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動産先取特権による債権回収

テーマ:契約・取引

2004年4月15日

解説者

弁護士 人見勝行

自社の商品を販売している取引先が突然民事再生手続の申立をした場合には、法律に反しない範囲で、迅速に債権回収を図らなければなりません。そこで、見過ごされがちであるのが動産先取特権という権利です。動産先取特権は民法に規定された担保物権であり、非常に強い権利です(民法第311条5号)。


例えば、自社から民事再生手続を申し立てた取引先(以下「再生債務者」といいます)に対して販売された商品が再生債務者から第三者(以下「第三債務者」といいます)に転売され、かつ、第三債務者が再生債務者に対して売買代金を支払っていない場合には、自社の再生債務者に対する売掛金債権を請求債権として、再生債務者の第三債務者に対する売掛金債権を差し押さえることができます。この差押にあたっては、訴訟を提起して判決を得るという迂遠な手続は必要ありません。しかし、その反面、第三債務者が再生債務者に対して支払をする前に差押をしなければならないという時間的な制約があります。すなわち、第三債務者が再生債務者に対して弁済をする前に、証拠を固めて担保権実行の申立をする必要があるのですが、証拠収集にあたっては第三債務者の協力が不可欠となります。以下、必要となる証拠について、具体的に御説明いたします。


まず、自社と再生債務者との間の基本契約書が必要になります。その際、基本契約書の中に、「取引先について民事再生手続開始の申立があった場合には、期限の利益を喪失する。」旨の条項があるかどうかを確認して下さい。これがないと、対象となる個別取引の代金支払期限によっては、自社の再生債務者に対する売掛金請求債権は期限が到来していないものとして、差押が認められない可能性があります。一昔前に作成された契約書には、民事再生ではなく「和議」と記載されているものがありますが、「和議」は民事再生を含まないとする解釈がありますので注意が必要です。同様の理由で、再生債務者と第三債務者の間の基本契約書も必要になります。なお、民事再生手続開始の申立があったことは、再生債務者の商業登記簿謄本に監督命令の登記があることによって証明することができます。


次に、自社と再生債務者の間の注文書、請求書(控)、受領書と、再生債務者と第三債務者の間の注文書(控)、請求書、受領書(控)が必要になります。これらの証拠は、自社が再生債務者に売却した商品と、再生債務者が第三債務者に対して売却した商品が同一のものであることを証明するためのものです。各証拠の記載を見て、全て同一の商品名が記載されているかどうかを確認して下さい。
さらに、各裁判所の運用により、追加の書類を要求されることもありますので、申立に際しては、管轄を有する裁判所に問い合わせをするなどして、不備を補うことが非常に重要となります。


以上の書類は、原則として、全て原本を用意する必要があります。自社の保管する書類については当然原本を用意できると思いますが、問題は第三債務者の保管する書類についてです。もちろん、預り証を発行して原本を借り受けることができれば問題はないのですが、それができない場合には、そのコピーに「原本と相違ない旨を確認する」と記入の上、記名押印をしてもらえば、代用できる場合があります。


債権差押命令が発令されて第三債務者に送達されれば、第三債務者は再生債務者に対して、売掛金債務を弁済することができなくなります。送達が確実に行われるように、第三債務者の登記簿上の本店所在地と現実の本店所在地が同一であるかどうか、事前に第三債務者に確認して下さい。この点の確認を怠ると、送達が遅れて債権回収の機を逸するおそれがあります。


迅速に証拠を収集し、申立を行うことが非常に重要になりますので、常日頃から、証拠となりうる書類の管理を適切に行い、第三債務者の概要を把握しておくなど、万が一の事態に備えた管理体制を構築することが要請されます。


人見勝行 弁護士

このコンテンツは「法律情報メールマガジンLIMM」より提供されております
e-hoki.com LIMMにおける掲載時点(2003年11月26日掲載分)での執筆物であるため、その後の法改正等により、情報が古くなっている場合も、あり得ます。

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