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インターネット取引における説明義務

テーマ:自社HP・eコマース

2012年7月20日

解説者

弁護士 高橋弘泰

 金融商品取引行為については、事業者は、取引の相手方である顧客が取引のリスクを本当に理解して契約したのかを確認する必要があります。これを取引適合性の確認義務といいます。つまり、顧客がその商品のリスクを理解するだけの知識、経験があり、リスクを負うことのできる十分な財産を有しているか、といったことを勧誘の際に確認しておく必要があるということです。
 法律上は、金融商品取引法40条1項の「金融商品取引行為について、顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして不適当と認められる勧誘を行って投資者の保護に欠けることとなっており、又はかけることとなるおそれがあること」とされる場合は、適合性確認義務に違反することになります。


 また、金融商品に限らず、一定のリスクのある商品の販売においては、取引のリスクについて十分に説明がなされたかという説明義務の問題が生じます。
 特に、取引の相手方の顔が見えないインターネット取引では、いかなる方法で取引適合性を確認したのか、いかなる説明を行えば十分と言えるのかについて、しばしば争いとなります。


 そこで今回は、これらの点について、地裁と高裁で判断が分かれた最近の裁判例をもとに考えてみます。


【事案の概要】

 この事案は、証券会社である原告が、被告(取引相手である顧客)に対し、被告が株式信用取引により生じた信用取引決済損金を原告が立て替えたと主張し、その支払を求めたものです。


【裁判所の判断】

 1審の和歌山地方裁判所判決(平成23年2月9日)では、会社が適合性の確認義務を果たさず、説明義務にも違反したとして、請求が棄却されました。
 その理由としては、(1)インターネット取引において、顧客の申告内容から取引適合性を適切に判断するには、顧客の取引に対する知識、経験、財産などが正確に申告できるような申告フォームを備えていなければならないこと、(2)証券会社は、顧客の申告した内容をただ形式的に判断するのみならず、申告の意味内容や取引のリスクを本当に理解して申告したのか疑念を抱くべき者に対しては、電話、面接等により、リスクの理解の確認を行う義務を免れない、と述べられています。
 この判決では、顧客は72歳無職の高齢者であり、大きな資産もなく、投資資金が大切な老後の生活資金であったことから、そもそも取引適合性がなかったと認定されています。


 ところが、この判決を不服として会社が控訴し、大阪高等裁判所判決(平成23年9月8日)では、まったく反対の判断が下されました。すなわち、会社には適合性確認義務違反も説明義務違反もないとされたのです。
 その理由としては、(1)インターネットを利用した非対面取引は、対面取引に比べ安価な手数料や顧客の利便性を重視したビジネスモデルであること、(2)顧客としても担当者の勧誘、助言、指導等を介在させることなく、自らの責任と判断で取引を行うことを志向していると考えられること、(3)顧客に対するリスク説明としては、顧客が自由に閲覧することができるリスク書面を交付した上で、これを理解したかどうかを書面ないしウェブ上の入力で確認するという手法は一定の合理性を有していること、という点が指摘されています。
 なお、この控訴審判決では、顧客は72歳無職の高齢者ではあるが、株式の現物取引で資産を倍にしていたこと、信用取引はリスクが高い取引ではないこと、証券会社から勧誘を受けることなく、自ら信用取引を申込んだことから、取引適合性がないとはいえないと判断されています。


【まとめ】

 この二つの判決では、インターネット取引に対する着眼点に顕著な違いが見られます。すなわち、1審判決では、インターネット取引では顧客がどんな人物であるかを把握するために事業者の側で正確なフォームを用意する必要があり、その内容によっては電話、面接などにより理解の程度を確認しなければならないとして、簡易で利便性の高いインターネット取引の危険性に着目しています。
 これに対し、控訴審判決では、事業者の側で顧客がリスクを自分で判断できる措置を取っていれば、あとは顧客の自己責任に委ねるのが原則であるという、インターネット取引というビジネスモデルの利便性を重視するものであるといえます。


 どちらの考え方も採りえると思いますが、インターネット取引では直接の勧誘行為がないため、適合性の確認と説明義務のいずれについても、事業者の側で取引リスクに対する顧客の理解が得られるような配慮が必要であると思われます。



氏名:高橋弘泰

生年:1970年生

弁護士登録年・弁護士会:
2009年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1994年東京大学法学部卒業

得意分野等:
東京都に勤務の後、大宮法科大学院に入学し、法曹を目指す。行政事件、刑事事件など公益的な活動に力を入れる一方、民事分野でも敷居が低く利用しやすいと同時に、内容的には決して妥協しない良質な法的サービスの提供に努めていきたいと思います。

所属事務所:
法律事務所フロンティア・ロー http://frontier-omiya.jp/index.html

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