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株主総会手続き等の省力化

テーマ:役員・株主

2014年3月27日

解説者

弁護士 石井邦尚

 株主総会を開催せず、登記等で必要なときには議事録だけ作成して済ませているという株式会社(以下、単に「会社」と記載します。)を見かけることがありますが、これは後々大きなトラブルを引き起こすリスクがあります。


 とはいえ、株主が少数しかいない小さな会社で、反対するような株主もいないのに、いつも取締役会で株主総会の決議をし、招集通知を出して、株主総会を開催して...ということが煩雑に思えるという心情も理解できます。そのような場合、会社法では、株主総会開催のための手続きを一部省略したり、株主総会決議等を省略したりすることが認められています。


 なお、以下の手続きは、いずれも不特定株主が多数いる上場会社では非現実的なものですので、株主数がそれほど多くない非上場会社を念頭に解説します。


【招集手続きの省略】

 株主総会を招集するには、株主総会の日の2週間前(公開会社)又は1週間前(公開会社でない会社。例外あり)までに、株主に対して株主総会の招集通知を発しなければなりません(会社法299条1項)。また、取締役会を設置している会社の場合、招集通知は書面で行う必要があります(同条2項)。


 しかし、株主全員の同意がある場合は、上記の期間を短縮すること、あるいは招集通知書面等の提供を行わずに株主総会を開催することができます(同法300条。なお、招集手続で書面投票や電子投票による議決行使を定めた場合には、こうした省略はできません<同条但書>)。後々のトラブルのリスク等を考えると、同意は書面でもらっておくことが望ましいです。


【株主全員出席の株主総会】

 また、そもそも招集がなくても、株主全員が開催に同意して出席すれば、株主総会は適法に成立します。事前に株主総会を開くことを決めていなくても、たまたま株主全員が揃っていれば、その場ですぐに株主総会を開催することができます。


 ただし、株主全員がその場に揃って話し合いや会議などを行ったからといって、それが株主総会になるわけではありません。株主全員が揃っているだけでなく、株主総会を開催することに同意し、株主総会として会議をし、決議することが必要なことに注意してください。


 なお、上記の株主全員の同意による招集手続きの省略の場合は、招集手続省略に全株主の同意があれば、株主全員が出席しなくても株主総会を開催できるというのが、株主全員出席の株主総会と違うところです。


【決議の省略(書面決議)】

 株主総会の決議事項について、議決権を行使できる株主の全員が書面または電磁的記録により提案内容に同意をした場合、株主総会を開催せず(=株主総会の決議を省略して)、提案を可決とする株主総会決議があったものとすることができます(会社法319条1項。「書面決議」と呼ばれています)。提案は、株主又は取締役が行います。


 株主の同意の書面(電磁的記録)は、株主総会決議があったとみなされた日から10年間、本店に備え置くこと(同条2項)等が必要です。


 また、書面決議の場合、会社法施行規則72条4項1号に定められた事項を記載した議事録を作成する必要があります。単に同意書を得るだけではダメですので、注意してください。


【報告の省略】

 取締役が株主の全員に対して株主総会に報告すべき事項を通知した場合で、当該事項を株主総会で報告することを要しないことにつき株主の全員が書面又は電磁的記録により同意したときは、当該事項の株主総会への報告があったものとすることができます(会社法320条)。


 株式会社では、毎事業年度終了後に定時株主総会を招集し(同法298条1項)、そこで事業報告の内容を報告することが必要とされていますが、この報告も同法320条に基づいて省略することができます。したがって、上記の同法319条1項による書面決議とあわせれば、定時株主総会の開催も省略することが可能になります。


 なお、同法320条による株主総会への報告の省略についても、会社法施行規則72条4項2号に定められた事項を記載した議事録を作成する必要があります。


【最後に〜株主総会を開催しないことのリスク】

 株主総会を開催していない会社に聞くと、「そもそも反対する株主なんていない」「代表取締役が株式の80%を保有しているのだから、株主総会で決議をしても結論はわかっている」「今まで一度も開催していないけど何の問題もない」などといった答えがよく返ってきます。


 しかし、多くの場合、株主総会を開催していないことが問題となるのは、その時(例えば、登記のために議事録だけ作成したとき)ではなく、後々、株主間や取締役間などで何らかのトラブルが発生したときです。それまでは何も言っていなかった株主などが、株主総会が不存在である、したがって、取締役として登記されている者は実際には取締役ではない、退職金決議などしていない、などと主張して争われるのです。こうした争いは泥沼化しやすく、また会社にとって非常に深刻な(時には致命的な)事態を招く可能性があります。


 一方、上記の手続きを用いれば、株主総会開催に伴う煩雑さを相当程度解消することができます。議事録作成だけで済ませるよりは手間がかかりますが、後々のリスクを考えれば、絶対にその一手間をかけるべきです。


氏名:石井邦尚

生年:1972年生

弁護士登録年・弁護士会:
1999年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1997年東京大学法学部卒業、2003年コロンビア大学ロースクールLL.M.コース修了

得意分野等:
専門は企業法務。30年ほど前に小5ではじめてコンピュータを知ったときの驚きと興奮が忘れられずに、今でもITを愛好していることの影響から、企業法務の中でも、特にIT関連の法務を専門としている。著書に「ビジネスマンと法律実務家のためのIT法入門」(民事法研究会)など。

所属事務所:
カクイ法律事務所 http://www.kakuilaw.jp

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