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『欠陥製品で会社を潰さないためには?』

テーマ:企業統制・リスク管理

2006年9月14日

解説者

弁護士 小川義龍

1.事故が会社を潰す?!

最近、ソニー社史を読んだ。それによると創業当時のソニーの目玉商品は電気座布団で、座布団の中に電熱線を組込んだだけの危なっかしい製品だったそうだ。これが売れに売れて大喜びしたが、一方で、寒い夜にはどこかで発火して火事になっていないかドキドキしたんだそうだ。
今はこんなドキドキが笑い話にもならない時代である。
ガス湯沸かし器の欠陥が、エレベーターの欠陥が、シュレッダーの事故が、プールの欠陥が、マンション建築の欠陥が、次々と社会問題になっている。つい数年前には、有名自動車メーカーのタイヤ欠落事故が会社の屋台骨を揺るがした。エンドユーザーが被る事故のたった一つが会社の存亡に関わる時代になった(ちなみにシュレッダー事故は親の管理責任もありそうな気がする。シュレッダーは包丁や花火と同様に、その安全構造云々以前に用法上危険な製品であることは普通判るからだ)。
火事になるかもしれない電気座布団をドキドキしながら売るのは論外としても、可能性として事故が予見できるような製品であれば考えもしなかった事故一発で大企業が潰れるかもしれない時代になっているのだ。
これが古い意識のままだと、菓子折りを持参して頭を下げれば済むと考えがちなケースもあろうが、それは時代が許さなくなっている。もともと事故に関して適当に穏便に処理することがあった古い意識自体が誤っていたのであり、製品を世に出すということは会社の一命を賭して取り組むべき問題であったのだ。このことがようやく気付かれる時代になってきたといえよう。正しい状況だと思う。


2.古い意識の改革

製品の欠陥問題だけではない。
例えば、社内での分煙・禁煙、セクハラ、危険防止、全てが本来は会社が十分意識して取り組むべき問題であった。これが最近ようやくクローズアップされるようになってきた。そして分煙やセクハラに配慮しない会社は、それが社会問題になるようになった。正しい状況といえよう。
つい10年くらい前までは、会議室の卓上には灰皿が置いてあった。分煙という意識がなかったのである。今はそのような風景は全く見かけない。
会社のデスクで仕事をするのは当たり前であるが、そのデスクの周囲にタバコの煙がモウモウと立ちこめていたら不快だし健康を害する。だからといって勝手にデスクを離れて仕事もできない。結局、タバコの煙を我慢しながらデスクで仕事をすることになる。これがつい10年ほど前の実態だ。しかし、社員がこの我慢をすることはおかしい。このことに遅ればせながら気付いたのが分煙だ。
法的に言えば、社員は労働契約上会社の指揮命令に従う義務がありデスクを勝手にはなれて仕事ができない。かような拘束を受けている以上、会社は社員に対してその拘束が労働契約の実現以上に社員に無理を強いるものであってはならず、むしろ社員の健康や安全に積極的に配慮する義務がある。かように社員は労働を提供し、会社は安全や快適な労働環境を提供する、というイーブンな関係こそが労働契約の当然の内容だということになる。契約書に書いてあるかどうか以前に、書いてあろうとなかろうと労働契約に付随する当然のことだというのが昨今の法的通説である。
かつては社員が蛸部屋的労働を強いられるのは当たり前と言うモーレツ意識があったかもしれないが、それは会社が社員に対して果たすべき義務を軽視した考え方だ。
セクハラにしても、当事者同士の問題で済まされないのは同様の理屈だ。上司の指揮命令に従うのは部下の義務であるが、これに乗じて性的嫌がらせも甘受すべき義務はない。同僚同士の性的嫌がらせであってもこれを会社が見て見ぬふりをしていれば、快適な労働環境を提供しているとはいえないだろう。
今指摘されている諸問題は、漫然と古い意識を持ち続けていると、「なにもそこまで言わなくても」と思いがちだが、実は、古い意識自体が非常識であったことが多いということを、心を新たにして考え直してみたいところだ。


