倉庫でよく使われていた冷媒はR-22ですが、R-22はQ1195の通り、特定フロンとして2020年に製造自体が全廃と決められています。超低温冷蔵倉庫は1960年代のマグロブームを契機に建設されたものが多く、老朽化が進んでおり、2010年以降に更新時期を迎えるものが多数あります。残念なことに、誰もが納得する新冷媒は見つかっていないのが現状です。

多くの冷凍食品の保管温度はマイナス25℃以下でよく、その温度は自然冷媒であるアンモニアでも十分に冷却でき、冷凍機とモータを一体化することでアンモニア漏洩のリスクを低減した密閉型圧縮機が商品化されています。

アンモニアの大気圧での沸点はマイナス33℃で、マイナス45℃程度までの冷却は可能ですが、それ以下の低い温度、例えばマイナス60℃を実現するには冷却するためのエネルギー効率が非常に悪くなります。

すなわち、蒸気圧縮冷凍サイクルでは、気体の冷媒を圧縮機で圧縮し(下図1→2)、凝縮器で冷却して圧力の高い液体をつくり(2→3)、膨張弁で圧力を下げ(3→4)、蒸発器で気化させ潜熱で周囲から熱を奪い(4→1)ます(出典:FNの高校物理、熱機関の効率(冷凍サイクル))。

蒸気圧縮冷凍サイクル

Q1177で説明した低温側の成績係数(COP)は、[QL冷媒の吸収熱量(奪った熱量)÷Winコンプレッサの仕事量]と定義され、T-s線図では[ピンク色の面積÷黄色の面積]、p-h線図では[(h4-h1)÷(h2-h1)]として表されます。

圧力が高いほど飽和蒸気温度は高くなります。したがって、低温を要求されるほど蒸発器での蒸気圧が低くなることが両線図から理解できます。すなわち、低温を要求されるにしたがって仕事が増え、COPは低下します。低温側温度として5℃程度でも十分な家庭用エアコンではCOPとして3~6程度が期待できるのに対し、超低温冷蔵倉庫では0.4~0.7程度にまで低下します。

そして、このようなCOPが低くなってしまう超低温冷蔵倉庫では、蒸気圧縮冷凍サイクル以外のガス冷凍サイクルも代替候補となります。ガス冷凍サイクルは蒸気圧縮冷凍サイクルと違って等温的な熱交換・熱伝達ができず(下図2→3、4→1の過程で温度が変化)、COPは低くなってしまいます(出典:FNの高校物理、熱機関の効率(冷凍サイクル))。

ガス冷凍サイクル

しかし、空気を冷媒に用いることで、不燃で毒性が無くオゾン層破壊係数(ODP)も温暖化係数(GWP)もゼロが実現できます。

この空気を冷媒として使用する超低温冷蔵倉庫は、開発・商品化され、販売されています。そして、1. 膨張弁の代わりにタービンを設け動力を回収、2. 超低温冷蔵倉庫内にエアークーラーがないためファン動力が不要、3. エアークーラーがないため超低温冷蔵倉庫内にデフロストのための熱の投入が不要など、従来のフロンを冷媒として使う超低温冷蔵倉庫に対し40%程度の省エネを図ることができます(下図:出典は空気冷媒でマイナス60℃を実現する超低温冷凍システム、NEDO実用化ドキュメント)。

  従来のフロン冷凍システム 空気冷凍システム『パスカルエア』
適用温度帯 -80~-50℃ -100~-50℃
成績係数COP
(庫内温度-60℃)
0.4 0.5
エネルギー消費
(庫内温度-60℃)
100 60
課題・特徴 ・フロン冷媒使用期限
・庫内デフロスト必要
・外気温の性能への影響大
・COPの優位性の高い温度帯への適用
・空気中水分の影響小とする装置の導入
・設備コストが高い

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