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営業譲渡と担保権消滅請求

テーマ:事業承継・再生・廃業

2004年7月15日

解説者

弁護士 松村昌人

営業譲受けをする場合において、営業を構成する担保割れ不動産に担保権が設定されているときは、通常は、任意売却の際に、担保権者の同意を得て、担保権の抹消手続きをおこないます。当該担保権を抹消しておかないと、譲り受けた営業を継続できないリスクが発生するためです。しかし、担保権抹消の際に、価額条件の協議が整わない場合には、担保権消滅を法的に強制することも考えられます。この点、平成11年制定の民事再生法上の担保権消滅請求制度(民事再生法148条以下)、平成14年改正の会社更生法上の担保権消滅請求制度(会社更生法104条以下)に引き続き、平成15年7月25日、「担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律」(平成15年法律第134号。以下、同法による改正後の民法を、改正民法という。)が公布され、旧来の滌除制度が改正されています。改正民法は、平成16年4月1日から施行されますが(改正民法附則1条、平成15年政令第3751号)、その適用範囲を比較概観します。


第1 改正民法上の抵当権消滅請求制度

1 消滅対象となる担保権と物件
消滅対象となる担保権は、抵当権です(改正民法378条、383条)。当該抵当権が設定された物件が対象となります。


2 消滅請求をおこなうことができる者
改正民法上の抵当権消滅請求制度においては、抵当不動産について所有権を取得した第三者(営業譲受人)のみが抵当権消滅請求をおこなうことができます(改正民法378条、383条)。主債務者、保証人等は、抵当権消滅請求をおこなうことはできません(改正民法379条)。地上権、永小作権の取得者については、改正の結果、請求者ではなくなりました。


3 請求可能時期
改正民法上の抵当権消滅請求が可能な時期は、従来は、抵当権実行通知を受けるまでとされていました。しかし、改正により、抵当権実行通知義務が廃止されたので(旧民法381条削除)、競売による差押の効力が発生する前までは抵当権消滅請求が可能となりました(改正民法382条)。


4 担保権者希望額と齟齬する場合の顛末
債権者が消滅請求書を受け取った後2ヶ月以内に抵当権実行競売の申立をしないときは、提供金額を承諾したものとみなされます(改正民法384条)。この場合、営業譲受人としては、承諾代価を払渡・供託することにより抵当権を消滅させ、担保権の負担のない不動産を取得することが可能となります(改正民法386条)。しかし、債権者が上記期限内に抵当権実行競売の申立をした場合には、競売手続きによる売却により、所有権を喪失することになります。旧法に存在した増価買受義務が廃止された関係もあり(旧法384条2項削除)、債権者による抵当権実行競売の申立は比較的容易となっています。この意味で、改正民法上の抵当権消滅請求制度は、担保権の負担のない不動産を確実に取得することができる制度とは、必ずしも言えません。


第2 倒産法上の担保権消滅請求制度

1 消滅対象となる担保権と物件
倒産法上の担保権消滅請求制度においては、担保権(特別の先取特権、質権、抵当権又は商法の規定による留置権)が消滅の対象となります(民事再生法148条1項、会社更生法104条)。対象物件としては、開始決定当時、債務者等が有する物件となります。債務者自身の債務を担保している場合のみならず、第三者の債務を債務者が物上保証している場合も含みます。しかし、債務者の債務について第三者(例:再生債務者会社の代表者個人)が物上保証している場合は対象となりません。


2 消滅請求をおこなうことができる者
倒産法上の担保権消滅請求をおこなうことができるのは債務者等(再生債務者等、更生管財人)です。したがって、営業譲受人としては、営業譲受条件として、債務者等に、不動産売却代金を用いた担保権消滅請求をおこなってもらうことになります。


3 請求可能時期
開始決定後に請求可能となります(民事再生法148条1項、会社更生法104条)。


4 担保権者希望額と齟齬する場合の顛末
担保権者が、担保権消滅請求の価額について異議があるときは、担保権消滅請求申立書の送達を受けた日から1月以内に、担保権の目的財産について価額の決定を請求することができます(民事再生法149条、会社更生法105条)。同価額決定請求があると、裁判所が評価人の評価に基づき財産の価額を決定します(民事再生法150条、会社更生法106条)。債務者等が、定められた価額について、不動産売却代金を用いて裁判所に金銭納付することで対象担保権は消滅します(民事再生法152条、会社更生法108条)。よって、営業譲受人としては、比較的確実に、担保権の負担のない不動産を取得することが可能となります。


松村昌人
 第二東京弁護士会 倒産法制検討委員会委員(1999年4月〜)
 法律扶助協会相談登録弁護士(1999年10月〜)
 第二東京弁護士会 広報委員会委員(2000年4月〜)
 日弁連法務研究財団事務局員(2001年4月〜)
   
主要著書
 『民事再生法書式集[新版]』
  <共著>(二弁倒産法制検討委員会,信山社 2001)
 『ビジネスマンのための インターネット法律事典』
  <部分執筆> (日経BP社 2001年)
 『インターネット事件と犯罪をめぐる法律』
  <部分執筆>(オーム社 2000)
 『詳解民事再生法の実務』
  <部分執筆>(第一法規出版 2000)
 『法律業務のためのパソコン徹底活用BOOK』
  <部分執筆>(トール 1999)
 『債権管理回収モデル文例書式集』
  <部分執筆>(新日本法規出版 1996)    等

このコンテンツは「法律情報メールマガジンLIMM」より提供されております
e-hoki.com LIMMにおける掲載時点(2003年2月10日掲載分)での執筆物であるため、その後の法改正等により、情報が古くなっている場合も、あり得ます。

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