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採用・退職・解雇

Q654.採用内定取消しを行わざるを得ない場合の留意点を教えてください。
今春は新卒採用の内定取消しが話題となりましたが、当社においても来年の採用計画はあるものの、現状の景気動向を踏まえると内定取消しを考慮しなければいけない場面も想定されます。万が一、採用内定取消しを行わなければいけなくなってしまった場合の留意点を教えてください。

A.採用内定の取消しは解雇の場合と異なり、労働契約法に信義則が示されているのみで明確な基準条文はありません。ただし、一方的に内定を取り消すと、権利の濫用に取られることがあります。内定取消し回避に最大の努力をし、双方円満に解決を図ることが望まれます。

労働契約法第16条では、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、 その権利を濫用したものとして無効とする。」と規定されています。一度採用した労働者を解雇するには、「正当な理由」が必要となりますので、極めて慎重に採用を行う必要があると思われます。

【採用内定取消しの法的解釈】

では、採用内定の取消しは解雇に当たるといえるでしょうか?さまざまな議論はありますが、現行の法判断では、解雇には当たらないと解釈されています。つまり、平成21年現在、内定の取消しについては、確固たる法制化が行われていないのです。労働契約法第3条で、信義誠実に権利義務を履行することおよび、権利を濫用することがあってはならないことを定められているにとどまります。また、内定の取消しは、「思想の相違をもって取り消すことが可能」であると考えられています(三菱樹脂事件最高裁判決より)。

内定は、「停止条件付の労働契約を労使間で締結するもの」との考え方が主流を占めています。そして、内定の取消しに、著しい権利の濫用が認められる場合には、相手方は、債務不履行による損害賠償責任を負うべきであると考えられているのです。とくに内定の取消し理由が「景気の動向による経営の悪化」によるものだとすると、会社側の権利の濫用が著しいものとして判断されることとなります。そして、監督庁より企業名を公表されたり、社会的制裁を受けたり、場合によっては裁判に持ち込まれ、多大な賠償金を支払わなくてはいけない可能性もあります。

【内定取消しの留意点】

このように内定の取消しは、解雇のような強行法規によるルールが適用されているわけではなく、民事ルールに基づき、当事者間で納得のいく結論を導き出す努力をすることとなります。
 経営資源の中で、人材はとくに大切な要素であるといわれていますが、企業が成長していくためには、事業において必要となる人材を長期的スパンで育てていくという姿勢が求められます。景気動向を受け、人材育成計画に修正が必要となることはいたしかたありませんが、短絡的に単にコスト削減の手段として内定取消しなどの行動を選択するべきではありません。内定取消しに至るまでに、売上増加、利益増加のためいかに努力したか、また、ほかの経費項目のコスト削減、原価削減策でなすべきものはすべて行ったのかなど、経営サイドが現状の課題解決にどれほど真摯に取り組んできたのかが企業姿勢として問われるところです。内定者は、自社にとって顧客ともなり得ます。縁のあったことを大切に、できる限りの努力をすることで、内定取消しは最大限避けるべきであると考えます。
 内定取消しをせず、入社当初から休業させる場合でも、助成金・補助金の対象となりますし、また、採用内定を取り消された方(40歳未満)を正規雇用する場合などには、「若年者等正規雇用化特別奨励金」に該当する場合があります。各官庁および自治体が実施している補助金・奨励金の制度を活用して、人材活用に創意工夫することがのぞまれます。

関連情報
<採用内定取消し問題への対応について(企業名公表制度の施行等)>(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/01/h0119-2.html
<新規学校卒業者の採用内定取消し・入職時期繰下げ等の防止に向けて>(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/jakunensha07/index.html#02
<若年者等正規雇用化特別奨励金>(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/other34/seikiantei.html
<Q590.労働契約法と労働基準法はどのように違うのですか?>(J-Net21)
http://j-net21.smrj.go.jp/well/qa/entry/590.html
回答者
中小企業診断士 大塚 昌子

2010年1月21日更新

採用・退職・解雇


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