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法律コラム


2005年12月22日|弁護士 小川義龍

ソロプレーできない法曹たち

弁護士 小川義龍

1,クビになった裁判官

判決が短すぎることを上司に注意され、それを改めなかったとして、ごく最近、ある裁判官がクビになった。
実は裁判官にはサラリーマン的なイメージによる「上司」はいないし、まず「クビ」もない。裁判官は、各人が憲法上独立した存在であり、裁判について上司の指揮命令を受けるものではない。また身分が保障されてこその公平な裁判だから、恣意的なクビもない。そういう意味では公務員といっても憲法が手厚く保護することを決めた特殊な立場であると言っていい。
しかしこの裁判官の場合は、判決や特定の法分野に大いなるポリシーを発揮しすぎるきらいがあったのかもしれない。私は、法律家として、特に裁判官として、そのようなやんちゃなパーソナリティが居てもいいのではないかと思う。もちろん、短すぎる判決には反対だ。しかしだからといって、裁判官としての適正云々を言われてクビになるというのも、日本の裁判所が右へ倣えのイイ子ばかり揃えることになっているのではないかと、釈然としない。
裁判官のあるべき姿とは何か、そもそも裁判官に「あるべき姿」というものが規定されてしまっていいのかどうか、考えさせられる一件であった。世間的には、変わった裁判官として一蹴されてしまいそうなイメージがあるように思われるが、実はそういう発想が危険かも知れない。

2,逮捕された検察官

これは旧聞に属するが、かつて大阪高検で名をはせた大物検察官が、内部告発寸前で逮捕された件は記憶されているだろうか。逮捕された嫌疑は、暴力団との癒着という名目であったが、いかにも安っぽいドラマにありそうな口封じ的なにおいがしたものだ。
私は、報道されたところしか知らないので、素人的感想以上には申し上げられないが、検察庁という組織で、身内を裏切る動きをしているものが粛正されるという事態は、ありえないことではないと思う。これは検察庁に限らず、組織なら多かれ少なかれそうだろう。組織の原初的な自然反応といってもいいかもしれない。
実際に、検察庁が正しいのかその検察官が正しいのか、私にはよくわからないが、いずれにせよ、ことは「検察」の問題だ。昨日の仲間は今日の敵となってしまうところが、さしずめ男女問題のどろどろを見させられているようで、市民的感覚としてはどちらが正しかろうが悪かろうが、あまり気持ちの良いものではない。
ちなみに、検察官は裁判官と違って、組織が一枚岩として機動的に動くことを法律が想定している面もあって、体育会系の組織の一員だ。一枚岩の組織は、多くの場面で素晴らしいチームプレイを見せるが、ある時は高校の部室で煙草を吸ってもチクるなという風にもなりかねない。
実は検察官は、独任制官庁といって、一人一人が独立して検察権を行使できる存在でもあるのだが、この辺の独立意識は殆どないように見える。どうやら、裁判官だけではなく、検察官も、ソロプレーは好まれない土壌になりつつあるようだ。いや、もともとそういう土壌だったのか。

3,就職したがる弁護士

私が弁護士登録した10数年前に既にそうであったが、なりたての弁護士は、どこかの事務所に「就職」をする。ここ数年、所属弁護士が100名規模の大ローファームも散見されるようになり、こういう事務所には、ほとんどサラリーマン的な感覚で就職する弁護士も多いように見受けられる。
しかし果たして弁護士とは就職をするものなのか。弁護士は自治が認められている唯一の職業で、監督官庁がない。法務省に監督されていると誤解する人もいるが、国家機関からの監督はない。なぜなら、国に対して遠慮なくモノが言えるのも弁護士の役割として期待されているからだ。国に監督されていてはものが言いづらい。かくして弁護士は、国に限らず誰からも独立の存在でいたいと考えるものが多かったはずだ。依頼者からも事務所からも自由であるからこそ、正しいモノ言いができる。
もちろん駆け出しの弁護士が一人で食べてゆくのは難しいから、どこかの事務所に入って仕事の研鑽を積むというスタイルは昔からあった。これを俗に「イソ弁」という。居候弁護士の意味だ。しかし、居候だから、事務所のスペースや電話は貸し与えるが、給料などがまともに払われるわけではなく、自分で仕事をして稼いで早くイソ弁脱却を図るのが普通だったようだ。
しかし最近は、イソ弁という言葉は蔑称的でよろしくない、就職して給料をもらうのが普通なのだから「勤務弁護士」と呼べという。いやはや、私にしてみれば、勤務弁護士の方がよほど蔑称だ。勤務・就職などしたら独立した存在ではなくなると思うが、そういう意識は湧かないのか。
裁判官も、検察官も、弁護士も、専ら頼るものは自分ひとりという土壌が失われつつある気がするのは杞憂だといいのだが。

(2005年12月執筆)

小川義龍
昭和39年生  東京都出身
東京都千代田区立番町小、同区立麹町中卒
早稲田大学高等学院卒(昭和58年)
早稲田大学法学部卒(昭和62年)
司法試験合格(平成3年)
最高裁判所 司法研修所 46期修了
弁護士登録(東京弁護士会所属)

東京弁護士会
常議員(平成7年度)
広報室 嘱託(平成13年度〜)
広報委員会 副委員長(平成9、10年度)
広告調査委員会 副委員長(平成13年度)
インターネット協議会 副議長(平成9年度)
業務改革委員会 コンピュータ部会長(平成12年度〜)
司法修習委員会、財務委員会、刑事弁護委員会 各委員
法友全期会副代表幹事(平成14年度)
春秋会(法友8部)事務局長(平成15年度)

 東京商工会議所 法律相談員(平成9年度・荒川支部)
 東京弁護士会 クレサラ・商工ローン闇金相談担当(四谷・神田センター)
 財団法人クレジットカウンセリング協会 カウンセラー(平成11年度〜)
 財団法人法律扶助協会新宿支部審査員(平成12年度〜)
 日本弁護士連合会 法務研究財団事務局(情報部会担当)
 早稲田経営学院(Wセミナー)専任講師(刑事訴訟法)
 日本刑事政策研究会(法務省)正会員
 東京弁護士会インターネット法律研究部部会員

著書・講演等
 「法律事務所のためのパソコン導入大作戦」(株式会社トール刊)
 「弁護士のための広告のススメ」(株式会社トール刊)
 「弁護士のためのパソコン導入ガイド」(東京弁護士会法友会刊)
 「パソコン事件簿」(月刊DOS/V Special連載・毎日コミュニケーションズ)
 「最新現代法務全集」第4巻・債権回収(全日法規研究室)
 「困ったときにすぐわかる 内容証明の書き方・出し方」(OS出版)
 「困ったときにすぐわかる インターネットの法律(仮題)」(近刊予定)
 「中小企業のための倒産回避マニュアル(仮題)」(近刊予定)

 「破産と会社更生手続の概要」
   ※厚生労働省 労働研修所での講義(平成14年度より)
 「法律の基礎」 「コンプライアンス」 「借地借家法」 「インターネット法務」
   ※いずれも大手上場企業での定期公演
 「若者の破産」 「非弁提携弁護士被害」その他
   ※フジTV「スーパーニュース」出演

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