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採用・退職・解雇

Q658.本意ではない解雇の申し渡しは有効なのでしょうか?
私は会社の経営者ですが、会議の席で従業員と運営上の口論になり、つい「お前なんか解雇だ」と言ってしまいました。すると、次の日からその従業員は出社しなくなり、数日後、退職金・解雇予告手当・慰謝料の請求がされてきました。その従業員を解雇するつもりはまったくなかったのですが、今後どのように対応すればよいでしょうか?

A.経営者の不用意な発言は、大きなトラブルを招きます。とくに解雇の言い渡しの場合、たとえ本意でなくても相当の事由のない限り、発言者の側からは撤回できないと考えられています。問題解決には多大な労力が必要となります。

労働契約法第16条には、解雇について次のように書かれています。「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」このことから、権利を濫用された側(労働者)は、その無効を訴えることができると解釈されています。
 しかし、本条により、権利を濫用した側(経営者)から解雇の無効を主張することはできないと考えられています。「権利の濫用は、これを許さない(民法第1条第3項)」の趣旨から、権利を濫用した側が、さらに権利を行使するというのは、法律の趣旨に矛盾するからです。

【解雇の意思表示の基本的な考え方】

質問の場合のように、会議の席上で「解雇」を言い渡してしまい、従業員がそれを過失なく応じてしまうのであれば、解雇は有効なものとして取り扱われます。この場合、即時解雇の規定が適用され、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払う義務も生じます(労働基準法第20条)。
 経営者の側から解雇の言い渡しが撤回できるのは、非常にレアケースに限られています。たとえば宴席上であり、誰の目から見ても冗談であると取れるような言い渡しの場合や、人事権限がまったくない者が言い渡した場合などが撤回できる場合に当たります。通常の職務行為中に人事権限を有する者が解雇を言い渡した場合、相手方がそれを本意として受け取ってしまえば、その言い渡しは有効となると考えられます。

【意思表示撤回の具体的な対応】

しかし、上記の説明は紛争が起きた場合の法律上の解釈にすぎません。まずは、紛争を回避すべく従業員に誠心誠意謝罪をし、解雇が本意でなかったことを伝えることが必要です。
 そのためには、解雇言い渡し後、復帰するまでの期間は出勤したものと取り扱う、謝罪金として手当てを支払うなど、本人が戻りやすい環境づくりも必要です。
 また、話し合いによる場合には、弁護士や社会保険労務士などの専門家や、地方自治体の運営する労働センターなどに仲裁をしてもらうほうがよいでしょう。本人同士で話を進めようとすると、とかく感情的になりがちです。中立の立場の第三者を介在したほうが、話はスムーズに進むと思われます。
 それでも頑なに従業員が復職を拒む場合には、残念ですが無理に復職させることはできません。解雇予告手当(平均賃金の30日分以上)、退職手当(退職金規程のある場合)、そのほか本人の権利に帰属する金品がある場合には、すみやかに引き渡しましょう。
 本意でなくとも、不用意な発言はトラブルの元です。くれぐれも自らの発言には充分注意しましょう。

関連情報
<Q124.従業員を解雇する場合の留意点・手続きなどを教えてください。>(J-Net21)
http://j-net21.smrj.go.jp/well/qa/entry/124.html
回答者
中小企業診断士 大塚 昌子

2010年2月 4日更新

採用・退職・解雇


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