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弁護士報酬は高いか安いか?

テーマ:経営ビジョン・相談

2004年5月20日

解説者

弁護士 小川義龍

本年4月1日から弁護士報酬規定が撤廃された。
これまでは弁護士会の会規によって全国一律の標準報酬額が定められていた。
しかしそれがなくなった。今後は、弁護士毎に自前の報酬規定を予め作成して、 これに基づいて報酬請求することになった。


ところで、弁護士に対する不満の多くは、「報酬が不明確」というものであろう。
弁護士に仕事を頼んだことの無い方のために敢えて説明すると、弁護士報酬は、実は、高かったり安かったりする。妙な言い方で恐縮だが本当だ。
例えば、何かトラブルが起こって弁護士のところに相談に行ったとする。これを法律相談という。このとき弁護士が何をするかというと、相談者が持ち込んだトラブルを聴取して、それに対して口頭でコメントする。まさに相談を受けて回答する面談作業なのだが、この法律相談料は、だいたい30分5000円程度というのが相場だ。それなら時給にして1万円か、いい商売だなと考えるのは早計だ。経営者の方々なら十分ご承知と思うが、我々弁護士も基本的には全員経営者、つまり事業主だ。事業をしていれば、当然経費がかかる。時給にして1万円というのは売り上げにすぎないから、ここから諸種の経費を差し引けば、利益(所得)はわずかだ。また法律相談は弁護士でしか行うことはできず、一般企業のように社員や事務スタッフが代わりに行うわけにはいかない。その時間中は相談者が弁護士を独り占めするわけだ。こう考えてみると、法律相談料の相場は、実に安いといえるはずだ。

一方、1000万円の売掛金を請求するための裁判を依頼したとしよう。この場合、従来の報酬規定によれば、事件を受任したときに頂く費用(着手金)として59万円、めでたく勝訴判決をもらったときに頂く費用(報酬金)として118万円を請求できることになっていた。請求できるというだけで、その額を請求しなくてはならないという義務はないのだが、都合177万円である。請求額の5分の1を弁護士が持っていけるわけだから、仮にそのまま請求されたとしたら割高感を持つケースもあり得よう。
だから従来でも、報酬規定どおり請求するのではなくて、相当減額した形で請求していた弁護士が多かったと思われる。とはいえ、最低でも都合数十万円単位になっていたことは間違いあるまい。


そこで、弁護士報酬はなぜ安くできなかったのかを考えてみよう。
それは弁護士の仕事が「オーダーメイド」だからだ。
一市民的感覚からすると、弁護士という一見個人の職人が、たかが一つの仕事をするのに数十万円から百万円、時には千万円単位の請求をするというのは信じられまい。自分の給料と比べてみては、なんと高給かと嘆息するのではあるまいか。


しかし企業人的感覚からすれば、先に述べた法律相談料の説明から決して高いとは思われまい。まして、大量生産のできない個別案件に応じたオーダーメイドであることからすると、どうやり繰りしても安くするには限度がある。
例えば、訴訟事件を一件依頼されたとしよう。たいていの訴訟事件は裁判所に少なくとも5〜6回は行く必要がある。往復の時間を考えると最低1時間は拘束される。依頼者とも同回数くらい打ち合わせる必要がある。これも1回1時間以上は必要だ。これだけでは足りない。裁判所や依頼者の見えないところで、書面を作成しなくてはならない。この書面もいきなり書けるものではなく、依頼者が持参した証拠を分析したり、法律関係や事実関係を調査したり、そういう事前準備を経て漸く起案できるものだ。かくしてどんなに簡単な訴訟事件であっても数十時間を費やすことになる。それも事務職員の手伝えないところで、弁護士が1人費やす時間として、である。こう考えてみると、数十万円の報酬がかかることも不合理ではないはずだ。


思うに、これまで弁護士報酬が不明朗と思われてきたのは、こういう実質的説明や依頼者の納得を十分得ようとしなかった弁護士の怠慢ないし不遜に負うところが大だったのではあるまいか。安くできなかったのではなく、オーダーメイドだからこその限界を説明できなかったという実態だ。
「先生、お願いします。」「ハイ、ひゃくまんえん。」というだけのやりとり。そして依頼者がなぜ「ひゃくまんえん」かを尋ねれば、「報酬規定によるとそうなっとります。」とだけ説明して逃げてきたのではあるまいか。


弁護士は職業分類によればサービス業だ。サービス業である以上、本分でリーガルサービスを果たすことはもとより当然だが、その対価について、十分依頼者の納得がいくまで説明することも当然であろう。報酬規定が撤廃された今、漸く世間の常識にしたがって、予め依頼者に自分の報酬の妥当性につき十分説明し、場合によっては見積りを出して依頼者に検討してもらい、その上でお互いが気持ちよく仕事をしてゆける、こういう環境が遅ればせながら整備されつつある。


今後弁護士に依頼する機会があったら、どうぞ報酬について徹底的に説明させて、納得して頂きたい。これを回避しようとする弁護士がいたとしたら、門前から依頼しないに越したことはない。


小川義龍
昭和39年生  東京都出身
東京都千代田区立番町小、同区立麹町中卒
早稲田大学高等学院卒(昭和58年)
早稲田大学法学部卒(昭和62年)
司法試験合格(平成3年)
最高裁判所 司法研修所 46期修了
弁護士登録(東京弁護士会所属)

東京弁護士会
常議員(平成7年度)
広報室 嘱託(平成13年度〜)
広報委員会 副委員長(平成9、10年度)
広告調査委員会 副委員長(平成13年度)
インターネット協議会 副議長(平成9年度)
業務改革委員会 コンピュータ部会長(平成12年度〜)
司法修習委員会、財務委員会、刑事弁護委員会 各委員
法友全期会副代表幹事(平成14年度)
春秋会(法友8部)事務局長(平成15年度)

 東京商工会議所 法律相談員(平成9年度・荒川支部)
 東京弁護士会 クレサラ・商工ローン闇金相談担当(四谷・神田センター)
 財団法人クレジットカウンセリング協会 カウンセラー(平成11年度〜)
 財団法人法律扶助協会新宿支部審査員(平成12年度〜)
 日本弁護士連合会 法務研究財団事務局(情報部会担当)
 早稲田経営学院(Wセミナー)専任講師(刑事訴訟法)
 日本刑事政策研究会(法務省)正会員
 東京弁護士会インターネット法律研究部部会員

著書・講演等
 「法律事務所のためのパソコン導入大作戦」(株式会社トール刊)
 「弁護士のための広告のススメ」(株式会社トール刊)
 「弁護士のためのパソコン導入ガイド」(東京弁護士会法友会刊)
 「パソコン事件簿」(月刊DOS/V Special連載・毎日コミュニケーションズ)
 「最新現代法務全集」第4巻・債権回収(全日法規研究室)
 「困ったときにすぐわかる 内容証明の書き方・出し方」(OS出版)
 「困ったときにすぐわかる インターネットの法律(仮題)」(近刊予定)
 「中小企業のための倒産回避マニュアル(仮題)」(近刊予定)

 「破産と会社更生手続の概要」
   ※厚生労働省 労働研修所での講義(平成14年度より)
 「法律の基礎」 「コンプライアンス」 「借地借家法」 「インターネット法務」
   ※いずれも大手上場企業での定期公演
 「若者の破産」 「非弁提携弁護士被害」その他
   ※フジTV「スーパーニュース」出演

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