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変わる大手企業の購買戦略


「原価開示方式」導入で透明性アピール【Case.9 前田建設工業】

前田建設工業・岐部一誠経営管理本部副本部長兼総合企画部長

前田建設工業・岐部一誠経営管理本部副本部長兼総合企画部長

前田建設工業は施工に関する原価をすべて発注者に開示する新たな契約スタイル「原価開示方式」の導入を進めている。契約時に建設資材にとどまらず専門工事職人の日当まで、設計事務所も交えてあらゆる調達コストを詳細に見積もり、仕様・数量・単価を決める。この段階で工事原価(購買価格)に対する一定の手数料(フィー)が収益としてほぼ確定。さらに原価低減努力により実際の工事が安く上がった場合、差額の一部を報奨金(インセンティブ)として得られる。
 「関係者がイコール・パートナーとしてベクトルを合わせ、できるだけ安く調達できるようにする」(岐部一誠経営管理本部副本部長兼総合企画部長)という建設業界では前例のない取り組みだ。

工事保険代や光熱費などマネジメントの工夫や努力で低減が難しい項目はフィーの対象外。また、実際にかかった価格が高くなってしまった場合は増加分を罰金(ペナルティー)として一部負担する。フィーは10%が基本で、報奨金および罰金の分配/負担割合は事前協議で決めておく。同方式による受注実績は2006年からこれまでに4件あり、「5件目、6件目の案件が進行中」(同)。
 従来、建設業の商習慣では契約時に決めた工事請負代金が変わることはない。建設工事は完成までに1年以上要するケースもあり、昨年前半までの資源高騰が経営圧迫要因となったのは記憶に新しい。その一方、発注者側も「建設業者の見積もりは怪しい」という不信感を払拭(ふっしょく)できなかった。
 「だまし合いといったら言い過ぎかもしれないが双方の利害が一致することなく、建設費はブラックボックス化していた。原価開示方式では"よい建物をより安く"でベクトルが定まる」(岐部本部長)とメリットを強調する。

原価開示方式で受注した「多摩大学グローバルスタディーズ学部新築工事」

原価開示方式で受注した「多摩大学グローバルスタディーズ学部新築工事」

工事期間中、調達価格はインターネットで発注者や設計事務所に開示。信頼性を担保するため、定期的に第三者の会計監査法人の監査証明を受けた会計報告も行う。この仕組みでビジネスモデル特許を出願した。完成した建物の構造体について20年保証も付ける。
 前田建設が原価開示方式を導入した2006年は耐震強度偽装事件の余波が収まらず、ゼネコン大手でも鉄筋不足などのトラブルが頻発していた時期。原価開示方式の透明性・合理性が、新規顧客開拓の有力ツールにもなっているようだ。
 岐部副本部長は「いずれ協力会社も含めて、インセンティブとペナルティーが働く仕組みに発展させたい」と将来像を描く。

調達のポイント

協力会社のIT対応に期待

企業経営に「透明性」が強く求められるようになり、前田建設が原価開示方式で目指したのは業界に根付いていた"どんぶり勘定"からの脱却だ。同方式に対して当初、営業の第一線は疑問の声を上げたが、顧客側からも「過剰接待は迷惑」といった声が寄せられ、他社との過当競争を回避できる特命受注(指名発注)の有力ツールとなった。
 前田建設は業界の中でも3次元CADの導入が先行するなどITを生かした原価開示方式の基盤があった。建築物は完成までに多数の専門工事業者や資材・設備納入業者がかかわる。「最初の8億円の工事では見積もり作業に2カ月近くかかった」(岐部副本部長)というように、今後の展開で同社が協力会社にIT対応を期待しているのは間違いないだろう。


掲載日:2009年12月17日

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