3.問題は起こった後のフォローが肝心

このように過去には問題となりにくかった事柄が、今は問題になりうる。古い意識を持っていると、問題の未然防止を放置してしまいがちだが、怖いのはそこではない。問題が生じた後に「この程度なら・・・」という意識が生じてしまうことが一番怖い。
およそ企業である以上は、将来のトラブルを全て防止することは残念ながら不可能である。気持ちを新たにして熟考したトラブル防止策を実施しても、問題が生ずる場面は必ずありうる。問題はどんな予防措置を打っていても必ず発生するものだという意識は不可欠だ。
そしてこの時に、くれぐれも古い意識で問題の糊塗や責任回避を考えないことだ。「昔だったら・・・」「他は皆やっている・・・」「知らなかったから・・・」という発想は禁句だ。
社会問題としてクローズアップされている会社の責任者の当初発言を思い返して頂きたい。多かれ少なかれ古い意識に根付いた発言だったという共通項が思い出されないか。会社存亡の決め手は、問題が起こった後の責任者の対応にこそある。起こって欲しくはないが、最悪の事態が起こったことを具体的に想定して、その時どのような行動をし、どのような発言をするか。ここに会社の将来がかかっている。今は、そういう正しい時代だ。


(2006年8月執筆)


小川義龍
昭和39年生  東京都出身
東京都千代田区立番町小、同区立麹町中卒
早稲田大学高等学院卒(昭和58年)
早稲田大学法学部卒(昭和62年)
司法試験合格(平成3年)
最高裁判所 司法研修所 46期修了
弁護士登録(東京弁護士会所属)

東京弁護士会
常議員(平成7年度)
広報室 嘱託(平成13年度〜)
広報委員会 副委員長(平成9、10年度)
広告調査委員会 副委員長(平成13年度)
インターネット協議会 副議長(平成9年度)
業務改革委員会 コンピュータ部会長(平成12年度〜)
司法修習委員会、財務委員会、刑事弁護委員会 各委員
法友全期会副代表幹事(平成14年度)
春秋会(法友8部)事務局長(平成15年度)

 東京商工会議所 法律相談員(平成9年度・荒川支部)
 東京弁護士会 クレサラ・商工ローン闇金相談担当(四谷・神田センター)
 財団法人クレジットカウンセリング協会 カウンセラー(平成11年度〜)
 財団法人法律扶助協会新宿支部審査員(平成12年度〜)
 日本弁護士連合会 法務研究財団事務局(情報部会担当)
 早稲田経営学院(Wセミナー)専任講師(刑事訴訟法)
 日本刑事政策研究会(法務省)正会員
 東京弁護士会インターネット法律研究部部会員

著書・講演等
 「法律事務所のためのパソコン導入大作戦」(株式会社トール刊)
 「弁護士のための広告のススメ」(株式会社トール刊)
 「弁護士のためのパソコン導入ガイド」(東京弁護士会法友会刊)
 「パソコン事件簿」(月刊DOS/V Special連載・毎日コミュニケーションズ)
 「最新現代法務全集」第4巻・債権回収(全日法規研究室)
 「困ったときにすぐわかる 内容証明の書き方・出し方」(OS出版)
 「困ったときにすぐわかる インターネットの法律(仮題)」(近刊予定)
 「中小企業のための倒産回避マニュアル(仮題)」(近刊予定)

 「破産と会社更生手続の概要」
   ※厚生労働省 労働研修所での講義(平成14年度より)
 「法律の基礎」 「コンプライアンス」 「借地借家法」 「インターネット法務」
   ※いずれも大手上場企業での定期公演
 「若者の破産」 「非弁提携弁護士被害」その他
   ※フジTV「スーパーニュース」出演

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