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インターネット取引の注意点:ドロップシッピングとクーリング・オフ

テーマ:自社HP・eコマース

2012年7月12日

解説者

弁護士 高橋弘泰

 以前のコラムで説明したように、ドロップシッピングは、一種のインターネットショッピング運営支援事業といえますが、これが特定商取引法上の「業務提供誘引販売取引」(法51条1項)に該当する場合には、不実告知やクーリング・オフなど、特商法の規制対象となります。


 今回は、実例として、ドロップシッピング事業者に対してクーリング・オフによる契約解除が認められた裁判例(大阪地方裁判所 平成23年3月23日判決)を紹介します。


【事案の概要】

 本件は、「A」という名称のインターネットショッピング運営支援事業を展開する事業者と、Aの利用契約を締結し、契約金等を支払った利用者(原告)らが、Aは特商法51条に定める業務提供誘引販売取引に当たり、契約を解除(クーリング・オフ)したとして、事業者(被告)に対し、既払代金の返還などを求めた事案です。


【業務提供誘引販売取引に該当するか】

 「業務提供誘引販売取引」とは、(1)「業務提供利益」を収受しうることをもって顧客を誘引し、(2)「特定負担」を伴う、(3)商品の販売・あっせん又は役務の提供・あっせんにかかる取引をいいます(特商法51条1項)。


 いわゆる内職・モニター商法がこの典型例と言われています。例えば、パソコンを購入すれば、パソコンを使った内職(ホームページ作成など)をあっせんすると勧誘され、数十万円のパソコンを購入したが、内職のあっせんはなく期待された収入が得られない、といったケースです。


 本件のようなドロップシッピングの場合、事業者が、ネットショップ用のウェブサイトの作成、ドメイン及びサーバーの設置、取扱商品の仕入れ及び発送の代行、ネットショップ運営におけるアドバイス等の各種サポートなどの役務を提供し、利用者がその対価を支払うということになります。


 問題は、事業者が「業務提供利益を収受し得ることをもって利用者を誘引した」といえるかです。


 すなわち、利用者の作業は、(a)商品と販売価格をネットショップに掲載、(b)購入者からの質問メールに対応、(c)購入者からの代金入金を確認し事業者へ入金完了の連絡、(d)月ごとに販売した分の仕入れ代金を被告に支払うことという作業に限られますが、これらの作業は、ネットショップの運営業務の一部であると考えられるため、運営主体が利用者であれば、自ら運営するネットショップ事業の一部に従事しているに過ぎず、事業者がこれらの業務を提供したということはできません。


 そこで、ネットショップの運営主体が利用者であるのか事業者であるのかが問題となります。


 確かに、購入者との関係では、利用者が購入者との間の商品の売買契約における売主となります。しかし、裁判所は、以下の理由から、利用者を経営主体とみることはできないとしました。


  • 利用者はネットショップのオーナーとされているが、事業者に依頼しないとウェブサイトを修正することができず、事業者の判断で修正要望に応じないこともあること
  • 取扱商品は、事業者が提供するリストから選択する他はなく、利用者が自ら仕入れた商品を販売することは事実上できず、リストから選択した商品についても、事業者の判断によって取扱が中止されることがあること
  • ネットショップの売上げに重要な影響を及ぼす宣伝、集客作業は、実際にはもっぱら事業者が行うこととされていたこと

 これらの事情から、利用者には、ネットショップの運営主体としての自主性、自律性はほとんど存在しないと判断され、事業者が「業務提供利益」である商品販売価格と仕入価格の差額を収受し得ることをもって利用者に対し契約の締結を誘引したものと認められました。


【「事業所等によらないで行う個人」に当たるか】

 クーリング・オフができるのは、業務提供誘引販売取引に関して提供され、又はあっせんされる業務を「事業所等によらないで行う個人」に限られます(特商法58条1項)。


 本件では、原告らはいずれも個人であり、(1)給与所得者、(2)コンビニエンスストア経営者、(3)会社の代表取締役(ネットショップの店長)が含まれていました。


 (1)については自宅のパソコンで「業務」を行っていたこと、(2)についてはコンビニ経営とは無関係に自宅の私用パソコンで「業務」を行っていたこと、(3)については、契約は、社名ではなく、個人名で締結されていること、会社が取り扱っている商品をAのウェブサイトに掲載して販売しようとしていたというような事情は認められないことから、全員が「事業所等によらないで行う個人」としてAの業務を行っていたものと認められました。


【解除(クーリング・オフ)】

 クーリング・オフは、契約書面を受領した日から起算して20日以内に書面により通知しなければなりません(特商法58条1項)。
 しかし本件では、事業者は利用者に対し、特商法55条2項所定の書面を交付していませんでした。書面不交付、書面不備の場合には、クーリング・オフの期間は進行しないとされています。
 そこで利用者(原告)は、事業者(被告)に対し、書面で本件各契約を解除(クーリング・オフ)するとの意思表示をしたことから、契約解除が認められました。



氏名:高橋弘泰

生年:1970年生

弁護士登録年・弁護士会:
2009年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1994年東京大学法学部卒業

得意分野等:
東京都に勤務の後、大宮法科大学院に入学し、法曹を目指す。行政事件、刑事事件など公益的な活動に力を入れる一方、民事分野でも敷居が低く利用しやすいと同時に、内容的には決して妥協しない良質な法的サービスの提供に努めていきたいと思います。

所属事務所:
法律事務所フロンティア・ロー http://frontier-omiya.jp/index.html

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