本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

トップページ  >  経営をよくする  >  法律コラム

特集一覧 中小企業に役立つ記事や施策をトピックスごとにまとめています。

うちの会社が差押えだって!?

テーマ:企業統制・リスク管理

2005年10月20日

解説者

弁護士 小川義龍

1,裁判所から「債権差押命令」が来た!

ある日突然、経理担当者が血相変えて社長のところに来た。曰く、「社長、大変です! 裁判所から差押えをされちゃいました!」と。
さて、いかに健全経営を自負なさる御社においても、実はこういう場面は大いにありうるのだ。こういう場面とは、差押えを受けてしまう場面だ。


2,差押えとは、当事者が受けるものとは限らない。

差押えというと、素朴に考えて、お金の支払いをせずに放っておいたペナルティの類だろうというイメージをお持ちではないか。ともあれ、自分に非があれば受けるかもしれないが、非がなければ受けることはない類のものと感じているだろう。
確かに、素朴にイメージされる、お金の支払いをしないペナルティという意味では、非がない者が差押えを受けるいわれはない。しかし、他人がお金の支払いをしないために差押えを受ける際に、そのトラブルに全く関係ない第三者が巻き込まれるのが差押え、とりわけ債権差押えなのだ。


3,債権差押命令と第三債務者

例えば、こういうケースだ。 ある人(債務者)が、金融機関(債権者)から、お金を借りた。そしてそのお金を返さなかったために、債権者から裁判をされて、債務者は債権者に対して、ちゃんとお金を返しなさいと言う判決が出たとしよう。
この場合、債務者が判決に従わずに債権者にお金を返さないままでいると、債権者は債務者の財産に対して強制執行ができる。この強制執行の手段が差押えだ。差押えは、債務者の財産であれば何に対してでも可能だ。財産というと、現金だとか不動産だとか家財道具だとか、とかく債務者が実際に手元に置いて確保しているものに目がいきがちだが、必ずしもそれに限られない。例えば、銀行預金だとか給料だとか、こういった価値も、債務者の財産だ。
こういった銀行預金や給料を差し押さえようという場合に、債務者が預金をしている銀行だとか、債務者が勤務している会社だとか、こういう第三者が巻き込まれることになる。つまり、債権者としては、債務者だけを相手に差押えをしても、銀行や会社にも差押えの事実を知らせなければ意味がない。事実を知らせるどころか、債権者からすれば、実際に取り立てる先は、銀行や会社と言うことになる。本来は債務者に払われるべきお金(銀行預金や給料)を、債務者に代わって債権者が直接受け取れなければ取りっぱぐれてしまう可能性が高い。
そこで、こういった銀行や会社に対して、債務者の預金や給料は私(債権者)が差し押さえたので、あなた(銀行や会社)は、預金者や社員(債務者)ではなくて、私に支払ってください、と、こういう宣言をするのが、預金や給料の差押え、即ち債権差押の制度なのだ。
ここでいう銀行も会社も、債権者に対してはなんの非もない。債権者と債務者のトラブルに巻き込まれただけの第三者だ。しかし、いずれ債務者には支払いをしなければいけないものを、債権者に支払うことになるだけで、支払先が変わったにすぎない。銀行も会社も経済的には何の迷惑も被らない。このような銀行や会社は、第三者なのに債権者に対して支払いの義務を負うという点から、手続き上、<第三債務者>と呼ばれる。


