753
融資
- Q779.東日本大震災の再興に活用できる国の支援策について教えてください。
- 東北にて食品製造業を長年営んでいましたが、津波により市場に隣接する食品工場は建物・設備ともに完全に流され、事業停止を余儀なくされました。幸い物流センターは、水をかぶったものの建屋は残り、壊れた機械の修理や車両等の購入を行えば、事業再興は可能です。食品工場の返済資金を含めてかなりの金額の借入れが必要ですが、借入れは可能でしょうか。また国の支援策は、どのようなものがあるのでしょうか。
A.事業再建を進めるうえでは、既往債務の返済猶予と有利な条件での新規借入が必要となりますが、両面において政府から資金繰り支援策が講じられていますので、活用が可能か検討してみましょう。一方、二重債務については支援策が第二次補正予算で決定されており、事業再建に向けた環境整備は整いつつあります。これら支援策について調査するとともに、企業体力を考慮した経営計画の策定を慎重に進めましょう。
【東日本大震災の被害】
2011年3月11日に発生した東日本大震災は、マグニチュード9.0を記録した地震と最高40mにも到達した巨大な津波により、東日本太平洋側沿岸部に未曾有の被害をもたらしました。この地震により、東日本の太平洋側沿岸部に所在する企業の多くが、工場や事業所、事業設備の損壊、喪失等の甚大な被害を受けました。
東京商工リサーチによれば、地震と津波により被害を受けた東北四県(青森県・岩手県・宮城県・福島県)の太平洋側沿岸部の44市区町村の被災地にあった企業数は32,341社、売上規模は9兆8,982億円にのぼります。特に、2008年秋のリーマンショック以降の不況により体力を弱めていた中小企業にとっては、今回の震災が追い討ちとなり、再建が困難な状況に追い込まれているところも少なくありません。
【既往債務に関する支援】
政府は3月11日付けで、経済産業省から日本政策金融公庫、商工組合中央金庫及び信用保証協会に対して、また金融庁から銀行や信用金庫等の民間金融機関に対して、中小企業者に対する既往債務の返済猶予等の条件変更への柔軟対応・審査等貸し出し手続きの簡素化を要請しています。同様にリース機関に対しても、中小企業者に対するリースの支払猶予について、柔軟かつ適切に対処するよう要請しています。
これを受け、正常な既往債務については、政府系金融機関・メガバンク・地域金融機関とも、被災企業に対しては極めて柔軟に対応していますので、御社としては、食品工場の返済資金については返済猶予及び軽減対応を積極的に申し込み、事業再開に向け動き出すと良いでしょう。
【新規借り入れに関する支援】
1.東日本大震災復興特別貸付
この貸付制度は、事業の復旧に必要な設備資金・運転資金を長期低利で融資します。貸付対象は、直接被害者・間接被害者(直接被害者との取引き依存度が2割以上)・その他震災の影響により業況が悪化している企業(風評被害を含む)です。貸付限度額は、中小事業7.2億円・国民事業4,800万円、貸付期間は運転8年・設備15年です。据置期間は最大3年、貸付利息は中小事業1.75%・国民事業2.25%です。
この貸付制度には、直接被害者・間接被害者に対する別枠があり、貸付限度額の増額や貸付期間及び据置期間の長期化の取り扱いがあります。
2.東日本大震災復興緊急保証
既存の災害関係保証やセーフティネット保証に加えて、直接的または間接的(風評被害を含む)に著しい被害を受けている中小企業を対象として、保証限度額をさらに拡充した信用保証制度が整備されています。上記の新規貸付制度の詳細については、日本政策金融公庫及び信用保証協会に問い合わせをお願いします。
【二重ローン問題】
しかし、これら支援策は新たな借入れを強いるものであり、既往債務の返済のめどが立たない状況の中では、新たな借入をすることは難しいのが実情と思われます。政府は、被災者の生活や事業の早期再建を進めるためには、既往債務の軽減が不可欠であるとの観点から、第二次補正予算で二重ローン対応策が盛り込まれたところです。
中小企業および農林水産業向けでは、中小企業基盤整備機構や民間金融機関などが出資する「中小企業再生ファンド」を被災県に設立し、過剰債務を抱えていても事業再生の可能性がある中小企業に対して、出資や債権買い取り、あるいはデッド・エクイティ・スワップ(DES)を含めた支援を行うこととなりました。
一方、事業再生が困難な個人事業主に対しては、法的手続きによらない債務整理として、法人企業と同様に「私的整理のガイドライン」を策定し、自己破産を回避することが盛り込まれています。
このように震災復興に向けての政府の支援策が明らかになりつつあり、事業者としてこれらを活用した事業計画の策定が期待されるところです。これまで説明してきた震災対応は、未曾有の大災害を考慮したものですが、時間の経過ととともに復旧が進捗する中では、やがて明確な見通しに基づく経営計画や資金返済計画の策定が求められることとなりますので、これまで以上に慎重な事業判断と専門家の活用が必要となります。
- 関連情報
- <ここに注目!中小企業支援施策[平成23年度版]>(J-Net21)
http://j-net21.smrj.go.jp/know/guideBook/index.html - <東日本大震災関連情報>(中小企業庁)
http://www.chusho.meti.go.jp/earthquake2011/index.html - <東日本大震災に関する中小企業支援策>(中小企業基盤整備機構)
http://www.smrj.go.jp/kikou/earthquake2011/ - <東日本大震災により被災された皆さまへの支援態勢について>(日本政策金融公庫)
http://www.jfc.go.jp/c_news/news_bn/news230318.html - 回答者
- 中小企業診断士 林 隆男
2012年1月20日更新
融資
- Q779.東日本大震災の再興に活用できる国の支援策について教えてください。
- Q265.資金繰りが苦しいときに相談にのってくれるところはありますか?
- Q264.金融機関からの借入を円滑に進めるにはどうすればよいでしょうか?
- Q257.店舗改装のため低利の融資を受けたいのですが、どのような制度がありますか?
- Q262.レストランを開くのに必要な資金の融資を受けたいのですが、アドバイスをお願いします。
- Q259.民間の銀行以外から資金調達をする方法について教えてください。
- Q256.債務超過でも活用可能な中小企業支援策はありますか?
- Q255.融資を受けられずに困っています。どうしたらよいでしょうか?
- Q254.小規模企業を支援する融資制度はありませんか?
- Q258.より低い金利で資金調達をしたいのですが、よい方策はありませんか?
- Q675.ものづくりに取り組む中小企業への支援はありますか?
- Q591.流動資産担保融資保証制度について教えてください。
- Q585.政府系金融機関の再編について教えてください。
- Q260.メインバンクとの関係づくりのポイントについて教えてください。
