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動産の登記

テーマ:企業の機関・形態

2005年4月28日

解説者

弁護士 松村昌人

不動産を譲渡する場合にはその旨登記を経由し、法人による債権譲渡の場合にも債権譲渡特例法による登記が可能となっていますが、今般、法人が動産を譲渡する場合にも、登記をすることができるようになります。平成16年10月12日に第161国会に提出された議案第18号「債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の一部を改正する法律案」では、旧債権譲渡特例法を「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」(以下、新法)と改題したうえ、法人がする動産の譲渡につき登記制度を創設しました。新法の施行日は、公布日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日とされています(新法附則1条)。


1、動産譲渡登記の仕組み

法人が動産を譲渡した場合、当該動産の譲渡につき動産譲渡登記ファイルに譲渡の登記をすることができます。具体的には、本店等所在地法務局等に、磁気ディスク(動産譲渡登記事項概要ファイル)が備えられ(新法12条1項)、動産譲渡登記が指定法務局等でなされると、本店等所在地法務局等に対し、当該登記をした旨等が通知されて(新法12条2項)、登記事項概要が譲渡人の動産譲渡登記事項概要ファイルに記録される仕組みとなっています(新法12条3項)。開示の方法ですが、登記事項概要証明書については、何人でも、その交付を請求することができます(新法11条1項)。譲渡の当事者、譲渡対象動産の差押債権者等の利害関係人は、概要のみならず、動産の譲渡について動産譲渡登記ファイルに記録されている事項を証明した書面(登記事項証明)の交付を請求することができます(新法11条2項)。


かかる制度の導入より、これまで、銀行が法人に融資をするにあたり動産を譲渡担保の方法により担保取得する場合のあり方が変容する可能性があります。すなわち、対象動産を債務者・設定者の手元に置く占有改定の方法で対抗要件を具備していたのを、これからは、外形上も識別が容易な動産譲渡登記制度によることが考えられます。債務者法人にとっても、資金調達のための多様性が広がることとなるという利点があります。もっとも、破綻時における再生のための流動性資産が限定されてしまうという影響もあるでしょう。


2、対象となる動産譲渡登記

対象となる動産は、法人が譲渡した動産です。但し、当該動産につき貨物引換証、預証券及び質入証券、倉荷証券又は船荷証券が作成されているものは除外されています(新法3条1項)。これは、証券が作成されている場合、その証券を用いた担保確保が考えられ、敢えて動産譲渡登記の対象とする必要性が乏しいこと、また、仮にこれを含めると証券の引渡しと登記との優先関係について紛糾が生じる可能性があるからです。


3、動産譲渡登記の効果(第三者対抗要件)

登記の効果ですが、動産譲渡の登記がされたときは、当該動産について、民法178条引渡しがあったものとみなされます(新法3条1項)。民法178条は、「動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。」(但し、第161回国会議案第17号「民法の一部を改正する法律案」による改正後のもの)旨規定しています。よって、動産譲渡登記を経由することで、当該動産に関する物権譲渡の第三者対抗要件を得ることとなります。例えば、法人の動産を譲渡担保にとって融資をした場合に、当該債務者法人が、その動産を第三者に売却してしまったようなときでも、後行する譲受人に対して、動産譲渡登記をもって、自己の担保権を対抗できるわけです。もっとも、動産譲渡担保登記は、新しい対抗要件を加えたに過ぎず、既存の対抗要件法制度を覆滅することは予定されていません。例えば、動産譲渡担保登記が、先行する占有改定による譲渡担保に優先するわけではありません。また、動産譲渡担保登記をしても、後行する譲受人によって当該動産について即時取得がなされる可能性もあるでしょう。


4、動産譲渡登記の効果(代理人の免責)

動産譲渡担保においては、担保対象動産が債務者法人の手元にはなく、倉庫業者等に保管をさせている場合もあります。このような場合で、債務者法人が危機時期に至ったとき、譲渡担保権者としては、譲渡担保登記をもって倉庫業者に対して自己の権利を主張することになります。かかる場合に、倉庫業者等が債務者法人に動産を引き渡すべきか、あるいは譲受人に対して動産を引き渡すべきかにつき、疑義が生じる可能性もあります。そこで、新法では、以下の要件を充足する場合の免責規定を置いています(新法3条2項)


(1)代理人によって占有されている動産の譲渡につき、動産譲渡登記あり
(2)譲受人として登記されている者が、代理人に対して当該動産の引渡しを請求
(3)代理人が本人に対して、当該請求につき異議があれば相当の期間内にこれを述べるべき旨を遅滞なく催告
(4)本人が上記期間内に異議を述べなかった


上記要件を満たす場合には、代理人が、譲受人として登記されている者に動産を引き渡し、それによって本人に損害が生じたときであっても、賠償責任を負いません。かかる実体法に踏み込んだ免責規定の適用範囲は、必ずしも明らかではありませんが、迅速性の要求される動産取引において、倉庫業者等の実務上の混乱を抑制する効果が期待されているようです。


(2004年11月執筆)


松村昌人
 第二東京弁護士会 倒産法制検討委員会委員(1999年4月〜)
 法律扶助協会相談登録弁護士(1999年10月〜)
 第二東京弁護士会 広報委員会委員(2000年4月〜)
 日弁連法務研究財団事務局員(2001年4月〜)
   
主要著書
 『民事再生法書式集[新版]』
  <共著>(二弁倒産法制検討委員会,信山社 2001)
 『ビジネスマンのための インターネット法律事典』
  <部分執筆> (日経BP社 2001年)
 『インターネット事件と犯罪をめぐる法律』
  <部分執筆>(オーム社 2000)
 『詳解民事再生法の実務』
  <部分執筆>(第一法規出版 2000)
 『法律業務のためのパソコン徹底活用BOOK』
  <部分執筆>(トール 1999)
 『債権管理回収モデル文例書式集』
  <部分執筆>(新日本法規出版 1996)    等

このコンテンツは「法律情報メールマガジンLIMM」より提供されております
e-hoki.com LIMMにおける掲載時点(2004年11月16日掲載分)での執筆物であるため、その後の法改正等により、情報が古くなっている場合も、あり得ます。

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