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オーナー(貸主)に「出て行け」と言われたら

テーマ:契約・取引

2006年3月30日

解説者

弁護士 田中弘人

会社にとって、オフィスは単なる仕事場にとどまらず、会社の顔そのものであるといえます。そんなオフィスを賃料を支払って確保している会社も多いはず。
ところが、契約更新が近づいたある日、オーナー(貸主)がやってきて「もっと高い賃料で新しいテナントを入れることにしたから、おたくとは契約更新しないよ。契約終了日に退去して。」と求められたとします。この場合、オーナー(貸主)の求めに応じて、オフィスをたたんで退去するしかないのでしょうか?


1 期間満了に至った建物賃貸借契約の運命

借主が賃貸物件から出て行かなければならないのは、貸主・借主間の建物賃貸借契約が終了してしまったときです。
そこで、期間満了に至った建物賃貸借契約の運命について、借地借家法がどう扱っているのかというと、平たく言ってしまえば、
(1) 合意のうえ、更新されれば建物賃貸借契約は継続する(合意更新)。
(2) 貸主から更新しないから退去してくれと求められていたときでも、借主が期間満了後もこれまでどおり使用し、貸主もこれに特にクレームをつけなければ建物賃貸借契約は更新・継続する(法定更新)。
(3) 貸主が「期間満了の1年前〜6ヶ月前までに借主に対して契約の更新をしない旨述べ(更新拒絶)」かつ「その拒絶にもっともな理由(正当事由)があるとき」は、建物賃貸借契約は更新されず、終了する。
と定められています。
つまり、借主は、貸主から契約を更新しないから退去してくれと言われても、(3)にあてはまらない限り建物賃貸借契約は更新・継続しますから、賃貸物件から出て行く必要はないということになります。


2 「正当事由」とは

更新拒絶を一定の期間内に行うことは簡単なことですから、建物賃貸借契約が終了するかは更新拒絶に「正当事由」があるか否かという点にかかることになります。貸主から更新拒絶されたときには、本当に契約が終了し退去しなければならないか否かをこの「正当事由」の観点から考えてください。
では、その「正当事由」とやらは一体どのようなことなのでしょうか?借地借家法上は、「正当事由」を
(1) 賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情
(2) 建物の賃貸借に関する従前の経過
(3) 建物の利用状況及び建物の現況
(4) 建物の明け渡しと引換えに賃借人に対してなす財産上の給付
を考慮して決するとしています。
それぞれ具体的にみると
(1)については、それぞれの当事者に、どれほどその建物を使用する必要性があるのか、またその理由は何か(貸主による使用の必要性が借主のそれより高ければ、正当事由を認めるにプラスとなります。)。
(2)については、借主が建物を借りるに至った経緯、権利金の授受、賃料の額はどうだったのか(貸主が借主に同情して短期間の予定で安く貸してあげたという事情は、正当事由を認めるにプラスとなります。)。
(3)については、建物の老朽化の程度はどれくらいか等(建替が必要なほど老朽化がひどいと正当事由を認めるにプラスとなります。)。
(4)については、いわゆる立退料の提案はあるか、あるとしてその金額はどの程度か(副次的ではありますが、立退料が相当額であれば正当事由を認めるにプラスとなります)。
なお、立退料は、営業補償、引っ越し代等々の要素を考慮して決定したり、不動産鑑定士に専門的に決定してもらったりと、その決め方は様々です。また、相場というものはあってないものといえるでしょう。


今回のケースでは、更新拒絶の理由が「賃料の高いテナントを入れたい」というオーナーの経済的都合ですから、「正当事由」は認められないでしょう。
ですから、更新拒絶は効力を生ぜず、建物賃貸借契約は継続し、よって借主も退去する必要はありません。「更新拒絶に正当事由がないから、退去はしません。」と断ってください。
このように、借主は、借地借家法上厚く保護されていています。ですが、賃貸借契約は、貸主・借主との信頼関係に成り立っているものです。退去まで求められれば仕方ありませんが、やはり、普段から円満なる関係を築きたいものです。
もうひとつ、上記は、普通借家契約に関するものです。定期借家契約についてはあてはまりません。次回はそのあたりをお話しできればと思います。


(次回へ続く)


(2006年3月執筆)


弁護士 田中弘人(たなかひろと)

1994年 早稲田大学法学部卒業
1999年 司法試験合格
2001年 弁護士登録(横浜弁護士会)
        立川法律事務所所属
2006年 横浜港和法律事務所設立

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