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オーナー(貸主)に「賃料を上げる」と言われたら

テーマ:契約・取引

2006年11月30日

解説者

弁護士 田中弘人

最近、「オフィス賃料の相場が上昇しつつある。」との報道を耳にすることはありませんか?そんな報道を耳にしたオーナー(貸主)から「今の賃料(月額10万円)は安過ぎるから、来月から賃料を相場並みの月額15万円にしてください。いやなら退去してもらうしかありませんよ。」と言われるかも知れません。そんなとき、オーナー(貸主)の求めに応じた賃料を支払うか、出て行くしかないのでしょうか?


1  オーナー(貸主)は賃料を一方的に増額できるのか?

契約は当事者相互の合意によって成立するものです。ですから、その内容の変更にも当事者相互の合意が必要であり、原則として当事者一方の自由意思によって変更することはできません。
賃貸借契約も契約であり、賃料額もその一部です。ですから、一方当事者のオーナー(貸主)が勝手に賃料を変更して増額できないようにも思えます。
しかし、賃貸借契約は、更新を繰り返せば、それこそ5年、10年と続きます。これだけ長期間契約が続けば、最初に決めた賃料額が不相当になることもあるかも知れません。
そこで、借地借家法においては、オーナー(貸主)から賃料の増額請求があった場合、一定の要件を満たしていれば、借主の合意がなくとも賃料が増額されることを認めています(逆に借主からの減額請求も認めています)。


2  賃料の増額が認められる「一定の要件」とは?

この「一定の要件」とは、要するに現行賃料が「不相当となった」と認められる場合です。「不相当となった」か否かは以下の要素から判断されます。
(1) 土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減
(2) 土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下
(3) その他の経済的事情の変動
(4) 近傍同種の建物の借賃との比較
つまり、現行賃料が決定してから現在までにつき(1)〜(4)を検討し、現行賃料が「不相当となった」時に限り、増額が認められるわけです。


3  オーナー(貸主)とどのように決着することになるのか?

オーナー(貸主)が、これらの事情を明らかにして賃料の増額を求め、借主もこれを認めれば、当事者双方の協議・合意により賃料は増額されることになります。
これに対し、協議が調わなければ、裁判による決着を図ることになります。先の例で言えば、オーナー(貸主)が、借主に対し、賃料が月額15万円であることを確認する訴訟を提起することになります。


4  決着するまではいくらの賃料を支払えばよいのか?

もちろん、裁判での決着には時間がかかります。では、借主は、決着までの期間、先の例で言えば現行賃料の月額10万円、オーナー(貸主)が求める月額15万円のいずれを支払えばよいのでしょうか?
この点、借地借家法では、借主は増額を正当とする裁判が確定するまでは、自分が相当と認める額の賃料を支払えばよいとされています。ですから、借主があくまで10万円が相当だと考えるなら、10万円を支払えば足ります。15万円を支払わないことを理由に賃貸借契約を解除されることはありませんし、退去する必要もありません。
とすれば、借主は現行賃料を支払っておけばよいではないかと思われるかも知れません。ですが、借地借家法では、「ただし、その裁判が確定した場合において、すでに支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。」とされています。つまり、例えば、平成19年1月分から月額15万円への賃料増額を求められた借主が、10万円を相当と考え同額を支払い続けていたところ、オーナー(貸主)から裁判を起こされ、平成19年12月の終わりに「賃料は平成19年1月から月額15万円であることを確認する。」との判決がなされ確定したとします。この場合、借主は、平成19年1月〜12月まで月額15万円のところを月額10万円しか支払っていなかったのですから、オーナー(貸主)に対し、毎月の差額月額5万円(不足額)の12ヶ月分に各月年1割の利息を付して支払わなければなりません。現行賃料が相当だと判断することはいいのですが、判決の内容によっては、後日不足額+利息1割を支払わされる危険が生じるわけです。借主としては、その危険に注意して、相当と考える賃料を決める必要があります。


5  最後に

(1) オーナー(貸主)から賃料増額を求められても当然にこれに応じる必要はありません。ただ、一定の要件を満たせば、借主の合意がなくとも賃料増額が認められる余地があります。
(2) 増額が正当であるとの裁判が確定するまでは、借主が相当と考える賃料を支払えば足ります。求められた増額賃料を支払わなくとも契約を解除されることはありません。退去する必要もありません。
(3) ただし、増額が正当であるとの裁判が確定したときには、借主はこれまで相当と考えて支払っていた賃料との差額+年1割の利息を支払わなければなりません。


オーナー(貸主)からの増額請求に当然応じる必要はありません。しかし、現行賃料にこだわりすぎると、後から差額+利息1割を支払わされる危険が伴うことを常に念頭に入れておく必要があります。


(2006年11月執筆)


弁護士 田中弘人(たなかひろと)

1994年 早稲田大学法学部卒業
1999年 司法試験合格
2001年 弁護士登録(横浜弁護士会)
      立川法律事務所所属
2006年 横浜港和法律事務所設立

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