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法律コラム


[取引・債権回収|2011年7月15日]
弁護士 石井邦尚

独禁法上の優越的地位の濫用と高額の課徴金

弁護士 石井邦尚

 6月に、中国地方の食品スーパーを経営する会社が独占禁止法上の優越的地位の濫用(2条9項5号)に該当する行為を行っていたとして、公正取引委員会から同社に対し、排除措置命令(20条2項)とともに、2億2216万円もの課徴金納付命令(20条の6)が出されました。この件は、課徴金が高額だったこともあり、注目されました。

【独禁法上の優越的地位の濫用とは】

 独占禁止法(独禁法)は、事業活動の不当な拘束を排除して公正かつ自由な競争を促進し、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする法律です。
 そして、独禁法では、(1)私的独占(2条5項)、(2)不当な取引制限(2条6項)、(3)不公正な取引方法(2条9項)の3類型が禁止されています。

 優越的地位の濫用は不公正な取引方法の一つで、取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、不当に、次のいずれかの行為をすると該当します(2条9項5号)。

  1. イ 継続して取引する相手方に対して、取引の対象以外の商品やサービスを購入させる。
  2. ロ 継続して取引する相手方に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させる。
  3. ハ 取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み、取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ、取引の相手方に対して取引の対価の支払を遅らせ、若しくはその額を減じ、その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施する。

【本件で問題となった行為】

 今回の件で優越的地位の濫用に該当する独禁法違反行為として問題とされたのは、次のような行為です。

  1. (1)新規開店、全面改装、棚替え等に際し、商品の納入業者に商品の移動、陳列、補充、接客等の作業を行わせるため、納入業者の従業員等を派遣させていたこと。これは、上記のロに該当します。
  2. (2)催事等を実施する際に、納入業者に金銭を提供させていたこと。これは、上記のロに該当します。
  3. (3)独自に定めた販売期限を経過した商品を、納入業者に返品していたこと。これは、上記のハに該当します。
  4. (4)季節商品の販売時期終了等に伴って割引販売を行った商品や在庫整理問うにより割引販売を行った商品について、仕入れ価格の50%相当額や割引販売で割引をした額の相当額を、納入業者に支払うべき代金の額から差し引いていたこと。これは、上記のハに該当します。
  5. (5)納入業者に対し、クリスマスケーキ等を購入させていたこと。これは、上記のイに該当します。

【違反行為と公正取引委員会の調査、排除措置命令】

 独禁法違反行為が行われている疑いがある場合、公正取引委員会(公取委)が、事業者への立入検査、事情聴取などの調査を実施します。違反行為が認められた場合、公取委は排除措置命令や課徴金納付命令の内容を決めますが、命令を行う前に、その命令内容を事前に事業者に通知して、事業者に意見申述・証拠提出の機会を与えます。それを踏まえ、公取委は、違反行為の認定と命令内容を確定し、排除措置命令や課徴金納付命令を出します。
 排除措置命令は、違反行為をすみやかに排除するよう命ずる行政処分です。排除措置命令が出され、確定した後にも事業者がこれに従わない場合は、刑事罰が課されます。

【課徴金納付命令と多額の課徴金】

 課徴金納付命令は、課徴金を納めるよう命じる行政処分です。
 課徴金の額は、原則として
 違反行為に係る期間中の対象商品又は役務の売上額又は購入額 × 課徴金算定率
という算定式により計算されます。

 課徴金算定率は、違反行為の類型及び業種(製造業等、小売業、卸売業)等により定まりますが、優越的地位の濫用については、業種にかかわらず1%とされています。
 また、「違反行為に係る期間」は、最長で3年となっています。ただし、優越的地位の濫用に対しては平成21年の独禁法改正により課徴金納付命令が定められたことから、経過措置により、改正法が施行された平成22年1月1日よりも前の期間の分については、課徴金は課されないこととなっています。

 今回の件の排除措置命令書によると、公取委は、平成22年5月18日に立入検査を行い、翌19日以降は違反行為は行われていないということなので、平成22年1月1日から5月18日までの約4ヶ月半の期間における「対象商品又は役務の売上額又は購入額」が計算の基礎となったことになります。基準は利益額ではなく「売上額又は購入額」であることから、1%であっても、本件のように多額になり得るのです。

 本件では、違反行為自体は、遅くとも平成19年1月以降行われていたと認定されており、平成22年1月1日よりも前に遡れないという制限がなければ、課徴金の額は大幅に大きくなっていた可能性があります。

 優越的地位の濫用は、それほど規模の大きくない会社でも違反をしてしまう可能性があります。厳しい経営環境が続いている中、過去3年分に遡って売上額の1%相当額を支払うというのは、相当に大きな負担です。独禁法改正で課徴金納付命令が定められたことにより、優越的地位の濫用の問題は、企業経営にとってその存続にも関わる大きな法的リスクとなっていることを自覚し、場合によっては従来からの取引慣行等を見直す必要もあります。

氏名:石井邦尚

生年:1972年生

弁護士登録年・弁護士会:
1999年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1997年東京大学法学部卒業、2003年コロンビア大学ロースクールLL.M.コース修了

得意分野等:
米国留学から帰国後に「挑戦する人(企業)の身近なパートナー」となるべくリーバマン法律事務所を設立、IT関連事業の法務を中心とした企業法務、新設企業・新規事業支援、知的財産などを主に取り扱う。留学経験を活かし、国際的な視点も重視しながら、ビジネスで日々発生する新しい法律問題に積極的に取り組んでいる。

所属事務所:
リーバマン法律事務所 http://www.rbmlaw.jp/

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