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オンラインニュース見出しへのリンク行為

テーマ:自社HP・eコマース

2006年1月19日

解説者

弁護士 小川憲久

読売新聞はホームページ「YOMIURI ONLINE」に読売新聞ニュースの記事本文と記事見出しを掲載しています。そして、読売新聞はヤフーと契約して記事見出しを「Yahoo! JAPAN」ウェブサイト上の「Yahoo!ニュース」に掲載させています。ヤフーは「Yahoo!ニュース」のその見出し自体をリンクボタンとしてYOMIURI ONLINE記事のウェブページにリンクしています。これによって「Yahoo!ニュース」のユーザはYOMIURI ONLINEの記事を読むことができるわけです。D社は自己のウェブサイトにおいて「Yahoo!ニュース」へリンクを張り、ユーザ登録をしたユーザのウェブ・ページにライントピックスサービスとして「Yahoo!ニュース」のYOMIURI ONLINEの見出しとほぼ同一の記事見出しを作成提供しています。この記事見出しは「Yahoo!ニュース」の記事のウェブ・ページにリンクするリンクボタン機能を有しており、見出しをクリックすると別ウィンドウで「Yahoo!ニュース」の記事のウェブ・ページが開き、リンクされているYOMIURI ONLINE記事のウェブページと同一の記事が表示されます。また、D社は自己のホーム・ページでも同様の方法でニュースサービスを行っています。D社の記事見出しの多くは「Yahoo!ニュース」の記事見出しと同一の語句を使用していました。そこで、読売新聞はこの記事見出しの使用の差し止めと損害賠償をD社に求めました。
本件について昨年3月24日に東京地裁は読売新聞の請求を棄却する判決を言い渡しました。(この判決については以前の知財アベニューで取り上げています。)
地裁判決は、YOMIURI ONLINE記事の見出し一般については著作権法10条2項の「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」に該当して著作物にはあたらないとし、具体的な個々の見出しについても、格別の工夫が凝らされているといえず、創作的表現は認められないとして、見出しを掲出することは読売新聞の著作権を侵害したことにならないとしました。そして、インターネット上に無償で公開した情報について著作権法等によって排他的権利が認められないものについては、第三者がこれらを利用することは本来自由である、と判示しました。
去る10月6日、この地裁判決に対する知的財産高等裁判所の控訴審判決がなされました。知財高裁は、ニュース報道における記事見出しは創作性を発揮する余地が比較的少ないため、著作物性が肯定されることは容易ではない。しかし、記事見出しであるからといって、直ちにすべてが著作権法10条2項に該当して著作物性が否定されるものとはいえず、その表現いかんでは、創作性を肯定し得る余地もないではないため、結局は、各記事見出しの表現を個別具体的に検討して、創作的表現であるといえるか否かを判断すべきものである、として具体的に個々の見出しを吟味し、いずれも創作性を認めることができないとして地裁判決と同様に著作物性を否定し、D社の著作権侵害を否定しました。他方、民法の不法行為が成立するためには必ずしも著作権など法律に定められた厳密な意味での権利が侵害された場合に限らず、法的保護に値する利益が違法に侵害がされた場合であれば不法行為が成立するものと解すべきであるとしました。そして、ニュース報道における情報は、報道機関による多大の労力、費用をかけた取材、原稿作成、編集、見出し作成などの一連の日々の活動があるからこそ、インターネット上の有用な情報となり得るものであり、著作権法による保護の下にあるとまでは認められないものの、相応の苦労・工夫により作成されたものであって、簡潔な表現により報道されるニュースの概要について一応の理解ができるようになっていること、見出しのみでも有料での取引対象とされるなど独立した価値を有するものとして扱われている実情があることなどに照らせば、見出しは、法的保護に値する利益となり得るものというべきであるとし、D社は無断で、営利の目的をもって、かつ、反復継続して、しかも、見出しが作成されて間もないいわば情報の鮮度が高い時期に、見出し及び記事に依拠して、特段の労力を要することもなくこれらをデッドコピーないし実質的にデッドコピーしてリンク見出しを作成し、これらを自らのホームページ上のみならず、2万サイト程度にも及ぶ登録ユーザのホームページ上に表示させるなど、実質的にリンク見出しを配信しているものであって、このようなライントピックスサービスが読売新聞の見出しに関する業務と競合する面があることも否定できないものであるから、D社のライントピックスサービスとしての一連の行為は、社会的に許容される限度を越えたものであって、読売新聞の法的保護に値する利益を違法に侵害したものとして不法行為を構成するものというべきである、として損害賠償を認めました。
この高裁判決は、リンク自体について権利侵害等の問題はないことを前提にしているものということができます。リンクは自由利用であるが見出しの複製は不法行為になりうるというものです。これはリンクの法律問題に一つの答えを出したものということができます。著作物性のない情報であっても経済的価値のあるものについてのデットコピーは状況によっては不法行為になるとするもので、具体的事案の解決という観点では妥当な結論ということができるとともに、最近の微妙な知財侵害事件での裁判所の傾向を示しているということもできます。


(2005年10月執筆)


土谷喜輝
   ニューヨーク州法曹資格
   
主要著書
 『個人情報保護法Q&A』
  <部分執筆> (中央経済社 2001)
 『インターネットをめぐる米国判例・法律100選<改訂版>』
  <共著>(ジェトロ 2001)
 『ビジネスマンのためのインターネット法律事典』
  <部分執筆> (日経BP社 2001)
 『米国弁護士によるビジネスモデル特許事例詳説』(ジェトロ 2000)   等

このコンテンツは「法律情報メールマガジンLIMM」より提供されております。
e-hoki.com LIMMにおける掲載時点(2005年8月19日掲載分)での執筆物であるため、その後の法改正等により、情報が古くなっている場合も、あり得ます。

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