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投資契約締結の注意点

テーマ:契約・取引

2005年11月17日

解説者

弁護士 土谷喜輝

ベンチャー企業は、創業後、ベンチャーキャピタル(VC)などの第三者から出資を受けますが、その際、多くのVCは、何らかの契約の締結を求めてきます。株主になるためには、出資金を払い込み、株券を受領すれば足りるので、特に契約書を作成する必要はないのですが、VCの場合は、出資に際しての条件(公開予定時期や取締役の指名など)を定めておきたいと考えるため契約書を作成することが多くなります。投資契約や出資契約などという名称で作成される契約ですが、その中には、VCとベンチャー企業との間の契約とVCと既存株主(創業者株主)との間の契約が含まれています。この2つの契約を明確に分けるという趣旨から、株式引受契約と株主間契約などに分けるVCもありますが、以下では便宜上、包括して投資契約として説明します。


契約に含まれる事項

投資契約には、主に以下のような事項が定められます。
<1> 発行株式の種類、数、価格
<2> 提出書類などが真実であることの保証
<3> 公開予定時期
<4> 株式の買い戻し
<5> 取締役、オブザーバーの指名
<6> 以後の新株引受権
<7> VCに対する報告義務、VCの検査権限


創業者の株式買取義務

投資契約では、ベンチャー企業が出資を受ける際にVCに提出した決算書や事業報告書に虚偽があった場合の他、公開予定時期を過ぎても公開できなかった場合には、創業者がVCの株を買い取ることを規定する場合があります。このような規定については、(1)その買い取りが創業者の法的義務なのか単なる努力義務なのかと(2)買い取るとした場合の価格はいくらになるのかという2つの問題があります。


創業者が虚偽の決算書などを示して出資を受けた場合は別として、創業者が努力をして公開を目指したが公開までたどり着かなかったという場合に常に創業者に買い取りの法的義務まで負わすのは酷ではないかと思われます。特に、その買取価格が当初の出資額を下回らない価格と定められた場合には、VCは全く損失を負わず、金融機関の貸し付けと変わらなくなってしまいます。VCは、公開による大きな利益を求めて出資をしている訳ですから、それなりのリスクも負担すべきでしょう。


同様の観点から、仮に、買い取りの法的義務を認めるとしても、買取価格は、買い取り時点の時価にするなどの工夫が必要となります。公開ができず、VCが買い取りを求める時点の株式の評価額は、どのような評価方法を用いるかにもよりますが、当初の出資額よりはかなり低くなっているはずですので、創業者としてもリスクを限定することができます。


取締役などの受入

投資契約では、VCが取締役1名を指名する権利を有すると規定する場合があります。また、取締役ではなくオブザーバーを指名することとし、このオブザーバーが取締役会に出席できるとする場合もあります。


創業初期のベンチャー企業は、様々な点で知識・経験が不足するので、VCから派遣された取締役やオブザーバーが適切なアドバイスを行うことにより、ベンチャー企業もメリットを受けることができると考えられます。ただし、取締役会に出席されることにより、ベンチャー企業の秘密がかなり開示されてしまうことになります。取締役やオブザーバーを派遣しているVCは、同業他社のベンチャー企業に出資していることもありますので、秘密保持義務を課していても、ライバル会社などに情報が流れてしまうリスクもあります。また、そこまでいかなくとも、会社としては、本来は、株主に知らせたくなかった情報も取締役などを通じて、結果としてVCに知られてしまうことになります。そこで、ベンチャー企業としては、このようなリスクにも注意しつつ、VCからの取締役やオブザーバー派遣をうまく利用していくというのがよいでしょう。


また、取締役選任は、株主総会で決議すべき事項ですので、投資契約で取締役の指名権限を認めていても、VCが指名した候補者が株主総会で承認されるとは限りません。投資契約において、会社と創業者には、VCが指名した候補者が株主総会で承認されるような措置をとることを規定している場合が多いですが、創業者がそのような努力をしても、他の株主により否決されてしまえば、やむを得ないということになり、会社や創業者が否決による法的責任を負うこともないと考えられます。


まとめ

VCとの間でどのような条件の契約書を締結するかは、ベンチャー企業とVCとの力関係、つまりベンチャー企業がどの程度出資を求めており、VCがどの程度その企業に魅力を感じているかにもよります。しかし、VCからの出資は、あくまで出資であり、金融機関からの借入ではありませんので、創業者が出資額の返還を保証するような内容の契約にはならないように注意すべきです。多くのVCは、銀行などとは異なり、契約条項の修正にある程度は応じてくれますので、上記のような点を注意しながら、VCと契約条件について交渉していく必要があります。


また、VCとの契約については、他の株主平等原則違反の問題や種類株を発行してこのような問題を回避する方法もありますが、これについては、次回以降にご説明したいと思います。


(2005年6月執筆)


土谷喜輝
   ニューヨーク州法曹資格
   
主要著書
 『個人情報保護法Q&A』
  <部分執筆> (中央経済社 2001)
 『インターネットをめぐる米国判例・法律100選<改訂版>』
  <共著>(ジェトロ 2001)
 『ビジネスマンのためのインターネット法律事典』
  <部分執筆> (日経BP社 2001)
 『米国弁護士によるビジネスモデル特許事例詳説』(ジェトロ 2000)   等

このコンテンツは「法律情報メールマガジンLIMM」より提供されております。
e-hoki.com LIMMにおける掲載時点(2004年7月8日掲載分)での執筆物であるため、その後の法改正等により、情報が古くなっている場合も、あり得ます。

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