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派遣労働者の解雇についての裁判例

テーマ:解雇・退職

2012年5月 2日

解説者

弁護士 高橋弘泰

 労働者派遣法の改正について以前のコラムで説明しましたが、今回は派遣労働者の解雇についての裁判例を紹介します。


 この事案(横浜地方裁判所平成23年1月25日判決)は、人材派遣会社(被告)との間で雇用契約を締結し、派遣労働者として就労していた労働者(原告)が解雇されたが、整理解雇の要件を満たしておらず無効であると主張して、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めたというものです。


 原告は、入社後、工場に派遣され、電話交換機の検査業務等に従事し、2年目からは新規交換機システムの取りまとめ役に任命されるようになりました。やがて工場生産技術部門に派遣替えになり、予算五千万円程度の中型起業案件を起業立案から予算管理、設備稼働まで任されるようになりましたが、派遣先の経営上の都合により、初めて待機社員となりました。


【整理解雇の有効性については4つの要素が考慮される】

 会社側の都合による整理解雇については、(1)人員削減の必要性、(2)解雇回避努力、(3)人選の合理性、(4)手続の相当性という4要素を考慮した上で有効性を判断するというのが裁判所の考え方です。このケースでも、この枠組みに沿って判断がなされました。以下、具体的に見てみます。


【人員削減の必要性】

 会社の売上げ及び売上総利益はいずれも前年度より減少し、待機社員となる技術社員の待機率が2割近くになっていました。こうした待機社員の増加が、派遣事業を目的とする被告の経営に影響を及ぼすことは認められています。


 その一方で、(1)過去数年間は一貫して黒字であったこと、(2)本件解雇予告通知日から約10か月後には求人を行うとともに、退職者に声をかけて復職させていたこと、(3)関係会社に資金を貸し付け、多額の債権放棄をしていたことなどの事情を総合すれば、「被告の経営状態は好ましくない方向に推移していたものと認められるものの、本件整理解雇にあたり、その時点で、被告に切迫した人員削減の必要性があったとまでは認めるに足りない」としました。


【解雇回避努力】

 支店・本社の部署を統廃合等して賃料及び人件費を削減したこと、役員報酬及び間接社員の給与の減額をしたこと、新卒採用人数を抑制・中止したこと、間接社員や技術社員を対象として希望退職者の募集や退職勧奨を行っていたことなど、会社が解雇を回避するために、一定の措置を講じていたことは認められました。


 しかし、会社として整理解雇当時に人員削減の目標を定めていたかも明らかではなく、また、技術社員に対する希望退職者の募集を一切行わないまま、本件整理解雇を実施することを決定し、その解雇通知を行っているなどの事情によれば、人員削減の手段として整理解雇を行うことを回避するため、希望退職の募集など他の手段により本件整理解雇を回避する努力を十分に尽くしたとは認められないとされました。


【人選の合理性】

 整理解雇の対象となる人選の合理性については、年度末時点で待機状態にあり翌年度に新規配属されない、または自己都合退職しないというだけで、これまでの就業状況等を一切考慮せず待機社員数百名を本件整理解雇の対象としていたことから、整理解雇の人選基準が、一般的に合理性を有するとは認め難いとされました。


【手続の相当性】

 (1)組合と団体交渉及び事務折衝を継続し、同日、人員削減の条件等について合意に達したこと、(2)解雇の対象者に対し、人員削減についての説明会を開催し、説明会で出された質問事項については後日従業員に対し回答書を電子メールで送付して説明したことなどの事情から、手続に関しては被告の対応が明らかに相当性を欠くとまではいえないとされました。


【まとめ】

 裁判所は、以上の4要素を総合的に勘案した上で、本件整理解雇の一環としてなされた本件解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められないとし、本件解雇は無効であって、原告は被告に対して、労働契約上の権利を有する地位にあると認められると結論付けました。


 この裁判例を含む近時の裁判例を見るかぎり、派遣社員であるという理由だけで解雇無効についての判断が厳しくなったり緩くなったりする傾向があるとまではいえませんが、人員削減については、整理解雇の時点で「切迫した必要性」があったことが求められています。解雇回避義務についても、一定の措置を講じていたものの、人員削減の目標を定めず、希望退職者の募集を行わなかった点で、十分な努力義務を果たしていないと判断されています。結果的に、4要素のうち3つの要素を満たしていないとされており、本件は解雇無効と判断される一つのパターンであるといえます。



氏名:高橋弘泰

生年:1970年生

弁護士登録年・弁護士会:
2009年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1994年東京大学法学部卒業

得意分野等:
東京都に勤務の後、大宮法科大学院に入学し、法曹を目指す。行政事件、刑事事件など公益的な活動に力を入れる一方、民事分野でも敷居が低く利用しやすいと同時に、内容的には決して妥協しない良質な法的サービスの提供に努めていきたいと思います。

所属事務所:
法律事務所フロンティア・ロー http://frontier-omiya.jp/index.html

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