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法律コラム


[人事・労務|2012年2月23日]
弁護士 高橋弘泰

パワハラ関連の裁判例

弁護士 高橋弘泰

 今回は、職場でのいじめ・嫌がらせやいわゆるパワーハラスメントについて実際に裁判で争われた例について紹介したいと思います。パワハラについては、降格や解雇といった労働契約関係における会社の責任が問われる場合や、上司や同僚の嫌がらせ的な言動による不法行為責任が問われる場合など、いくつかの類型がありますが、メンタルヘルスの説明の際でも説明した「安全配慮義務違反」も問題になります。

【降格や配転など】(東京地判平成7年12月4日)

 この事案は、降格や配転が不法行為とされたケースです。
 事案の概要は、勤務先Yの管理職(課長)だったXが、ライン上の指揮監督権を有さないオペレーションズテクニシャンに降格させられ、その後、総務課の受付に配転させられるという一連の降格が嫌がらせ的人事であり、Xら中高年管理職を退職に追い込む意図をもってなされた不法行為であるとして、Yに対し慰謝料の支払いを求めたというものです。判決では、請求の一部が認容され、YがXに慰謝料100万円を支払うことが命じられました。

 判決は、Xのオペレーションズテクニシャンへの降格については、会社の人事権の裁量の枠内にあるものとして、不法行為を認めませんでした。その理由としては、(1)会社がずっと赤字基調にあり、厳しい経営環境の下、オペレーション部門の合理化が急務となっていたこと、(2)新経営方針に積極的に協力しなかったXを含む多数の管理職を降格させたものであること、(3)新経営方針の推進・徹底が急務とされていたことから、これに積極的に協力しない管理職を降格する業務上・組織上の高度の必要性があったと認められること、(4)Xと同様に降格発令をされた多数の管理職らは、いずれも降格に異議を唱えておらず、Yのとった措置をやむを得ないものと受け止めていたと推認されること等を挙げています。

 一方、その後の総務課(受付)の配転については、裁量権の範囲を逸脱した違法なものとして、会社のXに対する不法行為を認めました。その理由としては、総務課の受付は、それまで20代前半の女性の契約社員が担当していた業務であり、Xの旧知の外部者の来訪も少なくない職場であって、勤続33年に及び、課長まで経験したXにふさわしい職務であるとは到底いえないことが挙げられています。判決は、これによりXが著しく名誉・自尊心を傷つけられたであろうことは推測に難くないとして、「Xに対する総務課(受付)配転は、Xの人格権(名誉)を侵害し、職場内・外で孤立させ、勤労意欲を失わせ、やがて退職に追いやる意図をもってなされたものである」と認定しました。先の降格処分では経営改革の高度の必要性という客観的要素が考慮されているのに対し、配転については「退職に追いやる意図」をもってなされたかどうかという主観的な要素が考慮されています。

【隔離及び自宅研修】(東京高判平成5年11月12日)

 この事案は、研修を命じる業務命令が不法行為とされたケースです。
 事案の概要は、学校法人Yの設置する高等学校の教諭Xが、それまで担当していた学科の授業、クラス担任等一切の仕事を外された上、何らの仕事も与えられないまま4年半にわたって別室に隔離され、さらに7年近くにわたって自宅研修をさせられ、年度末一時金の支給停止等の差別的取扱いをされているのは不法行為であるとして慰謝料の支払いを求めたというものです。判決では、請求の一部が認容され、Yに慰謝料600万円の支払いを命じました(一審は慰謝料400万円)。

 判決の内容は、YがXに対し行ってきた不利益な取り扱い(仕事外し、職員室内隔離、自宅研修という過酷な処遇を行い、賃金等の差別)を認定し、その原因について、「多分に感情的な校長の嫌悪感に端を発し、その後些細なことについての行き違いから、Y側が感情に走った言動に出て、執拗とも思える程始末書の提出をXに要求し続け、これにXが応じなかったため依怙地になったことにあると認められる」とした上で、「その経過において、Xのとった態度にも反省すべき点がなかったわけではないが、この点を考慮しても、Yの行った言動あるいは業務命令等を正当づける理由とはならず、その行為は、業務命令権の濫用として違法、無効であることは明らかであって、Yの責任はきわめて重大である」と述べています。

 慰謝料600万円というのはこの種の事案においては高額といえます。このケースでは、研修命令だけではなく、賃金の差別その他の不利益な取り扱いが長期に及び、かつその程度も重大であることから、Xの受けた精神的苦痛の度合いに応じて、このような結論となったと考えられます。具体的には、長年何らの仕事も与えられず、職員室内で一日中机の前に座っていることを強要されたり、自宅研修の名目で職場からも完全に排除され、かつ、賃金も昭和54年のまま据え置かれ、一時金は一切支給されないといった事情がありました。ここまでくると、業務命令に名を借りたパワーハラスメントと言わざるを得ないでしょう。

氏名:高橋弘泰

生年:1970年生

弁護士登録年・弁護士会:
2009年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1994年東京大学法学部卒業

得意分野等:
東京都に勤務の後、大宮法科大学院に入学し、法曹を目指す。行政事件、刑事事件など公益的な活動に力を入れる一方、民事分野でも敷居が低く利用しやすいと同時に、内容的には決して妥協しない良質な法的サービスの提供に努めていきたいと思います。

所属事務所:
法律事務所フロンティア・ロー http://frontier-omiya.jp/index.html

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