本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

トップページ  >  経営をよくする  >  法律コラム

特集一覧 中小企業に役立つ記事や施策をトピックスごとにまとめています。

従業員の秘密保持義務

テーマ:採用・雇用

2014年3月28日

解説者

弁護士 石井邦尚

 少し前に、大手電機メーカーの元従業員(技術者)が、同社の製品に関する研究データを海外の企業に不正に提供していたとして、不正競争防止法違反(営業秘密侵害)容疑で逮捕される事件がありました。企業秘密や営業秘密に接する従業員が、こうした秘密の保持について、どのような義務を負うか、会社としてどのように対応すべきか、解説します。


【不正競争防止法による「営業秘密」の保護】

 不正競争防止法は、「営業秘密」(同法2条6項)を保有する事業者から営業秘密を示された場合に、不正の利益を得る目的又はその事業者に損害を加える目的で、その営業秘密を使用又は開示する行為を、「不正競争」として規制しています(同法2条1項7号)。会社から営業秘密を示された従業員も、この規制を受けることになります。


 従業員がこのような不正競争を行った場合(退職後に行った場合も含めて。)、会社は、(元)従業員に対し、差止め(同法3条)、損害賠償(同法4条)、信用回復措置(同法14条)の請求を行うことができます。


 さらに、同法21条1項に定める要件を満たす場合には、(元)従業員に対して、営業秘密侵害罪として、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はこれらの併科という刑事罰が科され得ます。


 ただし、このような保護を受ける「営業秘密」(同法2条6項)に該当するためには、(1) 秘密として管理されていること(秘密管理性)、(2)有用な営業上又は技術上の情報であること(有用性)、(3)公然と知られていないこと(非公知性)、という要件を満たす必要があります。特に(1)秘密管理性が問題となることが多く、企業としては、営業秘密としての保護を受けたい場合は、予め慎重な管理体制を築いておく必要があります。


【従業員の在職中の秘密保持義務】

 上記のとおり、不正競争防止法の「営業秘密」として保護されるためには、3つの要件を満たすという低くないハードルがあります。会社として守りたいと考えている情報がすべて「営業秘密」に該当するとは限りません。こうした、営業秘密に該当しない情報についても、(元)従業員が秘密保持義務を負う場合があります。


 まず、従業員は、在職中は、労働契約の付随的義務として、会社の営業上の秘密(企業秘密)を保持する義務を負います。この秘密保持義務については、就業規則の規定や秘密保持契約等の個別の合意がなくても発生すると解されています。


 過去の裁判例からすると、従業員がこのような秘密保持義務に違反した場合、会社は、就業規則に基づく懲戒処分、解雇、債務不履行・不法行為に基づく損害賠償請求などを行える可能性があります。実際にどこまで認められるかは個別の事情によります。


【従業員の退職後の秘密保持義務】

 就業規則の規定や個別の合意がない場合に、退職後の従業員が秘密保持義務を負うか否かについては見解がわかれています。裁判となった場合、不法行為に基づく損害賠償などが認められる可能性もありますが、会社としては、就業規則や個別の合意によって備えておくことが望ましいと言えます。


 ただし、就業規則の規定や個別の合意によって秘密保持義務を定めたとしても、それが常に有効となるわけではなく、秘密保持義務を定める規定や合意が必要性や合理性といった観点から、公序良俗違反として無効とされる可能性があります。


 具体的には、秘密保持の対象を明確に定めることや、秘密の性質・範囲、価値、従業員の退職前の地位などに照らして合理的であることなどが必要となります。「大は小を兼ねる」といった発想で網羅的な定めをするだけでは無効となるリスクが高まりますので、注意が必要です。


氏名:石井邦尚

生年:1972年生

弁護士登録年・弁護士会:
1999年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1997年東京大学法学部卒業、2003年コロンビア大学ロースクールLL.M.コース修了

得意分野等:
専門は企業法務。30年ほど前に小5ではじめてコンピュータを知ったときの驚きと興奮が忘れられずに、今でもITを愛好していることの影響から、企業法務の中でも、特にIT関連の法務を専門としている。著書に「ビジネスマンと法律実務家のためのIT法入門」(民事法研究会)など。

所属事務所:
カクイ法律事務所 http://www.kakuilaw.jp

同テーマの記事を見る 3つのコンテンツから検索ができます!

このページの先頭へ

このページの先頭へ