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法律コラム


2006年9月21日|弁護士 人見勝行

インターネット等の私的利用の禁止

従業員が勤務中に私用でインターネットを利用したり、私用の電子メールを送信したとしても、声が周囲に漏れる電話などとは異なり、外見上は、通常に勤務をしている場合と区別がつきません。しかしながら、勤務中に無制約でこのようなことが行われているのでは、会社の業務に支障を来たすことが明らかです。さらに、社内LANに接続したパソコンが私用で本来の目的外に用いられる場合には、会社の機密情報が漏洩したり、社内LANに接続している全てのパソコンがウィルスに感染する危険も生じてしまいます。
そのため、現実には、多くの企業で、就業規則により、勤務時間中にインターネットや電子メールを私用で利用することが禁止されているようです。確かに、就業規則に具体的な記載が存在しないとしても、一般的な職務専念義務を定めた条項との関係で、私的なインターネット等の利用は、相当の程度まで制限されることになりますが、就業規則違反を理由として懲戒処分を課すための根拠は明確であることが望ましいですし、また、許容する程度を定めることができるのですから、就業規則には、程度の差は別として、インターネット等の私的利用を禁止する旨の条項を設けるべきです。但し、一切の私的利用を禁止する条項を就業規則に設けたとしても、現実に私的利用を行った従業員に対して、直ちに懲戒処分を課すことができるわけではありません。例えば、私的利用の程度が軽微な場合に、従業員を懲戒解雇にすることは、解雇権の濫用となるでしょう。あくまで、就業規則違反に基づく懲戒処分は、違反の程度や行為の結果が企業に及ぼす影響に見合うものでなければならないのです。
また、就業規則を整備していたとしても、現実の運用において遵守が徹底されておらず、例えば、実際には誰も遵守していないような場合には、仮に、問題が生じたとしても、問題を起こした従業員を処分することは、一部の者だけを特に処分する不公平なものとして許されないおそれがあります。そのため、就業規則を整備するだけでなく、就業規則の遵守を徹底することが必要になります。
しかしながら、冒頭でも申し上げたとおり、パソコンを操作している外観からは、業務を遂行するものであるのか、私用で利用しているのか、明確に判別することは困難です。したがって、通常は、私的利用をしているか否かを調査するために、パソコンのアクセスログや送受信されたメールのデータを参照するほかはありません。
問題は、そのような調査が許されるか否かです。この点については、調査を受けた従業員がプライバシー侵害に基づいて損害賠償等を請求した事案について、企業は、「企業秩序に違反する行為があった場合には、その違反行為の内容、態様、程度等を明らかにして、乱された企業秩序の回復に必要な業務上の指示、命令を発し、又は違反者に対し制裁として懲戒処分を行うため、事実関係の調査をすることができる。」としながらも、「調査や命令も、それが企業の円滑な運営上必要かつ合理的なものであること、その方法態様が労働者の人格や自由に対する行きすぎた支配や拘束ではないことを要し、調査等の必要性を欠いたり、調査の態様等が社会的に許容しうる限界を超えていると認められる場合には、労働者の精神的自由を侵害した違法な行為として、不法行為を構成することがある。」と判示したものがあります(平成14年2月26日東京地方裁判所判決、労働判例825号50頁)。具体的には、パソコンが私物ではなく企業の貸与したものであり、また、調査をする対象もパソコン本体に保存されたデータではなく業務に必要な情報を保存する目的で企業が所有及び管理するサーバー上である場合には、調査の態様も相当であると認められやすくなるでしょう。
なお、裁判例をみる限りは、調査の対象となる従業員の同意を必要としておりませんが、調査が相当であると認められやすくするためにも、最低限、就業規則違反が疑われる場合に調査を行う場合のあることを周知徹底しておくことは、必要不可欠であるということができます。

このコンテンツは「法律情報メールマガジンLIMM」より提供されております
e-hoki.com LIMMにおける掲載時点(2006年7月25日掲載分)での執筆物であるため、その後の法改正等により、情報が古くなっている場合も、あり得ます

(2006年7月執筆)

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