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内部統制システムの構築

テーマ:企業統制・リスク管理

2006年5月11日

解説者

弁護士 人見勝行

内部構成システムとは、会社の行う事業の規模や特性などに応じたリスクの管理体制のことで、健全な会社経営を維持するために構築されるものです。そして、本年度に施行予定の会社法によれば、大会社の取締役は、「取締役の職務が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備」を決定しなければならないものとされており(会社法第348条第4項、第362条第5項、第 416条第2項)、大会社は、内部統制システムの構築を義務付けられることになりました。
もっとも、内部統制システムの構築は、現行法の下でも当然に期待されているということができます。この点について、大阪地方裁判所判決平成12年9月20 日(判例時報1721号3頁)は、取締役が内部統制システムの構築義務を負うだけでなく、内部統制システムが構築されているか、また、内部統制システムが機能しているかを監視することが、取締役の善管注意義務の内容であることを判示しています。したがって、現行法の下でも、内部統制システムの構築を怠った取締役は、社内で行われた違法行為を知らないとしても、当該違法行為について責任を負わされる可能性があるのです。特に、大会社では、取締役が社内の違法行為の全てを監視することは、規模的にも技術的にも不可能ですから、予め、内部統制システムを構築して、社内で違法行為が行われないように常に監視する必要があります。しかしながら、近時、企業の不祥事が多発しており、その多くが内部の監視体制に問題があるといえるものであることから、今般、会社法で明文が定められることになったのです。
それでは、具体的に何を定めればよいかという点ですが、先日公表された法務省令案を参照しても、「別に省令で定めるところによる」と規定されているのみで(法務省令案第61条、第63条、第72条)、未だ定かではないのですが、この点については、従前の裁判例が参考になります。例えば、違法な添加物が混入した食品を販売して会社に損害を与えたことを理由に提起された株主代表訴訟では、仕入先と取引を開始する際に仕入先において原材料の検査実施を徹底しているものと認定したこと、事前に原材料の生産地等の記載のある規格書を徴収し、有事の際に原因を追究できるようにして損害の拡大防止策を予め講じていたことなどが考慮されています(大阪地方裁判所判決平成16年12月22日判例時報1892号108頁)。結局は、会社の行う事業毎に、予想されるリスクの状況を正確に把握し、適切に制御することが必要になります。
また、経営判断には、程度の差こそあれ、常にリスクが伴います。特に、投機的な企業活動を行う際には、当然、失敗した場合の損失も多大なものとなります。しかしながら、例えば、投資行為の危険性に相応するリスク管理体制を構築した上で投資行為を行う場合のように、発生しうるリスクを的確に予測し、リスクとリターンを適切に対比した上で経営判断を行ったのであれば、当該判断は取締役に委ねられた裁量の範囲内の行為として、当然に違法の責を帯びるものではないといえます。
なお、リスク管理体制の内容は、リスクが現実化した際の様々な経験の蓄積やリスクに対する研究の成果の集積によって充実するという点にも注意を払う必要があります。すなわち、内部統制システムに不備があるか否かは、問題が生じた時点においてのリスクに対する認識の可能性やリスク管理体制の水準が基準となるのであって、問題の発生後に蓄積された経験を加算して判断されるものではないのです。
なお、リスク管理体制の内容は、リスクが現実化した際の様々な経験の蓄積やリスクに対する研究の成果の集積によって充実するという点にも注意を払う必要があります。すなわち、内部統制システムに不備があるか否かは、問題が生じた時点においてのリスクに対する認識の可能性やリスク管理体制の水準が基準となるのであって、問題の発生後に蓄積された経験を加算して判断されるものではないのです。
何れにしても、充実した内部統制システムを構築することは、取引先や消費者の信頼を得ることにもつながりますので、社内のリスク管理体制を見直すことをお勧め致します。


(2005年12月執筆)


このコンテンツは「法律情報メールマガジンLIMM」より提供されております。
e-hoki.com LIMMにおける掲載時点(2006年1月13日掲載分)での執筆物であるため、その後の法改正等により、情報が古くなっている場合も、あり得ます。

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