4,第三債務者と表示されていれば心配はいらないのだが・・・

かくして、ある日突然会社に債権差押命令なる書類が届いたとしても、その書類の中に(大抵は「当事者目録」というタイトルの紙片の下に)、御社名が「第三債務者」として表示されていれば、何も心配することはない。別に、御社に何か非があって差押えをされたわけではないのだ。
ただし、全くの他人事として放置してはならない。以下の点に気をつけて対応しないと、今度は御社自身が当事者として巻き込まれたり損を被ったりする。
まず、差押えを受ける直接の当事者である債務者、つまり御社の社員であるが、この社員がいかに可愛くて護ってやりたくても、或いは、社員から聴取した差押えに至る事情がいかにもっともで債権者が非道く思えたとしても、差押命令に従わずに、その社員に給料を全額支払ってしまってはいけない。あくまでも債権差押命令に記載されている債権者に対して支払いをしなくてはならないのだ。仮に社員に対して給料全額を支払ってしまうと、債権者に対してもさらに支払いをしなければならなくなる。つまり二重払いをしてまで社員を保護してやろうという覚悟がない限りは社員に全額支払ってはいけないのだ。
それから、給料の差押えは一定限度がある。給料の全額を差し押さえることは法律上出来ない。債権者に対する支払額の計算基準は、債権差押命令の中の「差押債権目録」に記載されているので、その基準に従って算出した額を債権者に支払い、残りは社員に支払ってやることになる。この計算は注意深く行わないといけない。債権者と社員とで給料を分け合うのが給料の差押えだと思っておけばいい。なお、給料ではなく、役員報酬が差押えの対象になっている場合には、全額を債権者に支払うことになるので、差押債権目録を読み違えないようにしよう。


5,差押えと仮差押があることにも注意

タイトルに「債権差押命令」とあるか「債権仮差押命令」とあるか、<仮>の字が入っているかいないかでも扱いが異なる。仮差押についてはまた改めてお話しする機会があろうが、<仮>が付いていなければ債権者に実際に支払ってしまうことになる。<仮>が付いている場合には、債権者に実際に支払うのではなく、債務者の財産を凍結する効果しかないので、債権者に支払う必要はなく、会社にプールしておくか法務局に供託することになる。


(2005年10月執筆)


小川義龍
昭和39年生  東京都出身
東京都千代田区立番町小、同区立麹町中卒
早稲田大学高等学院卒(昭和58年)
早稲田大学法学部卒(昭和62年)
司法試験合格(平成3年)
最高裁判所 司法研修所 46期修了
弁護士登録(東京弁護士会所属)

東京弁護士会
常議員(平成7年度)
広報室 嘱託(平成13年度〜)
広報委員会 副委員長(平成9、10年度)
広告調査委員会 副委員長(平成13年度)
インターネット協議会 副議長(平成9年度)
業務改革委員会 コンピュータ部会長(平成12年度〜)
司法修習委員会、財務委員会、刑事弁護委員会 各委員
法友全期会副代表幹事(平成14年度)
春秋会(法友8部)事務局長(平成15年度)

 東京商工会議所 法律相談員(平成9年度・荒川支部)
 東京弁護士会 クレサラ・商工ローン闇金相談担当(四谷・神田センター)
 財団法人クレジットカウンセリング協会 カウンセラー(平成11年度〜)
 財団法人法律扶助協会新宿支部審査員(平成12年度〜)
 日本弁護士連合会 法務研究財団事務局(情報部会担当)
 早稲田経営学院(Wセミナー)専任講師(刑事訴訟法)
 日本刑事政策研究会(法務省)正会員
 東京弁護士会インターネット法律研究部部会員

著書・講演等
 「法律事務所のためのパソコン導入大作戦」(株式会社トール刊)
 「弁護士のための広告のススメ」(株式会社トール刊)
 「弁護士のためのパソコン導入ガイド」(東京弁護士会法友会刊)
 「パソコン事件簿」(月刊DOS/V Special連載・毎日コミュニケーションズ)
 「最新現代法務全集」第4巻・債権回収(全日法規研究室)
 「困ったときにすぐわかる 内容証明の書き方・出し方」(OS出版)
 「困ったときにすぐわかる インターネットの法律(仮題)」(近刊予定)
 「中小企業のための倒産回避マニュアル(仮題)」(近刊予定)

 「破産と会社更生手続の概要」
   ※厚生労働省 労働研修所での講義(平成14年度より)
 「法律の基礎」 「コンプライアンス」 「借地借家法」 「インターネット法務」
   ※いずれも大手上場企業での定期公演
 「若者の破産」 「非弁提携弁護士被害」その他
   ※フジTV「スーパーニュース」出演

同テーマの記事を見る 3つのコンテンツから検索ができます!

このページの先頭へ

このページの先頭へ