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法律コラム


[人事・労務|2014年3月28日]
弁護士 石井邦尚

従業員に対する損害賠償請求

【民法の原則とその制限】

 従業員が労働契約上の義務に違反して会社に損害をあたえた場合は、契約違反=債務不履行として損害賠償責任を負うことになります(民法415条、416条)。民法上の不法行為として損害賠償責任を負うこともあり得ます(同法709条)。

 また、従業員が不法行為により第三者に対して損害を与えた場合、使用者である会社が使用者責任(同法715条1項)により第三者に対して損害賠償義務を負うことがあります。会社が第三者に対しこの損害賠償義務を履行したときには、支払った金額を、従業員に対して求償することができます(同条3項)。

 以上が民法上の原則となりますが、これをそのまま適用すると、資力に乏しい従業員にとって、過酷な結果をもたらしかねません。そもそも従業員のミスは、業務遂行に必然的に伴う内在的なものであり、会社は従業員の労働によって利益を得る一方で、ミスに伴うリスクは全て従業員が負うというのも酷です。

 そこで、これまでの裁判例により、信義則(民法1条2項)に基づき、会社の従業員に対する損害賠償責任を制限する法理が発展されてきています。

【従業員の損害賠償責任制限の法理の内容】

 具体的には、会社は、上記の債務不履行に基づく損害賠償請求、不法行為に基づく損害賠償請求、使用者責任における求償権について、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度においてのみ、従業員に対して損害賠償等の請求をできるとされています。

 責任制限の基準としては、(1)従業員の帰責性(故意・過失の有無・程度)、(2)従業員の地位、職務内容、労働条件、(3)損害発生に対する会社の寄与度(指示内容の適否、保険加入による事故予防・リスク分散の有無等)などが考慮されます。

 従業員に重大な過失までは認められないケースでは、他の事情も考慮して会社からの損害賠償等の請求を認めないこともあります。重大な過失が認められるケースでも、事情を考慮して、従業員の責任を4分の1や2分の1、場合によってはそれ以下に制限することもあります。

 もっとも、例えば背任など、故意による悪質な不正行為などでは、こうした責任制限はなされず、不正を調査、追及するための調査費用、従業員日当、弁護士費用等についての損害賠償も認められることがあります。

【損害賠償の予定の禁止】

 企業間の取り引きなどの契約では、債務不履行等の場合の損害賠償について、あらかじめ契約で違約金等を定めておくことがあります。しかし、労働契約については、こうした契約は労働基準法により禁止されています(労働基準法16条「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償を予定する契約をしてはならない。」)。

【身元保証契約と損害賠償責任】

 労働契約締結にあたり、従業員の行為により会社が損害を被った場合に、身元保証人がこれを賠償する旨の身元保証契約を締結することがよくあります。こうした身元保証契約は、「身元保証ニ関スル法律」(身元保証法)により、以下のような制限が加えられているので、注意が必要です。

 身元保証契約は、期間の定めがない場合は存続期間は3年(商工業の見習者は5年)(同法1条)、定めがあっても最長5年とされています(同法2条)。裁判例では、自動更新の規定は無効とされており、更新の際にはあらためて更新契約を締結する必要があります。

 従業員に業務上不適任等の事由があって、身元保証人の責任が生じるおそれがあることを会社が知ったとき、従業員の業務内容の変更等により身元保証人の責任が加重されるときなど、法律で定める事由が生じた場合は、会社は身元保証人にその旨を通知する義務があります(同法3条)。そして、身元保証人がこうした事実を知ったときには、将来に向けて契約を解除することができます(同法4条)。

 また、身元保証人の責任の有無及び金額の算定にあたっては、裁判所は、従業員の監督に関する会社の過失の有無、身元保証人が身元保証をするに至った事情など、一切の事情を考慮しなければならないとされています(同法5条)。

 なお、身元保証法に反して身元保証人に不利益な特約を結んでも無効とされています(同法6条)。

氏名:石井邦尚

生年:1972年生

弁護士登録年・弁護士会:
1999年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1997年東京大学法学部卒業、2003年コロンビア大学ロースクールLL.M.コース修了

得意分野等:
専門は企業法務。30年ほど前に小5ではじめてコンピュータを知ったときの驚きと興奮が忘れられずに、今でもITを愛好していることの影響から、企業法務の中でも、特にIT関連の法務を専門としている。著書に「ビジネスマンと法律実務家のためのIT法入門」(民事法研究会)など。

所属事務所:
カクイ法律事務所 http://www.kakuilaw.jp

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