世間ではセクハラが大きくクローズアップされています。当社でもセクハラ対策をしようと思いますが、職場内でセクハラ対策はどのように行えばよいのでしょうか。
就業規則などでセクハラに対する方針を明確化すること、研修などによる啓蒙活動、苦情処理機関や相談窓口の設置といったことがあげられます。また、セクハラが実際に起こった場合の対応手順を定め、迅速に対応できる体制にしておきましょう。
セクハラとは、セクシャル・ハラスメント(sexual harassment)の略語で、一般的には、「相手方の意に反した性的な性質の言動を行い、それに対する反応によって仕事をするうえで一定の不利益を与えられたり、それを繰り返すことによって就業環境を著しく悪化させること」とされています。男女雇用機会均等法でも企業にセクハラ防止義務が課せられています。
セクハラの種類として、対価型と環境型があります。対価型とは、たとえば上司が部下の女性に対し、その優越的地位を濫用して(拒否すれば不利益を受ける可能性を示唆して)性的要求を行うなど、女性労働者が対応いかんで、労働条件につき不利益を受けるものです。一方、環境型とは、たとえばヌード写真を職場に掲示する、必要もないのに女性従業員に触れるなど、女性労働者の就業環境が害されるものをいいます。
以下に、セクハラ発生防止を主眼においたセクハラ対策について説明します。
図1 セクハラ対策サイクル
社内報やミーティングなどでセクハラについて取り上げただけでは、対策としては不十分です。「セクハラを許さない」という方針を、社内ルールとして従業員に徹底させるためには、就業規則などへの記載・労働協約の締結など書面による明確化が必要です。上記対価型と、環境型のうちヌード写真の職場掲載は、明らかに違法なケースですから、就業規則の賞罰の対象として、厳しく取り締まることが必要です。
問題は、環境型のうち女性従業員と接触するケースです。挨拶のつもりで肩を叩く、髪型を変えた女性に「似合うね」と声をかけるなどの場合には、女性従業員がどのように感じるかでセクハラになったり、ならなかったりします。程度いかんにより、ただちに違法=損害賠償とはならないでしょうが、企業としては「李下に冠を正さず」という対策でいく必要があります。無用の身体的接触や容姿、結婚・妊娠などに関する発言は、慎むよう啓蒙パンフレットの配布や、研修の実施など、従業員教育を行う必要があります。
次に、セクハラについて女性従業員が相談できる体制(苦情処理機関の設置など)を確立してください。すでに苦情処理機関や相談窓口を設置している場合は、苦情・相談窓口は相談しやすくなっているかを点検してください。「いままで相談は1件もない=社内でセクハラはない」とは限りません。相談が1件もない場合、相談者にとって近寄りがたい窓口になっている可能性もあります。必要に応じて、女性労働者の意見も聞きながら、相談担当者を誰にするか(たとえば社内でのポジション、男性・女性の別、セクハラについて十分理解しているかなどを考慮する)、またプライバシーが守られるよう、窓口の設置場所を配慮するなど、利用する者の立場になって十分検討してください。
不幸にしてセクハラが発生した場合には、迅速・適切に対応しなければ、問題がこじれるだけでなく、再び同様の問題を引き起こすことになりかねません。そのためにも、問題が生じた場合の担当部署や対応の手順などをあらかじめ明確に定めておく必要があります。
また、問題発生時に迅速な対応がとれるよう、セクハラ問題の担当部署・責任者を決めておいてください。
なお、セクハラの事実確認を行う場合は迅速に開始し、被害者の心情、関係者のプライバシーに十分配慮したうえで、双方の主張を公平に聴き取りましょう。セクハラがあったと確認できた場合は、必要に応じて加害者への制裁を含めた雇用管理上の措置をとることになります。
セクハラが起った場合には、従業員全員に対して再度「セクハラを許さない」という方針を徹底させるとともに、管理者が職場環境へ十分な目配りをすることが大切です。
事実確認の結果、セクハラの事実がなかった場合でも、セクハラと受け取られかねないような言動が日常的に行われていないかを点検し、改善に努めましょう。また、相談した者をトラブルメーカーとして特別視したり、「社内で相談しても無駄だ」といった雰囲気になっていたりしないかなど、その後の対応にも十分配慮することが必要です。