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法律コラム


2005年11月10日|弁護士 松村昌人

課徴金の免除(独占禁止法の改正)

平成17年4月27日に、課徴金制度の見直し・犯則調査権限導入等を含む「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律」(平成 17年法律第35号)が公布されました。同法による改正後の独占禁止法(以下、新法)では、違反行為を繰り返す企業には加算課徴金を課す一方、違反行為を早期にやめた企業には課徴金の減額をおこない、特に、違反企業が自ら違反事実を申告等した場合には課徴金免除・刑事告発免除の対象とすることを予定しています。改正法施行は早ければ平成18年1月ともされており、信賞必罰的な新法施行により、カルテル等参加者たる企業の行動に対し、一定の影響が予想されます。

1、加算される場合

新法では、繰り返し独占禁止法違反行為をおこなう事業者を、課徴金の加算の対象としました。これは、通常の算定率による課徴金よりも高い不正な利益を得ているからこそ、特定の事業者は違法行為を続けているのであるとの想定に基づき、より高い算定率をもって課徴金の制裁を与えることにより違反行為を抑圧する趣旨のものです。具体的には、当該事業者が以下の場合のいずれかに該当する場合には、課徴金を5割増しにするとしています。

A:調査開始日(立入検査、臨検、捜索又は差押えが最初におこなわれた日)からさかのぼって10年以内に、課徴金の納付命令(確定済)を受けたことがある場合等(新法7条の2第6項1号)
B:上記Aのような立入検査や捜索等がない案件にあっては、事前通知(納付命令)を受けた日からさかのぼって10年以内に、課徴金の納付命令(確定済)を受けたことがある場合等(新法7条の2第6項2号)

例えば、大企業(製造業)の場合には、新法では売上額の10%が課徴金額とされていますが(新法7条の2第1項)、繰り返し違反行為をおこなう事業者であるとして加算対象となると、売上額の15%の課徴金が課せられることになります(新法7条の2第6項柱書)。

2、軽減される場合

上記とは逆に、当該事業者が、以下の(1)〜(3)の全ての要件に該当する場合には、課徴金が2割減額されます(新法7条の2第5項)。

(1)当該違反行為についての調査開始日の1月前の日までに違反行為をやめたこと
(2)上記の加算課徴金対象の事業者でないこと
(3)当該違反行為に係る実行期間が2年未満であること

これは、カルテル等がなされている場合でも、早期に離脱をするための動機を事業者に対して与えるものです。軽減対象となると、前述の大企業(製造業)の例では、課徴金が課せられる場合でも、売上額の8%の課徴金で済むこととなります。

3、減免される場合

更に、新法では、違反行為の解明に資する情報提供を、単独でおこなった事業者に対して、課徴金の減免等をするとしています。これはカルテル等の違反行為が密室でおこなわれ証拠収集が困難であることから、事業者に対して、違反行為からの離脱による恩恵を与えることによりカルテル等の崩壊を促進させることを目的としています。具体的には、違反事業者が自ら違反事実を公正取引委員会に申告等した場合には、情報提供の順序に応じて、以下のとおり課徴金の減免がなされます。

・調査開始日前の1番目の申告者→課徴金を100%免除(新法7条の2第7項)*1
・調査開始日前の2番目の申告者→課徴金を50%免除(新法7条の2第8項1号)
・調査開始日前の3番目の申告者→課徴金を30%免除(新法7条の2第8項2号)
・調査開始日後の申告者→課徴金を30%免除(新法7条の2第9項)*2

*1:調査開始日前の1番目の申告者に対しては、公正取引委員会は、刑事告発をしない予定。
*2:対象事業者は合計で3社迄(新法7条の2第9項)。すなわち、調査開始日前までに既に3社が申告をしていた場合には、調査開始日後に申告をしても課徴金免除は受けられない。
*3:平成17年6月30日に公正取引委員会が公表した「独占禁止法改正法の施行に伴い整備する公正取引委員会規則の原案の公表について」では、報告の前に順位を知りたいという事業者のニーズに配慮して、事業者名を秘したうえでの事前相談に応じるとともに、課徴金減免制度の利用を申し出た場合に想定される順位についても教示するとしている。
*4:前掲*3公表資料では、「課徴金の減免に係る報告及び資料の提出に関する規則(案)」も示されており、申告はファックスにより先着判定をおこなうこと(同規則(案)7条)、公正取引委員会の承認を受けないで、報告を行った事実を第三者に明らかにしないこと(同規則様式1〜3号)等とされている。

この課徴金の減免は、上記の課徴金軽減後の金額に対して適用されます(新法7条の2第8項・9項)。よって、前述の大企業(製造業)の例で、調査開始日前の1番目の申告者では課徴金の全額免除・刑事告発免除、調査開始日前2番目の申告をした場合でも売上額の4%(=8%×50%)の課徴金で済むこととなります。
このように、新法は、カルテル等参加事業者に対し、課徴金免除・刑事告発免除というカルテル等離脱の動機を与えるとともに、他のカルテル等参加事業者が先に申告をしてしまい自社のみが不利益を集中的に受けるのではないかとの疑心暗鬼を醸成する効果をも有しており、カルテル等参加者たる企業の行動が注目されるところです。

(2005年7月執筆)

松村昌人
 第二東京弁護士会 倒産法制検討委員会委員(1999年4月〜)
 法律扶助協会相談登録弁護士(1999年10月〜)
 第二東京弁護士会 広報委員会委員(2000年4月〜)
 日弁連法務研究財団事務局員(2001年4月〜)
   
主要著書
 『民事再生法書式集[新版]』
  <共著>(二弁倒産法制検討委員会,信山社 2001)
 『ビジネスマンのための インターネット法律事典』
  <部分執筆> (日経BP社 2001年)
 『インターネット事件と犯罪をめぐる法律』
  <部分執筆>(オーム社 2000)
 『詳解民事再生法の実務』
  <部分執筆>(第一法規出版 2000)
 『法律業務のためのパソコン徹底活用BOOK』
  <部分執筆>(トール 1999)
 『債権管理回収モデル文例書式集』
  <部分執筆>(新日本法規出版 1996)    等

このコンテンツは「法律情報メールマガジンLIMM」より提供されております。
e-hoki.com LIMMにおける掲載時点(2005年7月5日掲載分)での執筆物であるため、その後の法改正等により、情報が古くなっている場合も、あり得ます。

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