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定款変更を必要としない企業防衛

テーマ:役員・株主

2006年4月13日

解説者

弁護士 人見勝行

今年の4月に施行予定の会社法を見据えて、多くの企業が企業買収に対する防衛策を講じる動きを見せています。例えば、拒否権付種類株式(いわゆる黄金株)を平時に友好的な第三者に対して発行し、経営に関わる重要事項に関する拒否権を付与しておくとともに、譲渡制限を付して敵対的な第三者に対する譲渡を予め制限することができるようになります。しかしながら、譲渡制限付の拒否権付種類株式を発行するためには、定款変更の特別決議と種類株主総会の特別決議が必要となります。すなわち、株主の同意がなければ、譲渡制限付の拒否権付種類株式を発行することはできないのです。そして、同様に、多く企業買収に対する防衛策は、導入に際して定款の変更を必要とするため、株主総会の大多数の同意を得る必要があるのです。
もっとも、株主総会の特別決議を経ることは、決して簡単なことではありません。現に、既に開催された株主総会において、企業買収に対する防衛策を導入するために株主総会の決議を得ようとしたにもかかわらず、否決された例が決して少なくはないのです。もとより、株主の立場から見れば、現経営者に代わって企業の業績を向上させることを期待できる者であれば大歓迎ということになるのですから、少なくとも、経営陣の保身につながるような防衛策に反対することは、当然の理です。
とはいえ、企業買収を意図する者の中には、企業の長期的な利益を考慮することなく、事業を解体して切り売りを試みる者などもおりますので、経営陣としても企業買収に対する防衛策を講じないわけにはいきません。
そこで、株主総会の決議を必要としない企業買収に対する防衛策として、会社法の施行後においても、依然として、募集株式(新株)の第三者割当は、重要な意義を有するものとなります。当然、買収者は、募集株式の発行等の差止仮処分を求めることになりますが、発行価額が適切で、さらに、資金調達の必要性があり、調達した資金の利用計画に合理性があれば、仮処分の申立は退けられる見込みがあります(東京地方裁判所平成16年7月30日決定、資料版商事法務 245号129頁等)。問題は、資金調達の必要性等が真に存在するかという点であり、外部の専門家に分析を依頼するなどして、慎重に検討しなければなりません。仮に、資金調達は企業買収を防衛するための名目のものに過ぎないと判断された場合には、差止の仮処分命令が発令されることになるでしょう。
また、事前の防衛策として有用であるのが、取締役の空席を無くしておくことです。そもそも、買収者側の者を取締役として就任させなければ、買収者の意向が経営に反映される旨を制限できることになります。併せて、取締役の任期を全員一律にしないことも重要です。仮に、全員一律の任期を定めた場合には、取締役全員が同時に退任することになりますので、買収者としても、現取締役の退任を待って、取締役を全員改選することができてしまうのです。
加えて、買収者が出現した場合には、買収者以外の第三者を買収して自社の企業価値を増大させることも、企業買収のコストを増大させるという点では、企業買収に対する防衛策となります。
さらに、株主の立場から見て、取締役が保身を図ろうとするものでなければ、比較的、定款の変更も容易になるものと思われます。そこで、合併の可決要件を加重するなど、組織再編行為を困難にする方向で、かつ、株主の意思を重視する方向での定款変更を提案することも考えられます。
何れにしても、株式を上場すること自体、株式の流通を意図するものであり、取得者に制限を設けないわけですから、株式を上場する以上、企業買収の危険は常に存在することになります。従って、資金調達等に難を生じないのであれば、上場を廃止することも検討すべき時期にあるのかもしれません。


(2005年11月執筆)


このコンテンツは「法律情報メールマガジンLIMM」より提供されております。
e-hoki.com LIMMにおける掲載時点(2005年12月6日掲載分)での執筆物であるため、その後の法改正等により、情報が古くなっている場合も、あり得ます。

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