2005年7月21日|弁護士 小川義龍
【新着法制度どもに物申す】1
1,大丈夫か、法制度!?
最近、新着の法制度らしきものを耳にする機会が多くないだろうか。例えば、裁判員制度。例えば、ロースクール。例えば、日本司法支援センター。例えば、公設事務所。
私自身は法曹歴が、いまだ10数年の若輩であるが、それでもこのところの法制度改革や新立法の数々は、近来まれにみるものではないかと実感しているのだ。
では、こういった法制度はいったい何のために設けられたのか。いや、そもそも何なんだ、これは?
おそらく大多数の市民にとって、裁判員とかロースクールとは何かと問われても、正しく答えられる人はいるまい。裁判員といわれれば、「アメリカ映画とかでみる、陪審員とかいう時々有名人の裁判でおかしな無罪を出しちゃうアレ?」というイメージだろう。また、ロースクールといわれれば雑学に富んだ人なら「ハーバードロースクールって凄いんだよね、ああいうアレでしょ?」と答えるだろうし、そうでない人なら「高校がハイスクールだから、それよりロー(低い)ってことで、中学のこと?!」とかトンチンカンなことを言いかねない。いや、そんなことはないか、大変失礼しました。
市民にとって、新着の法制度が十分理解されているとは到底思えない。
では、我々法律家にとってはどうだろうか。意外に思われるかもしれないが、直感的に言って、我々法律家も多くは大多数の市民の理解と大差ないといえるのではあるまいか。
もちろん、新着の法制度は、まさに新しいわけだから、理解している人が少ないというのはもっともなことだ。しかし、このところ目白押しの法制度は、果たして必要な制度なのかどうか、そういう根本的なところで疑問があるものも少なくない。だから、市民はもとより、我々法律家からして、「理解しようとしない」ところがあるのではないかと穿ってみたりするのだ。
こんなことで大丈夫なのだろうか。
2,裁判員制度ってどうよ?
裁判員制度がどんなものであるか、それはここで詳細に説明しない。陪審員制度に近いというイメージは間違いないと思うが、実は私自身正確に説明できる能力に欠けるので、ネットで各種検索をしてお調べ頂きたい。
そもそもは、「裁判に時間がかかる」「裁判が国民の意識を反映していないように見える」「裁判官は非常識だ」という、<世論>を反映させた制度だろうと思う。だから、裁判にも民主主義を及ぼして、国民の司法参加を実現させようと言うことだろう。
そういう前提をきっかけにしているとすれば、あまり賢明な制度ではない。
裁判、特に刑事裁判に時間がかかるのは、世間の耳目を集めるような事件、つまり報道されるような事件だけで、実際に殆どの刑事裁判はすぐ終わる。法廷での手続きは半月程度で終わってしまうのが殆どだ。報道されるような事件は、法律に基づいて慎重に審理されることが要求されるので、決して無駄に時間をかけているわけではない。法律、いや憲法が、じっくり時間をかけなさいよと命令しているから従っているまでだ。
また裁判官が非常識に見えるのも、<世論>は自分のことを棚に上げているなと思う。裁判官だって、日常は一市民だ。決して特殊な生活をしているわけではない。真面目な人が多いとは思うが、酒だって飲むし、煙草だって吸うし、ギャンブルだってする人もいるだろうし、女好きも多いと思う。要するに、会社員と同じこと。それを、何か純粋培養の特別なエリートのように仕立て上げて、裁判官は世間知らずと誹る<世論>があるが、本当にそうであれば、世間のサラリーマンたちは全員が世間知らずということになる。
逆に、マスコミの報道や、根拠のない感覚や他者の意見に依存しがちな現代の大衆にとって、感覚的に裁判に関与されると、かえって冤罪を生む結果になりかねないのではないか。例えば、松本サリン事件などは、報道に接した多くの大衆が、「あいつが犯人くさいな」と思った。しかし間違いだったわけだ。我々職業法律家にとって、マスコミの報道だとか根拠のない感覚は、基本的に捨て去る教育を受けている。これを身につけている。だからこそのプロだ。そういったプロに専ら裁判を委ねても間違いは少ないはずだ。もちろん、我々法律家も神ではなく、神ならざる故の過ちはありうる。しかし逆に、一般市民を裁判に関与させれば過ちがなくなるというものでもない。
最近、マスコミのアンケートに基づいて報道されたところによると、多くの市民が裁判員にはなりたくないとのこと。自分が裁く側に関与したくないということらしい。<世論>が裁判員制度を実現させたのに、いざとなれば逃げてゆく<世論>。
世論に迎合した我々法律家が一番アホだったということではないだろうか。
(2005年7月執筆)
昭和39年生 東京都出身
東京都千代田区立番町小、同区立麹町中卒
早稲田大学高等学院卒(昭和58年)
早稲田大学法学部卒(昭和62年)
司法試験合格(平成3年)
最高裁判所 司法研修所 46期修了
弁護士登録(東京弁護士会所属)
東京弁護士会
常議員(平成7年度)
広報室 嘱託(平成13年度〜)
広報委員会 副委員長(平成9、10年度)
広告調査委員会 副委員長(平成13年度)
インターネット協議会 副議長(平成9年度)
業務改革委員会 コンピュータ部会長(平成12年度〜)
司法修習委員会、財務委員会、刑事弁護委員会 各委員
法友全期会副代表幹事(平成14年度)
春秋会(法友8部)事務局長(平成15年度)
東京商工会議所 法律相談員(平成9年度・荒川支部)
東京弁護士会 クレサラ・商工ローン闇金相談担当(四谷・神田センター)
財団法人クレジットカウンセリング協会 カウンセラー(平成11年度〜)
財団法人法律扶助協会新宿支部審査員(平成12年度〜)
日本弁護士連合会 法務研究財団事務局(情報部会担当)
早稲田経営学院(Wセミナー)専任講師(刑事訴訟法)
日本刑事政策研究会(法務省)正会員
東京弁護士会インターネット法律研究部部会員
著書・講演等
「法律事務所のためのパソコン導入大作戦」(株式会社トール刊)
「弁護士のための広告のススメ」(株式会社トール刊)
「弁護士のためのパソコン導入ガイド」(東京弁護士会法友会刊)
「パソコン事件簿」(月刊DOS/V Special連載・毎日コミュニケーションズ)
「最新現代法務全集」第4巻・債権回収(全日法規研究室)
「困ったときにすぐわかる 内容証明の書き方・出し方」(OS出版)
「困ったときにすぐわかる インターネットの法律(仮題)」(近刊予定)
「中小企業のための倒産回避マニュアル(仮題)」(近刊予定)
「破産と会社更生手続の概要」
※厚生労働省 労働研修所での講義(平成14年度より)
「法律の基礎」 「コンプライアンス」 「借地借家法」 「インターネット法務」
※いずれも大手上場企業での定期公演
「若者の破産」 「非弁提携弁護士被害」その他
※フジTV「スーパーニュース」出演
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