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インターネット取引に関する裁判例

テーマ:自社HP・eコマース

2013年1月24日

解説者

弁護士 高橋弘泰

 インターネットのクーポン共同購入サイトで格安クーポン券を販売した店が、「説明を受けた以上のクーポン利用客が殺到して赤字になった」として、サイトの運営会社に約1700万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が、2012年の9月3日、大阪地裁で下されました。


 インターネット販売を巡る裁判は今後も増えていくと思われますので、今回はこの裁判例についてポイントを説明します。


【事案の概要】

 原告は大阪府の美容室経営会社(A社)で、被告は共同購入サイトを運営する会社(B社)です。


 A社は、B社が運営するインターネットサイトを通じ、新店舗の宣伝のため、カットや髪染めなど1万3200円分のサービスが2900円になるクーポンをサイトで販売しました。当初は500枚の予定でしたが、B社側の提案で1500枚に増やし、半年の利用期限内に1460人が来店しました。


 A社は、B社と契約を締結する過程で、B社の従業員が虚偽の説明をし、又はB社が説明義務を怠ったため損害を被ったとして、B社に対し損害賠償を求めました。


【主な争点】

1.詐欺行為の有無

 A社は、B社の契約担当者が、(1)A社は、クーポンが販売された月の翌月末日に、クーポンの販売価格に販売枚数を乗じた額の半分を一括して受け取ることができる、(2)クーポン購入者の約20パーセントは、クーポン有効期間中にクーポンを利用しないので、利用されない分はすべてパートナーの利益になる、(3)クーポンを販売しても、来店者数は通常の1.5倍から2倍程度にしか増えない、などと説明したと主張しました。


 その後、B社の提案によりクーポンの枚数を1500枚に増やしたが、実際には、(ア)B社からパートナーに支払われるのは、クーポンの販売枚数ではなく利用枚数に応じた金額であり、(イ)クーポンの利用者数も、平成22年11月25日の開店日に24人、同月26日に27人と、どんなに多くても通常の3倍の15人にはならないというA社の想定を大きく超え、開店してから同年12月31日までの間に588人、6か月の有効期間全部では1460人にも上ったことから、B社は実際とは異なる虚偽の説明を行って契約を締結させたもので、上記説明は詐欺行為に当たると主張しました。


 これに対しB社は、A社主張の説明はしていないし、仮に開店から1か月余りの期間に予約の電話が殺到し、クーポンの利用者の数がA社の当初の想定を超えるものであったとしても、A社は、予約を受け付ける段階で、サービスを提供する日時を適宜調整することにより、クーポン利用者に対するサービスの提供を分散することができたはずであり、想定外の事態になったとしても、B社に一切の責任はないと主張しました。


2.説明義務違反の有無

 B社は共同購入サイトを運営する会社の最大手であり、他方A社は、法人とはいえ、事実上、代表取締役が個人で経営する美容院にすぎないから、B社はA社に対し、蓄積したノウハウ及び専門知識を活かして、B社のシステムの内容はもちろんのこと、サービス開始時点での店の混雑状況、サービスを開始した際の店側の混雑時の余力、クーポンの有効期間中に継続してサービスを提供するための資金量、クーポンの上限販売数の増加によって想定される状況等を信義則上説明する義務を負っていたがこれを怠ったと主張しました。


【裁判所の判断】

1.詐欺行為の有無について

 裁判所は、A社の代表者(契約締結した当事者)の証言の信用性について検討し、A社が上記(1)の説明(A社は、クーポンが販売された月の翌月末日に、クーポンの販売価格に販売枚数を乗じた額の半分を一括して受け取ることができる)を受けたとは認められないとしました。


 上記(2)の説明を受けたという点については、(2)の説明をしていたとしても、1460人というクーポン利用者の総数がA社の想定を明らかに超えるものとはいえないし、開店してから平成22年12月31日までの利用者数が588人に上ったという点も、B社が指摘するとおり、クーポンを利用するためには事前予約が必要であり、A社は予約を受け付ける段階でサービスを提供する日時を適宜調整することにより、クーポン利用者に対するサービスの提供を分散することが可能であったことに鑑みると、上記(2)の説明が虚偽であるとして詐欺行為に当たるということはできないとしました。


2.説明義務違反について

 裁判所は、1.の詐欺行為についての判断と同じ理由から、B社について、A社主張の説明義務違反があったということはできないとしました。


【まとめ】

 裁判所は、B社の従業員がA社の主張するような説明をしたと認めることはできないし、「クーポンを販売しても通常の2倍から3倍ぐらいしか客は増えない。」との説明があったとしても、その内容はA社自身の想定を明らかに超えるものとはいえず、B社について説明義務違反があったということはできないとし、請求を棄却しました。


 この裁判例は、インターネット取引そのもののトラブルというよりは、インターネット運営会社のサービス利用者(店舗)に対する説明義務についてのひとつの判断を示すものといえます。簡便で迅速なネット販売を使うことで、格安クーポン券が思った以上の顧客に対する誘引力を持つことは、店舗の側でも事前に十分理解し注意しておく必要があるということでしょう。



氏名:高橋弘泰

生年:1970年生

弁護士登録年・弁護士会:
2009年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1994年東京大学法学部卒業

得意分野等:
東京都に勤務の後、大宮法科大学院に入学し、法曹を目指す。行政事件、刑事事件など公益的な活動に力を入れる一方、民事分野でも敷居が低く利用しやすいと同時に、内容的には決して妥協しない良質な法的サービスの提供に努めていきたいと思います。

所属事務所:
法律事務所フロンティア・ロー http://frontier-omiya.jp/index.html

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