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法律コラム


[人事・労務|2006年12月28日]
弁護士 浜田慶信

従業員の転職の自由?

弁護士 浜田慶信

もし長年勤めてきた従業員が突然ライバル会社に移ってしまったらどうでしょうか?戦力的にマイナスになるだけでなく、業務上ないしは技術上の秘密がライバル会社に流出してしまうおそれがあり会社にとって痛手であることは間違いないでしょう。とくに中小企業の場合には人材が命ですから、人材流出の予防は経営者にとって重要な課題といえます。

一方、従業員の立場からすれば、少しでも自分を高く評価してくれる会社で働きたいと思うのは当然であって、そのような考えを責めることは酷というものでしょう。「職業選択の自由」は日本の憲法でも認められている大切な権利ですし、会社が有能な人を他よりも有利な条件で集めてライバルとの競争に勝とうとするのは自由競争原理が働く資本主義社会においてはある意味当然であるともいえます。

よい会社に移りたいという従業員の希望と人材及び企業秘密の流出を防ぎたいという会社の考えが衝突したときどのように調整すべきか、今回はこのテーマを取り上げてみたいと思います。

まず退職後に同業他社に再就職することについて、会社と従業員との間で何らの取り決めもなされていない場合はどうでしょうか。この場合は営業秘密を不正に使用した場合とか以前の会社の信用及び名誉を毀損するような言動を伴う形で競業行為が行われた場合などには以前の会社からの損害賠償請求を認めた例もあるようですが、基本的には従業員の職業選択の自由を重視して同業他社に移ることについて従業員は責任を問われないというのが判例の立場であるといえます。

とすれば会社としては「退職後の2年間は競業関係にある会社に就職しないこと」というような競業避止義務についての特約を定めることによって対処することが考えられますが、このような特約がある場合はどうでしょうか。ある判例は「使用者が、従業員に対し、雇用契約上特約により退職後も競業避止義務を課すことについては、それが当該従業員の職業選択の自由に重大な制約を課すものである以上、無制限に認められるべきではなく、競業避止の内容が必要最小限の範囲であり、また当該競業避止義務を従業員に負担させるに足りうる事情が存するなど合理的なものでなければならない」と述べ、また別の判例は「一般に、何人にも職業選択の自由が保障され、また、一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正で自由な競争を促進すべきものとされている我が国においては、基本的には、競業禁止は、たとい合意によるとしても、無制約に許されてはならないものというべきであり、それが許されるのは、それを必要とする合理的理由があるとき、その必要を満たすに必要な範囲でのみ競業を禁止する合意が、正当な手続きを経て得られ、かつ、禁止に見合う正当な対価の存在が認められる場合に限られるものというべきである」と述べています。

判例の考え方は、競業を禁止する必要性の有無や制約が最小限であることをポイントとしています。その判断を行うに際しては、(1)競業禁止の目的、(2)競業禁止の期間、(3)地域や職種の限定の有無、(4)従業員が担っていた業務の内容、(5)従業員の給与の額、(6)手当の支給など競業禁止を課しうるだけの代償措置の有無、といった諸事情を考慮して、合理的な必要最小限の制約であるか否かが判断されることになります。

このように様々な要素を考慮するため結果を予測しづらいことは否めません。実際、判例も競業禁止の特約を有効とするものもあり無効とするものもありで、具体的な事情により結論は分かれています。しかしながら従業員の権利が職業選択の自由という憲法上保障された権利でありますので、訴訟になった際には会社は特約の合理性をきちんと主張立証しなければならないことは間違いありません。

(2006年11月執筆)

弁護士 浜田慶信

1971年 2月  川崎市生まれ
1995年 3月  一橋大学法学部卒業
1999年10月  司法試験合格
2000年 3月  京都大学大学院法学研究科卒業
2001年10月  弁護士登録(横浜弁護士会)
現在 横浜ランドマーク法律事務所勤務

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