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法律コラム


[組織・運営|2004年4月22日]
弁護士 小川義龍

内容証明って、いったいなに?

弁護士 小川義龍

1、凄いことが起こる書類なのか?

「内容証明」という言葉を聞いたことがない方は殆どいないだろう。正式には、「内容証明郵便」という。
この内容証明、送る方にとっても、受け取る方にとっても、何か「法的に凄いもの」をやりとりしているという意識はあるまいか。内容証明が来ると、慌てふためいて「先生、内容証明が来ちゃいました。明後日までに回答せよと期限が切ってあるんで、今日相談させて下さい。」と私のところに駆け込もうとする顧問先の社長がいたりする。こんな話が来ると、私はまずその内容証明をファックスしてもらって、その上で、大抵は「期限を多少過ぎたって大丈夫ですよ、そんなに慌てなさんな。」とアドバイスする。それでもその顧問先の社長は不満そうな口ぶりだ。「でも先生、期限が切ってあるんですよ、明後日までに回答しないと法的手続に着手するとか何とか・・・」とおっしゃる。
どうやらその社長の頭の中では、内容証明に書かれたままに誠実に対応しないと、自分は相手から一方的に採って喰われる光景が映っているようだ。内容証明とは、見慣れぬ人にとってはこんな心理的効果が働くものであることは間違いないようだが、本当にそれほど凄いものであろうか。

2、タダの手紙+α

実は、内容証明とは、たいしたことはない、「タダの手紙」に過ぎないのだ。
タダの手紙よりも一寸だけ凄いところを言えば、
  (1)手紙の内容について、郵便局がコピーを保管しておいてくれること
  (2)手紙の配達について、郵便局がいつ配達したか証明してくれること
これくらいのプラスα効果があるに過ぎない。それ以上でもそれ以下でもない。だから引っ越しのご挨拶をご家庭からご家庭に内容証明で出したって構わない。そういう使い方をする人はまずいないであろうが。 では、タダの手紙にプラスαの効果2つを付加させる意味はどこにあるのだろうか。プラスαに意味がある場合にだけ、タダの手紙ではなくて内容証明を利用することになる。

3、内容のコピーを郵便局が保管することの意味

手紙の内容を郵便局が保管しておいてくれると、後になってから手紙の内容について紛争が起こったときに、大きな証明手段になる。つまり、タダの手紙を送っただけだと、相手としては後日、「その手紙には、そんなことは書いていなかった」とトボけることができる。手紙とは当事者間でだけやりとりされるものだから、第三者はその内容について何も知らないのが普通だ。だから、手紙の内容について争いが起こった場合に、こちらとしては当時そのような手紙を書いたという証明は極めて難しくなる。
送った手紙のコピーを自分で保管しておいたらいいのではないかと思うかもしれない。しかしそれではダメだ。なぜなら、自分でコピーを保管していても、それは後から捏造したものだ、問題が起こってから書き直してコピーしたものだ、と相手に言われたら、当時のコピーそのままであることをどう証明するか。証明できまい。
だから、将来手紙の内容に関して問題が発生したら困るような類の文章では、内容証明を利用することになる。内容証明にしておいた手紙であれば、郵便局が公的認証として手紙のコピーをつきあわせて、当時作成した手紙の内容の真実性を担保証明してくれるわけだ。公的機関が太鼓判を押すわけだから、相手としては、手紙の内容が後日の捏造だとは言えなくなる。

4、いつ配達したかを郵便局が証明してくれることの意味

次に、いつ配達したかを郵便局が証明してくれること、実はこれが地味だけれども最も重要な効果ともいうべきものだ。
タダの手紙に関して問題が起こるとすれば、そんなことは書いていなかったということよりも、「そんな手紙は受け取っていない」というトラブルだ。タダの手紙は、相手方のポストに投函されるだけだから、相手方がDMなどと一緒に見る前に処分してしまっていたら、嘘ではなく受け取っていないという感覚を持つであろう。或いは、見ていたとしても、自分にとって不利なことが書いてあれば、タダの郵便なら郵便事故の可能性もあることを示唆して、受け取っていないとトボけることもできよう。
ところが、内容証明にしてあれば(正確に言えば、配達証明付きの内容証明郵便であるが。)、受け取っていないとは言えなくなる。内容証明は書留扱いで直接本人宅に配達されるから、郵便局員が配達日時をちゃんと記録している。この記録も公的認証になるため、これが動かぬ証拠になるわけだ。

