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会計参与の設置

テーマ:会計

2006年8月 3日

解説者

弁護士 土谷喜輝

本年5月1日より会社法が施行され、会計参与という新たな制度が設けられました。会計参与とは、経営者と共同名義で会社の決算書類を作成する専門家のことであり、公認会計士または税理士にこの資格が認められています。最近、会計参与を導入した中小企業に対し、融資条件を優遇する金融機関が出てきたり、日本公認会計士協会および日本税理士会連合会が会計参与の行動指針を発表するなどしており注目を集め始めています。


会計参与の職務

会計参与の職務の概要は、以下の通りです。
〈1〉 計算関係書類の取締役との共同作成(会社法374条1項、6項、以下法)
〈2〉 会計参与報告の作成(法374条1項)
〈3〉 計算関係書類を承認する取締役会への出席と意見の陳述(法376条1項)
〈4〉 取締役の職務の執行に関し不正の行為または法令・定款違反の重大な事実があることを発見したときの監査役等に対する報告義務(法375条)
〈5〉 株主総会における株主に対する特定事項の説明(法314条)
〈6〉 計算関係書類および会計参与報告の備置き(法378条1項)ならびに株主および債権者への開示(法378条2 項)
注意すべきは、会計参与は、会社の経営者とともに計算関係書類等を作成する内部機関であり、外部機関ではないという点です。


会計参与の責任

会計参与が計算書類の作成等の任務を怠り、これによって会社に損害を与えた場合には、その損害を賠償する責任を負わなければならないと定められており(法 423条1項)、株主代表訴訟の対象ともなります(法847条)。この責任は、過失責任であるため、会計参与に過失がなければ、会社に生じた損害についての責任を負いません。
また、会計参与制度は、専門家の作成した計算書類を第三者が信頼して取引等が行われることを前提としているので、会計参与の悪意または重過失により株主、投資家、債権者、取引先などの第三者に損害を生じさせた場合には、これに対する賠償責任を負います(法429条1項)。そして、会計参与は、計算書類およびその附属明細書、臨時計算書類ならびに会計参与報告に記載しまたは記録すべき重要な事項について虚偽の記載または記録をしたときは、注意を怠らなかったことを証明しない限り、第三者に生じた損害を賠償する責任を負わなければなりません(法429条2項)。
その他、刑事上の責任や公認会計士または税理士としての行政法上の責任を負うこともあります。


会計参与設置のメリット

取締役会を設置して監査役を設置しない株式会社では、会計参与を設置することが義務づけられていますが、それ以外の全ての会社では、会計参与を任意で設置することができます。大会社では会計監査人の設置が義務づけられており、更に会計参与を設置することは余り無いと考えられますので、会計参与の設置を検討するのは、主に会計監査人を設置していない中小企業であると考えられます。では、顧問税理士に決算書類の作成などを依頼している中小企業が更に会計参与を設置することによるメリットはどのような点にあるのでしょうか。
会社法上、会計参与を設置することにより何らかの義務が免除されることなどは規定されておらず、法律上のメリットはないといえます。現実的なメリットとしては、会計参与の設置は登記事項ですので、計算書類を会計参与が作成しているということを対外的に公表して、信頼を増すことができるという点が大きいでしょう。冒頭で触れた金融機関による融資条件の優遇もその一つです。近年、金融機関は、融資に際し、人的担保、物的担保に頼りすぎているという批判を受けており、また競争激化とともに、融資先に格差を設ける傾向にあります。会計参与の設置により、金利等を優遇するのもその一環であり、会計参与が普及していけば、このような金融機関が今後も増えると考えられます。
また、計算書類関係の事項について、株主総会において会計参与に説明を行ってもらえますので、ベンチャー企業のように公開前から株主総会において、外部の者に説明が必要な機会がある会社には利用価値があると考えられます。


会計参与設置のデメリット

会計参与を設置すれば、当然、会計参与に対する報酬が必要となります。特に、会計参与は、前述のように大きな責任を負いますので、低い報酬額では引き受け手がいないと考えられます。顧問税理士と掛け持ちをしてもらうかどうかにもよりますが、顧問税理士として帳簿や申告書類の作成だけを依頼している場合と比べれば、会社の負担が増加するのは間違いありません。


まとめ

冒頭で触れた通り、会計士協会や税理士会は、その行動指針を公表するなどして、利用促進を図ろうとしています。また、金融機関が融資条件を優遇するなどの動きも増えてくるでしょう。しかし、会計参与という制度は、他の国にはない日本特有の制度であり、今回の会社法改正の趣旨からの必要性も明確ではありません。ベンチャー企業は、将来的には公開を目指している以上、遅くとも公開の1、2年前から会計監査人を設置するはずであり、会計参与が必要な期間は長くはありません。その期間に融資が必要であり、その条件がコスト増加分以上に有利なものとなるのかなどを見極めて設置の必要性を判断すべきでしょう。


(参考サイト)
日本税理士会連合会 「会計参与の行動指針」の公表について


(2006年5月執筆)


土谷喜輝
   ニューヨーク州法曹資格
   
主要著書
 『個人情報保護法Q&A』
  <部分執筆> (中央経済社 2001)
 『インターネットをめぐる米国判例・法律100選<改訂版>』
  <共著>(ジェトロ 2001)
 『ビジネスマンのためのインターネット法律事典』
  <部分執筆> (日経BP社 2001)
 『米国弁護士によるビジネスモデル特許事例詳説』(ジェトロ 2000)   等

このコンテンツは「法律情報メールマガジンLIMM」より提供されております
e-hoki.com LIMMにおける掲載時点(2006年6月2日掲載分)での執筆物であるため、その後の法改正等により、情報が古くなっている場合も、あり得ます。

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