
未来に向かい商店街を伸ばす京都三大祭りの中で最も古い歴史をもつ葵祭。この葵祭で知られる上賀茂神社(京都市北区)を西へ進み賀茂川を渡ると、御薗橋801(はちまるいち)商店街の入り口だ。街路は東西800mだが、名前の801には「未来に向かい商店街を伸ばしたい」との思いが込められている。スーパーや飲食店、美容院など約100店が立ち並び周囲には住宅地が広がる、一見どこにでもありそうな商店街だが、この801という数字が商店街の運命を左右する。 1986年発足の若い商店街で、近隣の京都産業大学や自治体と連携して活性化対策事業調査報告書を策定し、93年に振興組合に昇格した。2000年に歩道を整備し、商店街の体裁も整えた。この間、葵祭の見物客向け無料休憩所開設や周辺の商店街などと街づくり会議を開いたものの、03年には空き店舗が目立ち始めていた。 1日500円の出店費用と短期決戦で話題を呼ぶ![]() 夢のチャレンジショップ事業では、ユニークな店舗が数多く誕生した この流れを変えたのが、京都商店連盟(同市下京区)などの補助を得て行った05年の「夢のチャレンジショップ」事業だ。空き店舗を希望者に貸し運営を任す、ありがちな企画だが、期間を最長でも1週間に区切った短期決戦が話題を呼んだ。 事業は9〜11月の3カ月間だったが、出店費用が1日500円ということもあり、近畿一円から学生やお年寄り約50人がパン屋やカフェ、雑貨屋など思い思いの夢に挑戦。商店街に活気が戻り、空き店舗は減少。食品スーパーなども進出した。この新事業で“話題作り”の必要性を振興組合は実感した。 予期せぬブーム05年12月に地元名産の賀茂茄子を題材にした独特のキャラクターを商店街在住の芸大生が発案。「子供たちの人気者になれば」と振興組合は名前を公募し、商店街名の読み方を変え、『801(やおい)ちゃん』と命名した。この名前がネットの世界で話題を呼び、商店街のホームページに数万件のアクセスが殺到。おたく用語で男性同士の恋愛を描いた漫画などの俗称「やおい」では、との憶測が飛び交った。 ネーミングで話題を呼び、商店街の知名度も向上。801ちゃんも「キモかわいい」と人気が上昇。ファンがキャラを借り、ブログで4コマ漫画の掲載を始めた。この漫画が出版社の目に留まり、漫画本の出版にまで話は発展した。 ![]() オリジナルの801ちゃんグッズが並ぶ酒店 ネットで話題となった06年夏に作者が振興組合を訪れ、「商店街に人気が出れば」と公認。商店街の紹介と内容確認を行うという条件付きで出版も許可した。06年12月に発売された漫画「となりの801ちゃん」は30万部を超える大ヒット。巻末に商店街の紹介ページも入り、商店街で缶バッチなどのグッズも作ったからか、関東方面など遠方からの来訪者が増えたという。毎月15日の清掃活動用に801ちゃんをプリントしたトレーナーやTシャツを作成すると、グッズ欲しさに掃除を手伝う人まで現れた。同漫画は8月に2巻を発売。9月には実写ドラマがDVDで発売され、特典付録で商店街の紹介映像も収録されているという。 振興組合はブームをつかむため「801ちゃんプロジェクト委員会」を7月に立ち上げ、水木しげるロードで有名な鳥取県境港市を視察するなどの活動を始めた。振興組合員ならキャラ使用料も不要なのでオリジナルグッズを扱う店もある。だが、「コミックやネットの人気で訪問者は増えたが、この風をまだモノにできていない」と、同委員会丹山怛志委員は話す。 同委員会では3年以内をめどに801ちゃんの銅像設置を計画する。可能性を秘める801ちゃんだがグッズを扱う店もまだ少ない。このチャンスを生かし、商店街が一致団結し来訪者のニーズにあった街をどう形成するかが発展の鍵を握る。 京都府京都市 御薗橋801商店街の概要
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