5、内容証明を使うべき手紙

(1)日時の前後が問題になる手紙
さてこのようなプラスα効果のある内容証明だが、使い時はどこであろうか。
引っ越しの案内に内容証明を使ってもいいが、そうする人はいまいと前述したが、これは引っ越しの案内に何が書いてあったか、相手が受け取ったかどうかでトラブルが起こることは普通ありえないからだ。そう言う意味で、日常の私信を始めとする正にタダの手紙を内容証明で送る必要はない。
内容証明を必要とするのは、主に法的な主張を繰り出す場面だ。法的な主張の中でも、特に、相手が受け取ったことが重要なポイントになる場面では必ず内容証明を利用すると言っても過言ではない。
例えば、相手が受け取ったことが重要なポイントになる例として、時効の援用通知だとか、時効中断のための催告通知などが挙げられる。このように、相手がいつこちらの意思表示を受け取ったか、時間の前後が重要で、かつ将来これを巡ってトラブルになったときに時間の前後を確実に証明したいという場合に、内容証明を使う。
このほかにも、債権譲渡通知も典型的に用いられるケースだ。債権は原則として他人に譲り渡すことができる。しかし債権は、物体ではなくて観念的な権利だから、同じ債権を二重三重に複数の人に譲渡してしまうことができる。このように債権が多重譲渡されてしまった場合に、いったい誰が本当の権利者になれるのか。それを決めるのに内容証明が決定的な証拠になる。つまり最初に内容証明で譲受人であると債務者に通知されたその人が権利者になると民法で決められているのだ。

(2)心理的効果を狙う手紙
逆に、同じ法的権利主張でも、例えば、離婚の請求などを内容証明ですることは、余り意味がない。なぜなら、離婚したいという請求は、別にいつ請求したかという時間の前後が将来トラブルの種になることはあまりないから、原則として、タダの手紙なり、電話なり、適当な方法で行えばいいわけだ(もちろん例外はあるので、離婚請求でも軽々しく考えてはならない場面もある)。
しかし、プラスα効果を狙って内容証明で送らなくてもいいような手紙を、敢えて内容証明で送る場合がある。これは受け取った相手の心理的効果を狙ったものだ。まさに冒頭で紹介した社長は、この心理的効果に見事にハマってしまったわけだ。
つまり、内証証明は、普段見慣れない手紙だ。形式張っていて、いかにも裁判関係の書類のような印象を受ける。今は、後で述べる電子内容証明形式で簡単に送信できるから、それほど格式張ったものではない内容証明も増えてきたが、つい数年前までは、一行20文字×26行以内の形式で、さしずめ誘拐犯の脅迫状のような文字のばらけた体裁のものばかりだった。しかも末尾に、郵便局の認証文言がつけられている。本文の最後には、決まり文句のように「本書到達後1週間以内に回答頂けない場合には、法的手段に着手するのでその旨ご承知おき願う」旨の高圧的な一文も添えられている。さらにこれが弁護士名で発信されていようものなら、これはもう大変な手紙を受け取ってしまったと考えてしまっても致し方あるまい。
こういう心理的効果を狙って、相手の出鼻をくじくために我々弁護士は内容証明を使うケースがある。手の内を空かしてしまったようで忸怩たるものもあるが、心理的効果を狙っただけの内容証明なら、慌てる必要はないのだ。もちろん放置していたら、トラブルは解決しないから、事案に応じて弁護士なり専門家と相談して誠実に回答すべきものも多いであろう。しかしこれは、内容証明だから回答しなければならないというものではない。内容証明に回答義務はないのだから。

