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契約って何だろう?

テーマ:契約・取引

2004年4月30日

解説者

弁護士 小川義龍

1、契約と約束

ある大企業の新入社員研修の法律基礎講座で、こんな質問をしてみたことがある。
「契約と約束の違いってなんですか?」

大方の答えはこうだ。
「契約とは絶対守らなければならない法的な取り決めごとを言います。このため契約書を作ります」
「一方、約束とは道義的なもので、できるだけ守る必要がありますが、頑張っても守れなければ仕方ないという類のものです。口約束などが代表例です。」

さて、この答えは法的に見て正しいだろうか。
正しくないのである。

正解は、
「契約も約束も法的には全く同じ。契約書を作っても口約束でも、守らなければ法的なペナルティが発生する」
ということなのだ。

約束という言葉は、例えば、取引先とのアポの約束というビジネス上の場面でも、デートの約束というプライベートな場面でも日常生活で頻繁に登場する。そして約束するのは大抵口頭か、せいぜいメール止まりだ。決して「約束書」なんていうお堅い書面に双方調印するなんてことはしないだろう。
一方、契約という言葉は、日常生活では余り登場しない。プライベートな場面ではまずお目にかからないし、ビジネス上の場面でも、商談がまとまった最後に「契約書」に厳かに調印する場面で使われる程度だ。
だから、約束と契約は、法的には異なったものに違いないという思いこみが生じやすい。しかしこれは誤っている。


2、契約するのに契約書は要らない

複数の当事者が何かを合意すること、これを日常用語で言えば「約束」となり、法律用語で言えば「契約」となるだけのことだ。言い方が違うだけで、約束と契約の中身は、当事者間の合意という意味で法的評価は全く同じことになる。
そして、法的には、当事者間の合意は守られなければならないのが原則だ。これは「契約は守らなくてはならない」という法諺としてローマ時代から世界的に言い伝えられている。約束にしろ契約にしろ、守られなかった場合には、法的なペナルティが課せられる。
したがって、口約束に対しても法的な効果(=ペナルティ)が付与されるわけだ。これを言い換えれば、契約するのに契約書は要らないと言うことになる。契約書というタイトルの書類に双方調印して初めて契約が成立すると思いがちだが、実はそうではない。そんな書類は作らなくてもかまわない。口頭であっても「この商品を200万円で売ります」「はい、それで買いましょう」という話が出れば、契約は成立だ。売り主が商品を引き渡したところ、買い主が代金を払ってくれなければ、契約書なんて何もなくっても、売り主は200万円を請求できる。請求しても任意に支払をしてくれなければ、売り主は200万円の支払を求めて、買い主を被告として裁判だってできるわけだ。


3、でも口約束の契約ってあんまり見かけないのはなぜ?

しかし、重要な契約場面では、大抵慎重に検討した上で契約書を作成するだろう。口約束で銀行から1億円を借りようとしても絶対貸してはくれまい。契約書なんて無くても、約束違反があれば裁判にまでして請求できるのに、なぜ契約書をいちいち作るのか。
その理由は簡単だ。「口約束では、証拠になりにくいから」である。
トラブルの中で最もありがちなのが「言った言わない」の争いだ。例えば、売り主は「この商品を200万円で売ります」と言ったのに、買い主は「100万円で売ります」と聞き違えていたらどうだろう。そして買い主は100万円を払って商品を取得したが、当然、売り主は未だ100万円足りないと言う。100万円か200万円かで、言った言わないの争いが起きるわけだ。これが口約束だと、どちらがどう言ったのかは、神のみぞ知る事実となる。裁判官だって、客観的証拠もなしに見聞きもしていない過去の事実がどうだったのかを認定することは不可能だ。
だから、あとになってトラブルが起こっては困るような約束事では契約書を作る。契約書を作ってあれば、それを見返せばいいだけだから、訴訟沙汰どころか、そもそもトラブルが起こらないことも多い。


