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裁判って3回チャンスがあるの?

テーマ:企業の機関・形態

2005年5月19日

解説者

弁護士 小川義龍

1、三審制って

小学校或いは中学校の社会科の時間に、「日本の裁判は三審制といって、一つの事件に対して3回裁判をするチャンスがあるんです」と教わらなかっただろうか。この手の授業は、教えている教師も実は詳しくなかったりするから、殆ど教科書の棒読み。そうすると教わる生徒の方も理解できず熱が入らない。私など退屈のあまり、「サンシン制? 三振? ストライク!バッターアウト?」なんて友達とフザケていたような記憶すらある。
さてこの三審制とは、果たしてどういうことなんだろうか。


2、人が行う裁判には間違いがあり得るという前提

裁判は証拠に基づいて過去の事実を認定してゆく作業だ。認定する人は裁判官という第三者。裁判官は神様ではないから、認定した結果は必ずしも絶対的な過去の真実であるとは限らない。そこで裁判には誤りがあり得るという前提から、チャンスを複数回設けたというのが三審制だ。学説的にはいろいろな考え方があるが、素朴にはこういうことだと考えて構わない。
具体的には、たとえば、地方裁判所の判決に不服があれば、次は高等裁判所で審理がなされる(控訴)。高等裁判所の判決に不服があれば、最後に最高裁判所で審理がなされる(上告)。都合3回というわけだ。ともかく裁判システムで、いかに不服があっても1回きりで万事終わってしまうような手続きはない。


3、しかし3回とも最初からやり直すわけではない

しかし誤解しがちなのは、3回チャンスがあるからといって、それぞれが初心に戻ってのやり直しではないということだ。素朴な想像からすると、スポーツ3回戦のようなイメージを持ちやすい。しかしそうではない。
ではどうなるのか。
厳密に言えば民事裁判と刑事裁判とではかなり異なるのだが、敢えて簡単にして言えば、「第1回目の裁判に対して批判的に検討するのが次の裁判」というようなイメージだ。特に刑事裁判は、決して第1回目の裁判の漫然とした続きではなく、第1回目の判決に誤りがあるかどうか、専ら「判決そのもの」の検討にウェイトが置かれる。
だから、三審制とはいえ、第1回目の裁判の結果が実に重要であり、その後の裁判にも大きな影響を与えるのだ。3回チャンスがあるという風に素朴に考えて、だから1回目の裁判から本気を出さなくても構わないなどと安直に訴訟追行してはならない。むしろ第1回目の裁判で終了と言うくらいの背水の陣で臨まないといけないのが裁判なのだ。
実際、地方裁判所の判決に不服があって控訴しても、高等裁判所で逆転判決が下されることは少ない。


4、まして最高裁判所は法律審が原則

さらに言えば、最後の砦として3番目に控えている最高裁判所では、その前の判決の法律上の問題点は審理しても、事実認定誤りは原則として検討しない。つまり、過去の事実は、高等裁判所の審理までで確定してしまうのだ。過去の事実と違うという主張を最高裁判所で行っても見向きもされない。確定した事実の法律への当てはめ方が違うという主張しか受け入れてくれないのだ。だから、最高裁判所の裁判は、殆どが書面審査で、しかも門前払いされてしまうことが多い。対外の不服申し立てが、実は事実認定の誤りを不服に思うことが多いからだ。


5、よくある遅すぎた相談。

時々、第一審は自分で裁判を行ったんだけれども、それに負けたので次(控訴審)から弁護士に依頼したいという相談者が来ることがある。しかしこれではすでに遅いということがある。
今回お話ししたとおり、裁判の勝負は第一審にある。第一審をその後覆すのは大変な労力がいるし、実際できない可能性が十分ある。高等裁判所以上の審理は実にクールだ。第一審で全力を出していることを前提にしているから、第一審で簡単に出せたような証拠を出そうとしても、門前払いされてしまうことがある。
だから日本は三審制だからといって安心せず、裁判が起こったら(起こされたら)、まずは専門家のところに早めに相談に行くことが肝要なのだ。


(2005年5月執筆)


小川義龍
昭和39年生  東京都出身
東京都千代田区立番町小、同区立麹町中卒
早稲田大学高等学院卒(昭和58年)
早稲田大学法学部卒(昭和62年)
司法試験合格(平成3年)
最高裁判所 司法研修所 46期修了
弁護士登録(東京弁護士会所属)

東京弁護士会
常議員(平成7年度)
広報室 嘱託(平成13年度〜)
広報委員会 副委員長(平成9、10年度)
広告調査委員会 副委員長(平成13年度)
インターネット協議会 副議長(平成9年度)
業務改革委員会 コンピュータ部会長(平成12年度〜)
司法修習委員会、財務委員会、刑事弁護委員会 各委員
法友全期会副代表幹事(平成14年度)
春秋会(法友8部)事務局長(平成15年度)

 東京商工会議所 法律相談員(平成9年度・荒川支部)
 東京弁護士会 クレサラ・商工ローン闇金相談担当(四谷・神田センター)
 財団法人クレジットカウンセリング協会 カウンセラー(平成11年度〜)
 財団法人法律扶助協会新宿支部審査員(平成12年度〜)
 日本弁護士連合会 法務研究財団事務局(情報部会担当)
 早稲田経営学院(Wセミナー)専任講師(刑事訴訟法)
 日本刑事政策研究会(法務省)正会員
 東京弁護士会インターネット法律研究部部会員

著書・講演等
 「法律事務所のためのパソコン導入大作戦」(株式会社トール刊)
 「弁護士のための広告のススメ」(株式会社トール刊)
 「弁護士のためのパソコン導入ガイド」(東京弁護士会法友会刊)
 「パソコン事件簿」(月刊DOS/V Special連載・毎日コミュニケーションズ)
 「最新現代法務全集」第4巻・債権回収(全日法規研究室)
 「困ったときにすぐわかる 内容証明の書き方・出し方」(OS出版)
 「困ったときにすぐわかる インターネットの法律(仮題)」(近刊予定)
 「中小企業のための倒産回避マニュアル(仮題)」(近刊予定)

 「破産と会社更生手続の概要」
   ※厚生労働省 労働研修所での講義(平成14年度より)
 「法律の基礎」 「コンプライアンス」 「借地借家法」 「インターネット法務」
   ※いずれも大手上場企業での定期公演
 「若者の破産」 「非弁提携弁護士被害」その他
   ※フジTV「スーパーニュース」出演

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