6、内容証明の送り方

内容証明については、内容証明の書き方といった類の書籍がビジネス書として多く市販されている(拙著も出版されている。)。これらをご参照頂きたいが、書式が難しい書類に違いないと感じておられないだろうか。
一昔前までは、文字数やつかえる文字などに厳格な規制があったため、にわかには作成できない手紙だった。しかし数年前より、日本郵政公社が「電子内容証明郵便サービス」というものをオンラインで始めている。これは、ワードや一太郎という普通のワープロソフトで作成した文章を、当該サイトからオンラインでダウンロードできるソフトで整形してオンライン上で発信できる画期的なサービスだ(料金はクレジットカード決済)。過去のような難しい書式設定は何も考える必要がない。お勧めである。

7、ちょっとしたノウハウ

内容証明を送る場合に、プラスα効果のうち、「配達証明」の部分が裏目に出る場合がある。つまり、タダの手紙なら、相手方の有無をいわさずポストに投函されるから相手が受け取っていないという言い訳はされるかも知れないが、そのリスクを顧みなければとにかく相手の懐に押し込むことはできる。しかし内容証明だと、相手が不在の場合、ポストには投函されず、郵便局に持ち帰ってしまう。持ち帰ったまま相手が取りに来ないと、結局、発信者の元に戻ってきてしまうのだ。こうなると、タダの手紙として発信した方がまだマシという結果になってしまう。そこで、相手が不在がちで受け取らない可能性があるとか、受け取り拒否する可能性があるような場合には、内容証明を送信すると同時に、全く同文を普通郵便でも同送するという方式が滑り止めとして効果的だ。この場合、内容証明の末尾に「本書同文を、貴殿の受け取り不能に備えて、普通郵便にても本日同送しました。」という一文を入れておくとよい。

小川義龍
昭和39年生  東京都出身
東京都千代田区立番町小、同区立麹町中卒
早稲田大学高等学院卒(昭和58年)
早稲田大学法学部卒(昭和62年)
司法試験合格(平成3年)
最高裁判所 司法研修所 46期修了
弁護士登録(東京弁護士会所属)

東京弁護士会
常議員(平成7年度)
広報室 嘱託(平成13年度〜)
広報委員会 副委員長(平成9、10年度)
広告調査委員会 副委員長(平成13年度)
インターネット協議会 副議長(平成9年度)
業務改革委員会 コンピュータ部会長(平成12年度〜)
司法修習委員会、財務委員会、刑事弁護委員会 各委員
法友全期会副代表幹事(平成14年度)
春秋会(法友8部)事務局長(平成15年度)

 東京商工会議所 法律相談員(平成9年度・荒川支部)
 東京弁護士会 クレサラ・商工ローン闇金相談担当(四谷・神田センター)
 財団法人クレジットカウンセリング協会 カウンセラー(平成11年度〜)
 財団法人法律扶助協会新宿支部審査員(平成12年度〜)
 日本弁護士連合会 法務研究財団事務局(情報部会担当)
 早稲田経営学院(Wセミナー)専任講師(刑事訴訟法)
 日本刑事政策研究会(法務省)正会員
 東京弁護士会インターネット法律研究部部会員

著書・講演等
 「法律事務所のためのパソコン導入大作戦」(株式会社トール刊)
 「弁護士のための広告のススメ」(株式会社トール刊)
 「弁護士のためのパソコン導入ガイド」(東京弁護士会法友会刊)
 「パソコン事件簿」(月刊DOS/V Special連載・毎日コミュニケーションズ)
 「最新現代法務全集」第4巻・債権回収(全日法規研究室)
 「困ったときにすぐわかる 内容証明の書き方・出し方」(OS出版)
 「困ったときにすぐわかる インターネットの法律(仮題)」(近刊予定)
 「中小企業のための倒産回避マニュアル(仮題)」(近刊予定)

 「破産と会社更生手続の概要」
   ※厚生労働省 労働研修所での講義(平成14年度より)
 「法律の基礎」 「コンプライアンス」 「借地借家法」 「インターネット法務」
   ※いずれも大手上場企業での定期公演
 「若者の破産」 「非弁提携弁護士被害」その他
   ※フジTV「スーパーニュース」出演

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