4、契約書がなかったらどうするか

では、契約書がない約束でトラブルが起こったときにはどうしたらいいのであろうか。
しかしよく考えてみて頂きたい。商取引で、完全に口約束だけで終了してしまうものが多くあるだろうか。確かに、契約書を作らない商取引は意外と多いだろう。しかし、商取引の中では、見積書だとか、注文書だとか、注文請書だとか、こんな書類くらいはやりとりしていないだろうか。注文書などの正式なタイトルの付いた書類まで行かなくとも、メールやファックスで取り引きの内容を詰めていったりはしまいか。
実は、契約書がなくても、取り引きの過程でやりとりされた書類とかメールの類は全部証拠になる。例えば、契約書がなくても、少なくとも注文書の類があれば、基本的な部分に関しては契約書の代わりになる。だから、裁判になっても勝ちやすくなるわけだ。
さらには、本当に何も書類関係が無くても、商品がどのようにして移動したかとか、通常代金が入るべき口座にお金が入っていないとか、こういった客観的「事実関係」を指摘することはできるだろう。こういった事実関係を少しずつでも指摘してゆくことで、実は約束の成立が証明できる場合も多い。
だから、契約書がないからといって、トラブルになって諦める必要は全くないわけだ。


5、とはいえ客観的書類は重要

契約書を始めとする書類関係が揃っていなかったとしても、トラブル解決の糸口はあるとしても、客観的書類が何かあった方がいいことは間違いない。
一方で、契約書は実際問題として作りにくいことも多いだろう。そこで、アドバイスとして、メールやファックスを活用して欲しい。トラブル防止のためには、メールやファックスで、相手の意向やこちらの意向をやりとりしておくことだ。こういう足跡を残しておけばこれがトラブルになったときに役立つ。この時注意したいのは、こちら側が出すメールやファックスよりも、相手から受け取るメールやファックスが最も重要だと言うことだ。「相手にいろいろ言わせてこれをメールやファックスの形で残しておく」、これが将来トラブルが起こったときにこちらを有利な解決に持ってゆくコツだ。
メールやファックスのやりとりができていなくても、トラブルの気配が見えそうな段階で、相手に電話をして、そのやりとりをテープ録音しておくというのもいいだろう。完全にトラブルになってしまった後では、電話をしても相手は、こちらの言うことにことごとく反対するだろうが、早い段階だと、「あなたはこう言いましたよね」といったこちらの問いかけに対して、「いや、それはそうなんですけどね、でも・・・」といったことを軽々しく答えてくれてしまうことも多い。この電話でのやりとりも証拠になる。
なお、メールや録音テープが証拠になるのかという質問を時々受けるが、これらも立派に証拠になるということをよく覚えておいて頂きたい。


小川義龍
昭和39年生  東京都出身
東京都千代田区立番町小、同区立麹町中卒
早稲田大学高等学院卒(昭和58年)
早稲田大学法学部卒(昭和62年)
司法試験合格(平成3年)
最高裁判所 司法研修所 46期修了
弁護士登録(東京弁護士会所属)

東京弁護士会
常議員(平成7年度)
広報室 嘱託(平成13年度〜)
広報委員会 副委員長(平成9、10年度)
広告調査委員会 副委員長(平成13年度)
インターネット協議会 副議長(平成9年度)
業務改革委員会 コンピュータ部会長(平成12年度〜)
司法修習委員会、財務委員会、刑事弁護委員会 各委員
法友全期会副代表幹事(平成14年度)
春秋会(法友8部)事務局長(平成15年度)

 東京商工会議所 法律相談員(平成9年度・荒川支部)
 東京弁護士会 クレサラ・商工ローン闇金相談担当(四谷・神田センター)
 財団法人クレジットカウンセリング協会 カウンセラー(平成11年度〜)
 財団法人法律扶助協会新宿支部審査員(平成12年度〜)
 日本弁護士連合会 法務研究財団事務局(情報部会担当)
 早稲田経営学院(Wセミナー)専任講師(刑事訴訟法)
 日本刑事政策研究会(法務省)正会員
 東京弁護士会インターネット法律研究部部会員

著書・講演等
 「法律事務所のためのパソコン導入大作戦」(株式会社トール刊)
 「弁護士のための広告のススメ」(株式会社トール刊)
 「弁護士のためのパソコン導入ガイド」(東京弁護士会法友会刊)
 「パソコン事件簿」(月刊DOS/V Special連載・毎日コミュニケーションズ)
 「最新現代法務全集」第4巻・債権回収(全日法規研究室)
 「困ったときにすぐわかる 内容証明の書き方・出し方」(OS出版)
 「困ったときにすぐわかる インターネットの法律(仮題)」(近刊予定)
 「中小企業のための倒産回避マニュアル(仮題)」(近刊予定)

 「破産と会社更生手続の概要」
   ※厚生労働省 労働研修所での講義(平成14年度より)
 「法律の基礎」 「コンプライアンス」 「借地借家法」 「インターネット法務」
   ※いずれも大手上場企業での定期公演
 「若者の破産」 「非弁提携弁護士被害」その他
   ※フジTV「スーパーニュース」出演

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