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CMカット

テーマ:著作権

2005年5月12日

解説者

弁護士 小川憲久

11月に行われた民放連会長の定例記者会見で、テレビ番組のCMカット録画について著作権法上の問題があるような発言があったと報道されています。テレビ録画をする際のCMカットは著作権法上の問題があるのでしょうか。


個人が著作物を個人的または家庭内で使用するために複製することは「私的使用のための複製」として著作権法30条により適法とされています。テレビ放送局等の放送事業者は放送について録音・録画等の複製権を専有していますが、著作権法30条は当然にこの場合にも及ぶと考えられますので、個人が後で観るためにテレビ番組を録画することは「私的複製」として適法ということになります。これをタイム・シフティングといい、米国ではフェア・ユース(公正使用)に該当して適法であるとする米国最高裁判所の判例があります。


次に、CMと番組との関係を考えてみましょう。それは放送番組とCMとが一つの著作物を構成するといえるかということです。CMはCM製作会社が顧客の依頼により製作するもので、それ自体として独立の思想感情を表現したものとして映画の著作物に該当する場合が多く、当該映画製作者に著作権が帰属するものと思われます。したがって、ドラマに挿入されるCMはドラマの映画著作物とは別の映画著作物ということになります。ドラマ製作者もCM製作者もドラマとCMが合体した一つの映画著作物を製作する意図はないでしょうから、例えば1時間ドラマについてドラマとCMの組合せによる共同著作物が成立すると考えることは無理があります。(共同著作物が成立するとした場合には、ドラマをDVDにする場合にもCMを入れないと同一性保持権の侵害ということになってしまい、 DVD化する際にCM製作者にCMカットの許諾をとる必要が生じるというおかしなことになります。)そうであるとすると、CMカットはドラマとCMという別々の著作物が混在した放送からCMという著作物を複製せずにドラマという著作物のみを複製する行為ということになります。それは、一つの著作物の一部のみを複製するわけではありませんから著作物の一部を切除するという形態での同一性保持権の侵害という問題もなく、(この点は、私的複製の場合に同一性保持権の侵害が生じうるのかという問題です。ゲームソフトについてユーザがなすゲーム進行順序の変更が同一性保持権の侵害にあたるとした最高裁判所の判決があります。)、まさに第30条の予定している私的複製の問題です。CMカットは著作権法上、適法であるということになります。


ところで、著作権法上、放送事業者は著作隣接権者として、放送についての複製権、再放送権、送信可能化権、テレビ放送の伝達権という権利を有していますが、放送について同一性保持権はありません。放送されるものは著作物には限りませんから放送は著作物性の有無に関わらず放送として複製権等の対象とされ、保護されています。つまり、放送についての複製権等の保護は著作物たる放送に限定されていないことになります。そこで、放送事業者に放送についての同一性保持権があるとすると、それは放送自体の同一性の保護ということになりますから、CMを含めた放送をそのまま複製しなくては同一性保持権の侵害の可能性がでてくることになります。著作権法が放送事業者に同一性保持権を認めていないことは大きな意味を持っていることになります。


CMスキップは、民間放送事業者にとって広告収入を減少させる可能性を持つものであると考えることもできます。質の良い娯楽や情報を享受するためにはCMは一種の対価であるという見方もあります。したがって、CMカット問題がやがては法改正の議論となるのではないかと思われます。しかし、この問題はユーザの権利としての側面を持ちつつある私的複製の問題であり、事業者の収入の減少可能性という観点から短絡的に法制度改正に繋げる手法は適当とはいえないでしょう。


(2004年12月執筆)


小川憲久
 役職
   (財)ソフトウェア情報センター 特別研究員
   法とコンピュータ学会 理事
   東京工業大学非常勤講師(1998-2002)

このコンテンツは「法律情報メールマガジンLIMM」より提供されております。
e-hoki.com LIMMにおける掲載時点(2004年12月17日掲載分)での執筆物であるため、その後の法改正等により、情報が古くなっている場合も、あり得ます。

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