本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

トップページ  >  経営をよくする  >  法律コラム

特集一覧 中小企業に役立つ記事や施策をトピックスごとにまとめています。

会社分割と詐害行為

テーマ:企業の機関・形態

2012年8月30日

解説者

弁護士 高橋弘泰

【会社分割とは】

 会社分割とは、一つの会社を二つの会社に分けることをいいます。会社分割には、(1)多角経営化した企業の一部門を分離・専業化し経営の効率化を図る、(2)不採算部門や新製品開発部門を独立させて企業努力を促進する、(3)別々の会社がそれぞれ所有する部門を出し合って合併企業を作る、などの目的があります。


 会社分割には、分割により新たな会社を設立する「新設分割」と、分割により一方の会社の権利義務の一部を他の既存の会社に承継させる「吸収分割」があります。


 会社分割は、不採算部門を独立させて企業努力を促進させるために行われることがあり、この制度を使って実質的に債務を免れようとする場合も見られます。これが会社債権者を害する行為として取消しの対象となることがあるのでしょうか。


 近時、会社の債務を逃れるために新設分割を行う、濫用的な会社分割が多く見られるとして問題になっています。この点に関する裁判例も増加しています。
 最近の裁判例がありますので、以下に紹介します。


【事案の概要と判決】

 この事案は、分割前の会社(N社)に貸金債権を有する債権者(原告)が、N社の行った新設分割による会社分割が詐害行為にあたるとして、新設会社を被告として、民法上の詐害行為取消権(民法424条1項)に基づき、会社分割の取消しを求めるとともに、価格賠償として債権相当の金銭の支払を求めたというものです。


 詐害行為取消権とは、債権者が、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができるという権利です。これが認められるためには、(1)債務者が債権者を害する法律行為をしたこと、(2)債務者・受益者が詐害の事実を知っていることが必要です。


 第1審判決(名古屋地方裁判所平成23年7月22日判決)では、会社分割により、債務超過であって無資力であったN社の資産が新設会社へ承継されるため、会社の一般財産が会社分割によって毀損されたといえると認定し、また、本件会社分割においては、詐害行為時である本件会社分割時に受益者である被告(新設会社)が設立されることになるが、その代表取締役は同じ人物が務めるのだから、分割会社であるN社に詐害の意思があるとすれば、新設会社にも詐害の意思が認められるなどとして、原告による詐害行為取消権行使を認め、原告の請求を一部認容しました。


 控訴審(名古屋高等裁判所平成24年2月7日判決)においても、(1)本件会社分割は、分割前の会社の一般財産の共同担保としての価値を実質的に毀損し、債権者であるYが債権についての弁済を受けることをより困難とするものであり、詐害性があると認められる、(2)詐害行為取消権の行使により債務者の法律行為を取り消して逸出した財産の返還を請求できる範囲は、当該債権者の債権額が基準となるものである、などと判断し、控訴を棄却しました。


 会社分割は、会社法上の組織行為であるとして、詐害行為の対象とならないとする見解もあるようですが、裁判では本判決のように肯定する例が多いです。


 新設会社に承継されない債務の債権者(分割会社の残存債権者)は、分割会社に対して債務の履行を求めることができるため、会社法上は、債権者保護の対象となっておらず(会社法810条1項2号)、新設分割の無効の訴えの原告適格を有していないと解されています。


 そこで上記の高裁判決は次のように述べています。
 「新設分割によって分割会社の残存債権者が害された場合、現行会社法の債権者保護手続や新設分割無効の訴えでは残存債権者の保護を図ることができないのであり、そのような問題状況を踏まえて、詐害的な会社分割によってその債権を害された残存債権者が、新設会社等に対し、当該債務の履行を直接請求できる旨の規律を新たに設けること等を内容とする会社法制の見直しの議論が進められていることは当裁判所に顕著である。これらの点を考慮すると、少なくとも現行制度の下では、詐害行為取消権の行使により債権を害される残存債権者の救済を図る必要性は高いというべきであり、新設分割が詐害行為取消権の成立要件を満たす場合に、現に詐害行為取消権が行使され、その結果として、新設会社の経営が困難となることがあったとしても、やむを得ないというべきである。」


 ここでも述べられているとおり、現在会社法制の見直しの議論が進められており、近い将来、濫用的な会社分割を防止するための法改正が行われる可能性が高いと思われます。


氏名:高橋弘泰

生年:1970年生

弁護士登録年・弁護士会:
2009年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1994年東京大学法学部卒業

得意分野等:
東京都に勤務の後、大宮法科大学院に入学し、法曹を目指す。行政事件、刑事事件など公益的な活動に力を入れる一方、民事分野でも敷居が低く利用しやすいと同時に、内容的には決して妥協しない良質な法的サービスの提供に努めていきたいと思います。

所属事務所:
法律事務所フロンティア・ロー http://frontier-omiya.jp/index.html

関連記事

同テーマの記事を見る 3つのコンテンツから検索ができます!

このページの先頭へ

このページの先頭へ