本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

トップページ  >  経営をよくする  >  法律コラム

特集一覧 中小企業に役立つ記事や施策をトピックスごとにまとめています。

オーナー(貸主)に「出て行け」と言われたら(その2)

テーマ:契約・取引

2006年7月27日

解説者

弁護士 田中弘人

前回、普通借家契約を結んでいるオーナー(貸主)から、「出て行け」と言われた場合をテーマにお話ししました( 2006年3月執筆) 。
それでは、オーナー(貸主)と結んでいる借家契約が、この普通借家契約ではなく、定期借家契約であった場合はどうなるのでしょうか。オーナー(貸主)の求めに応じて、オフィスをたたんで退去するしかないのでしょうか?


1  定期借家契約とは

定期借家契約とは、期間の満了によって更新されることなく賃貸借契約が終了する借家契約のことです。目的物を建物とする期間の定めのある賃貸借契約という点では普通借家契約とは共通します。普通借家契約との内容面における大きな相違点は以下のとおりです。


(1)  正当事由制度(借地借家法 28 条)がない
普通借家契約においては、期間の満了に伴って更新拒絶されても、契約を終了させるにもっともな理由(正当事由)がない限り、契約は更新・継続されます。しかし、定期借家契約においては、正当事由がなくとも、期間が満了すれば契約は終了します。


(2)  更新がなされない(借地借家法 38 条 1 項)
(1) を裏側から説明することになりますが、普通借家契約には、法律または合意による更新が可能ですが、定期借家契約は、期間が満了すれば契約は終了し、更新はなされません。


2  オーナー(貸主)から「出て行け」と言われた場合

とすると、オーナー(貸主)から「出て行け」と言われた場合は以下のとおりとなるでしょう。


(1)  オーナー(貸主)が「出て行け」という以上、出て行かなければなりません。
定期借家契約は、期間の満了とともに終了するのですから、そこに留まることはできません。
せっかくこれまで会社の顔として信用を培ってきたオフィスなのに、心ならず出て行かなければならないのは、大きな痛手です。


(2) 逆に、オーナー(貸主)が、借主の頼みを聞いて、再契約してくれるかもしれません。定期借家契約は期間の満了により終了しますから、更新はあり得ず、あくまでまっさらな状態から再契約をすることになります。そうであれば、同じ場所で営業が継続できますから、助かりますね。
ただ、オーナー(貸主)が、従前と同じ条件で再契約してくれるとは限りません。「賃料を上げてくれるなら、再契約しましょう。いやなら、契約は終了しているのですから、出て行っていただくしかありません。」と従前よりオーナー(貸主)に有利な、つまり借主には不利な条件を提案してくるかもしれません。借主としては、「賃料を上げられるのは困るけど、ここでの営業も軌道に乗ってきたし、引っ越し費用ももったいないし...。」との経営判断でオーナー(貸主)の提案に渋々応じるか、やむを得ず出て行くかの決断をしなければならないでしょう。


このように、定期借家契約を締結すると、その終了の際、オーナー(貸主)に再契約をするか否か、及びその条件について主導権を握られてしまうことになるのです。


3  定期借家契約か否かの見極めについて

このように定期借家契約は、借主にとって決して有利な契約ではありません。ですから、これから借主になろうとする方は、自分が結ぼうとしている借家契約が普通借家契約か定期借家契約なのかを見極める必要があります。その手掛かりとしては以下が挙げられます。


(1)  公正証書等の書面によって締結されること
定期借家契約は、公正証書等の書面(公正証書に限定されません。)によって締結されなければなりません(借地借家法 38 条 2 項)。ですから、口頭で結ばれる借家契約は、定期借家契約ではありません。ただ、普通借家契約でも書面でなされるのが通常でしょうから、あまり挙げて意味のある手掛かりとはいえません。


(2)  契約前にこれから交わす契約が定期借家契約である旨の説明が書面でなされること  定期借家契約を交わすには、賃貸人(オーナー)は、あらかじめ借家人に対し、この賃貸借契約には更新がなく、期間の満了により終了することについてその旨を記載した書面を交付して説明しなければなりません(借地借家法 38 条 2 項)。ですから、この書面による説明がなされれば定期借家契約であることが分かりますし、逆にこれがなされなければ定期借家契約にはなりません。  なお、この説明の際、仲介業者等から「大丈夫です。貸主さんは再契約を考えてくれていますから。」などと、期間満了しても出て行く心配などしなくてもよいかのような説明を受けることがあります。しかし、定期借家契約を有効に交わした以上、そのような説明があったことを理由に退去を拒むことは難しいと考えてください。


(3) 契約書に契約の更新がない旨の特約が定められていること
定期借家契約は、契約に「契約の更新がないこととする旨を定める」契約です(借地借家法 38 条 1 項)。ですから、この特約がなければ、定期借家契約ではないことになります。


4  最後に

以上のとおり、定期借家契約について、借主には決して有利な契約ではないという観点から簡単に触れてきました。
しかし、定期借家契約では、定期であることを理由に賃料が相場より低く設定されることもありますから、定期借家契約=借家人に直ちに不利ということにはなりません。また、期間限定であってもその場所で営業できること自体が会社にとってメリットを生み出すこともあるかも知れません。
大切なのは、定期借家契約がもたらすリスクを理解しながら、それでも会社にとって何らかのメリットをもたらすのであれば契約し、そうでなければリスク回避をなすという経営判断であるといえます。


(2006年7月執筆)


弁護士 田中弘人(たなかひろと)

1994年 早稲田大学法学部卒業
1999年 司法試験合格
2001年 弁護士登録(横浜弁護士会)
        立川法律事務所所属
2006年 横浜港和法律事務所設立

同テーマの記事を見る 3つのコンテンツから検索ができます!

このページの先頭へ

このページの先頭へ