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損害賠償とは何か?(1)

テーマ:契約・取引

2004年5月27日

解説者

弁護士 小川義龍

1、損害賠償とは?

契約も約束も法律的な意味合いは同じものだと言うお話を前々回にした。そして契約にしろ約束にしろ、これを破ってしまった場合には法的責任(ペナルティ)が発生するというところまではお解りになったことと思う。
今回は、そのペナルティとして最も問題となりやすい損害賠償についてお話ししてみよう。


2、損害賠償の考え方

ごく一般的に言うと、損害賠償の具体的計算方法が法律で決められているわけではない。
もちろん、判例の集積などで、おおよその計算方法の基準や相場は存在しているが、それも固定確立したものではない。基本的には、法律では、損害賠償の決め方についての基本的な考え方を示しているにすぎない。この基本的な考え方は、「民法」という法律によって示唆されている。


それによると、まず損害賠償の前提として少なくとも「過失」がなければならない。わざとやった行為(=故意)は当然含まれるが、図らずも不注意でやってしまった行為(=過失)がなければ、損害賠償する必要がないのが原則だ(法律上定められた例外もあるが、ここでは原則だけに言及しておく。)。
言い換えれば、不可抗力は含まれないと言うことだ。例えば、全く予測不可能な天変地異によって損害が発生したとしても、その損害の発生自体にそれなりに注意していても損害が発生したとしたら、過失がない、つまり不可抗力と言うことになるから、賠償責任はないのが原則だと言うことになる。


次に、基本的には「実損を填補」するのが損害賠償だ。実際に被った損害を賠償すれば足りる。
欧米などでは、懲罰的損害賠償といって、実損が生じたかどうかはともかくとして、そのような行為をしたこと自体を問題視して、いわば罰金的な損害賠償金を認める考え方がある。これが企業が行った不法行為のような場合には、社会的責任の大きさに応じて、莫大な賠償額になることがある。しかし、日本の法制度では、このような懲罰的損害賠償は未だ認められていない。実損が発生した場合に、あくまでもその実損の範囲内で賠償するのが原則だからだ。


最後に、行為と結果との間に「相当因果関係」がなくてはならない。
賠償するからには、自分が行った行為と、相手の損害との間に何らかの条件関係(=因果関係)がなくてはならないことは当然だ。しかし単なる条件関係よりもう少し絞りをかけて、自分の行為によって相手が損害を被ることが一般的に考えて「相当」であるかどうかというフィルターをかけるわけだ。
もしこのフィルターがなかったとしたらどうなるだろう。例えば、ある人が不注意で交通事故を起こして人を死なせてしまったとする。その人の行為がなければ人が死ぬ結果にはならなかったわけだから、条件関係は存在している。その人は損害賠償責任を負うことはもちろんだ。しかし、その人を産んだ母親はどうだろう。その人が成人している限り、母親自体には責任はないというのが常識的であろう。しかし、単なる条件関係があれば、損害賠償責任を追求できるとしたら、「母親がその人を産まなければ、その事故は起こらなかった」という条件関係が認められてしまうから、被害者の遺族は、母親にも損害賠償請求出来ることになってしまう。その人の祖母に対しても、曾祖母に対しても際限なく請求できてしまう。これはおかしい。したがって、損害賠償請求はある程度範囲を絞る必要があり、このために「相当性」というフィルターを法律は求めるわけだ。


3、損害賠償の中身

このようにして損害賠償を負わなければならない場合は、一定の要件があるわけだが、それでは実際におわされる損害賠償の中身は何であろうか。
この中身とは、原則として「金銭」だ。金銭以外のものを損害賠償の対象として求めることはできない。例えば、何か不始末をしたときに、「誠意を見せろ」ということを言われることがある。道義的にはありうる言われ方だろう。しかし、誠意を請求するということは法的には認められない。より具体的に、例えば誠意として土下座して謝れとか、全く同じものを用意しろとか、俺の時間を返せとか、こういう要求は、法的には応じる必要がないのが原則だ。
損害賠償は、あくまでも相手が実際に被った損害を、お金で補填する制度なのだ。


こういう意味からすると、精神的損害を被った場合はどうしたらいいのかと疑問が湧く向きもあろう。 精神的損害とは、その人の内心的な面において苦痛を覚えたというものにすぎず、客観的に実損が容易に見えるものではない。また人それぞれに苦痛の程度も多かろう。だからこそ、「金の問題ではない。誠意を見せろ」ということになりやすい。
しかしこういった精神的損害も、損害を類型化して、ある類型では一般的に人はどれくらいの苦痛を被るかという観点から、金銭的に評価された相場がある。これは裁判例などで集積されている相場だが、この相場にしたがって、やはり金銭で賠償することになる。これを「慰謝料」という。


4,損害賠償に関して生ずる各種問題点(次回予告)

今回は、損害賠償に関する基本的な考え方を述べるにとどめておくが、商取引について損害賠償が問題となる場面は多々あると思われる。企業経営をしていれば、かならず損害賠償を覚悟する「しまった!」という場面に少なからず直面した経験がおありであろう。
そこで、この先、何回かに分けて、損害賠償に関する具体的問題点や、その事前予防策について連載してみたいと思う。



小川義龍
昭和39年生  東京都出身
東京都千代田区立番町小、同区立麹町中卒
早稲田大学高等学院卒(昭和58年)
早稲田大学法学部卒(昭和62年)
司法試験合格(平成3年)
最高裁判所 司法研修所 46期修了
弁護士登録(東京弁護士会所属)

東京弁護士会
常議員(平成7年度)
広報室 嘱託(平成13年度〜)
広報委員会 副委員長(平成9、10年度)
広告調査委員会 副委員長(平成13年度)
インターネット協議会 副議長(平成9年度)
業務改革委員会 コンピュータ部会長(平成12年度〜)
司法修習委員会、財務委員会、刑事弁護委員会 各委員
法友全期会副代表幹事(平成14年度)
春秋会(法友8部)事務局長(平成15年度)

 東京商工会議所 法律相談員(平成9年度・荒川支部)
 東京弁護士会 クレサラ・商工ローン闇金相談担当(四谷・神田センター)
 財団法人クレジットカウンセリング協会 カウンセラー(平成11年度〜)
 財団法人法律扶助協会新宿支部審査員(平成12年度〜)
 日本弁護士連合会 法務研究財団事務局(情報部会担当)
 早稲田経営学院(Wセミナー)専任講師(刑事訴訟法)
 日本刑事政策研究会(法務省)正会員
 東京弁護士会インターネット法律研究部部会員

著書・講演等
 「法律事務所のためのパソコン導入大作戦」(株式会社トール刊)
 「弁護士のための広告のススメ」(株式会社トール刊)
 「弁護士のためのパソコン導入ガイド」(東京弁護士会法友会刊)
 「パソコン事件簿」(月刊DOS/V Special連載・毎日コミュニケーションズ)
 「最新現代法務全集」第4巻・債権回収(全日法規研究室)
 「困ったときにすぐわかる 内容証明の書き方・出し方」(OS出版)
 「困ったときにすぐわかる インターネットの法律(仮題)」(近刊予定)
 「中小企業のための倒産回避マニュアル(仮題)」(近刊予定)

 「破産と会社更生手続の概要」
   ※厚生労働省 労働研修所での講義(平成14年度より)
 「法律の基礎」 「コンプライアンス」 「借地借家法」 「インターネット法務」
   ※いずれも大手上場企業での定期公演
 「若者の破産」 「非弁提携弁護士被害」その他
   ※フジTV「スーパーニュース」出演

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