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「時効の管理」

テーマ:契約・取引

2006年8月31日

解説者

弁護士 石井尚子

企業の経営にとって、「取引先が代金を払ってくれない。」「貸したお金を返してくれない。」などのトラブルはつきものです。
このような相談が弁護士事務所にもちこまれることも少なくありません。債権の回収は本当に頭の痛い問題です。そのような相談の際、意外に意識されてないなと感じるのが消滅時効の問題です。


1 債権は、永遠に存在するものではありません。一定の期間権利行使しないで放置していると消滅時効の問題が発生します。
会社が行った取引によって生じた債権は原則として 5 年が消滅時効の期間となりますが、債権の種類によってはもっと早い消滅時効期間が定められているものもあります。
例えば、会社間の売掛金債権の時効期間は2年ですし、ホテル・旅館などの宿泊代金やレストラン・喫茶店・バーなどの飲食代金にいたっては、消滅時効期間はわずか1年と定められています。
債権が時効で消滅するには債務者が時効援用の意思表示をすることが必要になりますから、消滅時効期間経過後であっても、債務者が一部でも支払ったり、支払期を延ばしてほしいと言う等債務の存在を承認する行為を行えば債権の請求ができることになります。
もっとも、時効期間が経過するまで支払を遅らせるような債務者が、時効を援用しさえすれば支払わなくてもよくなる債務をあえて支払ってくれるとは通常考えられません。債務者から時効を援用すると言われれば、債権者としては採るべき手段がなくなってしまいます。


2 では、債権が時効により消滅するのを防ぐためにはどうすればよいのでしょうか。
債務者が債務の存在を承認した場合には、消滅時効の進行は中断します。後日、争いとなるのを防ぐために、債務者から文書をもらっておくとよいでしょう。もっとも、債務者が承認をするかどうかは債務者に委ねられておりますので、承認による時効中断は債権者にとっては確実な方法といえません。
債務者の意思とは無関係に消滅時効の進行を中断するには、裁判所を通じた手続きを行う必要があります。裁判所に、貸金や売買代金の取立訴訟や支払督促の申立を行ったり、取立訴訟を提起する前提として仮差押、仮処分をする等、裁判所を通じた債権回収の手続きを採れば消滅時効の進行は中断します。
裁判手続きのためにはある程度書類や資料を揃える必要があり、準備に多少時間がかかる場合があります。そのような時には、支払の請求をすることによって一時的に消滅時効期間を6ヶ月間延長することができます。消滅時効期間延長のための請求は書面でなくてもよいのですが、請求をしたかどうかを後日争われた場合、口頭の請求だけでは、言った、言わないという水掛け論になってしまい立証が難しくなってしまいます。確実な証拠を残すために、内容証明郵便を利用することをお勧めします。
ここで注意してほしいのは、請求による消滅時効の延長は1度だけしか使えないということです。請求書を出し続けていても消滅時効は進行してしまうのです。6ヶ月の間に裁判など時効中断の手続きを採らなければ消滅時効が成立してしまいます。


3 債務者にとってみれば、消滅時効は時効期間経過後に「援用する。」と言えば債務の支払いを免れられる便利な制度ですから、債権者としては債権が時効により消滅しないように時効期間に気を配ることが債権を回収するためには不可欠です。時効中断には裁判所の手続きを採る必要がありますので、回収できない債権がある場合は早めに弁護士にも相談していただければと思います。


(2006年7月執筆)


弁護士  石井尚子(いしい なおこ)

  昭和53年1月 東京都生まれ
  平成13年3月 東京大学法学部卒業
  平成14年10月 司法試験合格
  平成15年4月 司法研修所入所(57期)
  平成16年10月 弁護士登録(第二東京弁護士会)
  現在、栄枝総合法律事務所勤務

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