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カルテルと独禁法

テーマ:契約・取引

2011年7月22日

解説者

弁護士 石井邦尚

 2011年7月、自動車部品会社が、部品の販売価格をめぐりカルテルを結んだという独占禁止法(独禁法)違反の疑いで公正取引委員会から立入検査を受けたという報道がなされました。報道によると、自動車部品会社らは、複数の品目で、自動車メーカーの受注にあわせて、予め見積額を調整していたと疑われているとのことです。


【カルテルと独禁法】

 独禁法は、事業活動の不当な拘束を排除して公正かつ自由な競争を促進し、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的として、以下の3類型を禁止しています。


  • (1)私的独占(2条5項)
  • (2)不当な取引制限(2条6項)
  • (3)不公正な取引方法(2条9項)

 前回は、このうち、(3)不公正な取引方法の一つである優越的地位の濫用について解説しました。


 今回のテーマであるカルテルは、(2)不当な取引制限に該当します。
 カルテルとは、契約や協定、口約束など名目は問いませんが、本来は競争すべき事業者らが申し合わせて、共同して価格を決定したり、引き上げたりする、生産数量や販売数量、販売地域を取り決めるなどして、競争を実質的に制限する行為です。カルテルは、競争によって商品やサービスの価格・生産量などが決まる市場メカニズムを阻害するもので、商品価格を不当につり上げ、かつ非効率な事業者を温存して経済を停滞させることから、日本に限らず、世界各国で規制されています。


 なお、国や地方公共団体の公共工事や物品の公共調達などの入札に参加する事業者らが、事前に相談して、受注業者、受注金額などを決めてしまう入札談合も不当な取引制限の一類型です。
 カルテルや入札談合などの不当な取引制限を行った場合、排除措置命令(違反行為をすみやかに排除するよう命ずる行政処分)や、課徴金納付命令が出されます。排除措置命令に従わない場合、事業者に刑事罰も科されます。


 カルテルや入札談合に対する課徴金の額は平成15年に大幅に引き上げられ、平成21年の独禁法改正では、カルテルや入札談合の主導的事業者に対する課徴金上乗せ制度も導入されています。
 カルテルや入札談合の課徴金は、一つの案件で1社あたり数十億円、合計で100億円を超えるようなケースも少なくありません。


【カルテルと課徴金減免制度】

 カルテルや入札談合に関与した事業者らが、違反内容を公正取引委員会(公取委)に自主的に報告した場合、課徴金が減免されるという課徴金減免制度が設けられています(7条の2・10項以下)。なお、前回解説した優越的地位の濫用については、課徴金減免制度はありません。
 課徴金減免制度では、早く報告した事業者ほど、課徴金の減額率が大きくなる仕組みとなっています。減額の対象となる事業者は最大で5社です。


 欧米では、以前からこうした制度がありましたが、日本では平成18年に導入されました。
 従来は、社内調査でカルテルや入札談合の事実を発見した企業が、自ら公取委へ申告するインセンティブに乏しい、特に直接的な経済なインセンティブは皆無という仕組みでした。一方、カルテルや入札談合は秘密裏に行われ、発見が困難であり物証も乏しいという問題がありました。


 そこで、事業者が自ら報告することにインセンティブを与え、カルテルや入札談合の発見と解明を容易にして、カルテルや入札談合を早期に排除する=競争秩序を早期に回復することを目的として、課徴金減免制度が設けられました。
 当初は、日本の企業風土において課徴金減免制度が十分に機能するか疑問視する見方もありましたが、平成22年度の申請件数は131件、制度導入(平成18年1月)から平成22年度までの累計で課徴金減免制度の適用が公表された事件数は58件、適用された事業者数は134社となっており、順調に定着してきていると言えます。


 社内調査等でカルテルや入札談合を発見したにもかかわらず、すみやかに報告しなかったために課徴金減免制度が適用されず、多額の課徴金を納付することとなったような場合、取締役の責任(善管注意義務違反)が問われかねません。
 企業経営者や役員としては、カルテルや入札談合に加わらないようにすることはもちろん、万が一、(一部の役員や従業員らの行動により)カルテルや入札談合に加わっていたことが判明した場合は、課徴金減免制度の利用を視野に入れて、すみやかに適切な対応をとることが求められます。


氏名:石井邦尚

生年:1972年生

弁護士登録年・弁護士会:
1999年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1997年東京大学法学部卒業、2003年コロンビア大学ロースクールLL.M.コース修了

得意分野等:
米国留学から帰国後に「挑戦する人(企業)の身近なパートナー」となるべくリーバマン法律事務所を設立、IT関連事業の法務を中心とした企業法務、新設企業・新規事業支援、知的財産などを主に取り扱う。留学経験を活かし、国際的な視点も重視しながら、ビジネスで日々発生する新しい法律問題に積極的に取り組んでいる。

所属事務所:
リーバマン法律事務所 http://www.rbmlaw.jp/

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