本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

トップページ  >  経営をよくする  >  法律コラム

特集一覧 中小企業に役立つ記事や施策をトピックスごとにまとめています。

DRMとiTunes

テーマ:著作権

2005年8月25日

解説者

弁護士 小川憲久

アップル社のiPodが爆発的に売れています。iPodはiTunesというやはりアップル社が提供している無償のアプリケーションソフトを使用してCD から音楽を録音したり、米国ではiTunesのサイトであるiTunes Music Store (iTMS)から有料で音楽をダウンロードしてiPodに格納したりすることができるものです。このiTMSでダウンロード販売される楽曲ファイルには DRMというコンテンツ管理技術が施されています。


DRMとはDigital Rights Managementの略で、楽曲等のデジタル著作物を暗号化してライセンスを受けた場合にのみ復号鍵を渡して利用できるようにする、あるいは再生に用いる機器に対して再生回数の制限や有効期限、複製制限等の機能を果たすようにさせるデータを埋め込むというような再生制御技術を使用したり、コンテンツに電子透かしを埋め込んで違法複製物のネット上の流通を監視する等々の技術を使用してデジタル著作物の権利管理を行うことをいいます。DVDで利用されているCSSという技術は暗号化と再生機器の認証、複製制限を組み合わせたDRMということができます。DRMは無断再生・複製を禁じる管理技術ですから私的複製を前提とする私的録音録画補償金制度とは相容れない関係にあると前回のアベニューで述べました。


このDRMは様々な技術によって無断複製等を制限し管理しようという方策ですから、利用技術も制限の態様も様々です。再生機器の互換性を考えた場合には技術の標準化が必要になりその試みもなされていますが、DVDのCSSを除いては未だ統一されたものはありません。利用する技術と制限の程度によって軽い DRMと重いDRMがあることになります。iTunesは軽いDRMを採用しています。iTMSから購入した楽曲にはDRMが施されており、iTunes を利用して録音したiPodからは他の機器へのデータ転送はできませんし、iTunesでダウンロードした楽曲をそのまま他に転送することはできません。しかし、iTunesを利用してダウンロードした曲やCDから取り込んだ曲をCD-Rに焼くことでプロテクトされていない曲のアルバムを作ることができます。この曲はMP3にリッピングすることもできます。したがって、事実上、友人同士で曲の交換をすることが可能となります。他方、iTMSのDRMを回避してLinux上でコピーフリーの状態にすることができるPyMusiqueというソフトウェアがDVDのコピー禁止技術を破ったDeCSSを公開したことで有名なヨハンセン氏らによって公開されていますが、ユーザはiTunesのアカウントを開設して通常料金で楽曲の購入をすることになっているため iTMSに深刻な打撃を与えるものではないようです。また、DRMを施していないMP3tunesという音楽配信サービスは独立系アーチストの曲を中心に 1曲88セントで販売を始めました。このような中で、iTMSによる有料ダウンロード数は3月2日時点で3億曲に上っていると発表されています。これと比べて、かつて複製を禁じる技術的手段を施したCCCDが発売されましたが、ユーザの評判が悪く、結局中止されることになったことが想起されます。CCCD は重いDRMを施して、使い勝手が悪くなってしまったのが原因とも言われています。


CCCDの失敗とiTunesの成功を見ると、権利管理の厳格化と使い勝手は相反し、ユーザは合理的な額であれば支払いをしてでも使い勝手の良いシステムを選ぶということが言えそうです。知的財産の保護もビジネスとして受け入れられない制度を構築したのでは意味がありません。軽いDRMと合理的な課金の組合せが一つの調和点ということができそうです。


(2005年3月執筆)


小川憲久
 役職
   (財)ソフトウェア情報センター 特別研究員
   法とコンピュータ学会 理事
   東京工業大学非常勤講師(1998-2002)

このコンテンツは「法律情報メールマガジンLIMM」より提供されております。
e-hoki.com LIMMにおける掲載時点(2005年4月5日掲載分)での執筆物であるため、その後の法改正等により、情報が古くなっている場合も、あり得ます。

同テーマの記事を見る 3つのコンテンツから検索ができます!

このページの先頭へ

このページの先頭へ