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【借金の賢い返し方(任意売却)】

テーマ:会計

2005年9月 8日

解説者

弁護士 小川義龍

1,担保不動産の売り方

不動産担保で金融機関から借金をしている方は多かろう。
千万単位の借金をしようと思えば、大抵、自宅だとか工場だとか、そういった不動産(特に土地)に抵当権や根抵当権を設定されているはずだ。
こういう、不動産担保に入れている土地だとか工場だとか、そういったものを売却して借金を消そうと考える場面はないだろうか。一種のリストラであるが、有効な債務整理の方法だ。土地や工場といった固定資産はなくなるが、他方で銀行などからの負債も消えるわけだから、健全経営に戻すことができる。自宅や唯一の工場という場合にはそうもいくまいが、切り離すことのできる固定資産であれば売却して返済することは積極的に考えてよかろう。これを任意売却、略して任売(ニンバイ)という。


2,銀行からの助言の精査

担保不動産を売却する場合に、欠かせないのが銀行の関与だ。銀行は現に担保を設定しているわけだから、売却に際してこれを解除してもらわなくては買い手が付かない。そういう意味で、担保不動産の売却には、売り主と買い主以外に、登場人物として銀行が関与してくる。
このため銀行には早い段階から根回しをすることになるが、大抵いろいろなアドバイスをしてくれるはずだ。中には会社のことを考えて親身なアドバイスもあろう。しかし、基本的に金融機関の態度としては「契約金額の回収」、これに尽きる。それ以上でもそれ以下でもない。あくまでも売り主は、自分であることをわきまえておかないと損をする場面が出てくる。
ちょっと場合分けしてみよう。


3,借金が不動産の時価を下回っている場合

この場合、不動産を売れば、その代金の中から銀行は契約金額を満額回収できるわけだから、比較的スムーズに事が運びやすい。銀行としては、どうせ売るなら早く売って返済して欲しいと考える場合も出てこよう。この場合、銀行の思惑に従って早く売ってしまうと損をする場合が出てくる。なぜなら、不動産は安くすれば早く売れる。これは不動産に限らずモノの売買は全てそうだ。借金が不動産の時価を下回っている場合、借金を全部返せば、こちらはお釣りをもらえる立場にあるから、安く売ってしまうともらえるお釣りは少なくなる。銀行は、借金額を上回ってさえいれば、売却代金には興味がない。
だから、早く売って返済して欲しいと考える銀行のアドバイスに従って安く売ってしまうと損をする場合が出てくるのだ。売却金額(時価)について銀行のアドバイスはあまりあてにならないといってよかろう。
当たり前のことだが、担保不動産であっても自分のモノであることには違いない。たまたま売った代金で銀行に完済するだけの話なので、このスタンスは忘れないようにしたい。


4,借金が不動産の時価を上回っている場合

他方、いわゆるオーバーローンの場合だ。同じ不動産を担保にしてあちこちから借金を重ねているとこうなりやすい。
この場合、返済後にお釣りをいくら貰えるかということは考慮する必要がない。借金が不動産の時価を上回っているわけだから、売却代金は全額を返済に充てる必要があるからだ(それでも足りない)。
こうなると銀行は、売却代金(時価)にシビアになる。つまり高く売りたいという点で、銀行もこちらも利害共通しているので、金額に関する限り銀行のアドバイスに従って売却を進めても損をしない場合が多い。
このとき、売却対象が自宅にしろ工場にしろ、引っ越し・移転費用のような経費はこちらで負担することになるのだろうか。普通に考えれば、これらは売り主の経費だ。引っ越し費用を買い主が負担するということはありえないだろう。しかし、担保不動産を売却する場合には、銀行がこういった経費の一部を面倒見てくれることがある。返済を受けるべき債権者なのにどうして?とお感じになるかもしれない。
そのカラクリは、「競売で売るより沢山返済を受けられるから」という点にある。いかに銀行でも担保不動産から一方的に回収を図るためには、競売という裁判手続きを踏まなくてはならない。競売はリスクを伴うため、一般的に時価よりも安い金額でしか売ることができない。しかも長期間かかる。かくして遅く安くしか売れない競売で一方的に売る(=競売)よりも、こちらの協力を得て早く高く売った方(=任売)が銀行にとって圧倒的に得だ。だから、多少の引っ越し代くらいは銀行が 負担してくれるわけだ。


5,借金のリストラも知恵次第

さて、ここまでの話を聞いてどう感じられただろう。
借金が少ないなら、お釣りを沢山もらうために高く売るのは当たり前だよな、借金が多くて金がないなら、引っ越し代くらい銀行に出してもらおうと考えるのは当たり前だよな、とお感じになっただろうか。
実は、こうした当たり前の話が、いざその場に当事者として立ち会ってみると思いつかない方が圧倒的なのだ。銀行主導のまま売却してしまって、安すぎて失敗したとか引っ越し代を自弁したとか後悔する。売り主は専ら自分であるとか、競売より任売が銀行にとって圧倒的に得だとか、こういったちょっとした知識があれば、有利に話を進められる。
世の中得をするも損をするも、こんなちょっとしたことに気づくかどうかではあるまいか。


(2005年9月執筆)


小川義龍
昭和39年生  東京都出身
東京都千代田区立番町小、同区立麹町中卒
早稲田大学高等学院卒(昭和58年)
早稲田大学法学部卒(昭和62年)
司法試験合格(平成3年)
最高裁判所 司法研修所 46期修了
弁護士登録(東京弁護士会所属)

東京弁護士会
常議員(平成7年度)
広報室 嘱託(平成13年度〜)
広報委員会 副委員長(平成9、10年度)
広告調査委員会 副委員長(平成13年度)
インターネット協議会 副議長(平成9年度)
業務改革委員会 コンピュータ部会長(平成12年度〜)
司法修習委員会、財務委員会、刑事弁護委員会 各委員
法友全期会副代表幹事(平成14年度)
春秋会(法友8部)事務局長(平成15年度)

 東京商工会議所 法律相談員(平成9年度・荒川支部)
 東京弁護士会 クレサラ・商工ローン闇金相談担当(四谷・神田センター)
 財団法人クレジットカウンセリング協会 カウンセラー(平成11年度〜)
 財団法人法律扶助協会新宿支部審査員(平成12年度〜)
 日本弁護士連合会 法務研究財団事務局(情報部会担当)
 早稲田経営学院(Wセミナー)専任講師(刑事訴訟法)
 日本刑事政策研究会(法務省)正会員
 東京弁護士会インターネット法律研究部部会員

著書・講演等
 「法律事務所のためのパソコン導入大作戦」(株式会社トール刊)
 「弁護士のための広告のススメ」(株式会社トール刊)
 「弁護士のためのパソコン導入ガイド」(東京弁護士会法友会刊)
 「パソコン事件簿」(月刊DOS/V Special連載・毎日コミュニケーションズ)
 「最新現代法務全集」第4巻・債権回収(全日法規研究室)
 「困ったときにすぐわかる 内容証明の書き方・出し方」(OS出版)
 「困ったときにすぐわかる インターネットの法律(仮題)」(近刊予定)
 「中小企業のための倒産回避マニュアル(仮題)」(近刊予定)

 「破産と会社更生手続の概要」
   ※厚生労働省 労働研修所での講義(平成14年度より)
 「法律の基礎」 「コンプライアンス」 「借地借家法」 「インターネット法務」
   ※いずれも大手上場企業での定期公演
 「若者の破産」 「非弁提携弁護士被害」その他
   ※フジTV「スーパーニュース」出演
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