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法律コラム


[インターネット|2011年2月17日]
弁護士 石井邦尚

インターネット上の発言と法的責任:パブリシティ権

弁護士 石井邦尚

 少し売れ始めた若手芸能人を応援しようと、自社のホームページに応援メッセージと共にその芸能人の写真や映像を掲載する。自分で撮影した写真・動画であれば、著作権上の問題は生じませんが、こうした行為に、他に何か問題はないでしょうか?

【パブリシティ権】

 芸能人などの有名人の芸名や肖像には、パブリシティ権と呼ばれる権利が発生しており、第三者が勝手にこれらを用いることはできません。
 パブリシティ権というのは、裁判例では、「芸能人の氏名・肖像のもつ顧客吸引力という独立した利益ないし価値を排他的に支配する財産的な権利」とされています(「おニャン子クラブ事件」東京高裁判決)。

 多くのCMや広告に芸能人が登場することにも示されているように、芸能人の名前や肖像を利用することにより、会社や商品のイメージが向上するなどして、会社・商品の認知度アップ、売上アップにつながります。また、芸能人の芸名や写真などを付した商品が、それらを付していない通常の商品よりも多く売れる、高く売れるということはよくあります。このような効果を生み出す力を、「顧客吸引力」と呼んでいます。

 芸能人の顧客吸引力は、芸能人本人や所属プロダクションなどの努力と投資の結果、長い時間をかけて生み出されるものです。しかし、上記おニャン子クラブ事件では、おニャン子クラブのメンバーの写真を無断で利用したカレンダーが作成され、販売されました。もちろん、芸能人やプロダクションに対価は支払われていません。このように、苦労して(あるいは大きなリスクを伴う投資をして)ようやく売れ始めたと思った途端に、第三者に勝手に芸名や写真を利用されてはたまりません。
 そこで、法律に明文があるわけではありませんが、裁判例でパブリシティ権が認められ、顧客吸引力という経済的な価値を排他的に支配することが認められているのです。

【パブリシティ権を侵害した場合、どうなるか】

 パブリシティ権を侵害する行為は、民法上の不法行為として、損害賠償の対象となります。また、そのような行為の差止請求が認められることも多いです。

 上記おニャン子クラブ事件では、5人のメンバーが原告となって訴訟を提起しましたが、一人あたり10万円の損害賠償が認められた上、作成されたカレンダーの販売差止めと廃棄が命じられました。なお、訴訟手続上の理由で損害賠償額は一人10万円となりましたが、判決理由の中では、一人あたり15万円の損害が認められており、当時のメンバーが18人だったので、全員が原告となっていれば、最大で15万円×18人=270万円の損害賠償が認められていた可能性があります。この金額は、仮に通常の使用許諾がなされていた場合の使用許諾料相当分として計算されています。

【パブリシティ権侵害の判断基準】

 前回、自分の肖像(容姿)をみだりに他人に撮影されたり使用されたりしない権利である肖像権の解説をしました。パブリシティ権も肖像権も、自分の写真を勝手に使用されないようにするという点では類似しています。
 しかし、肖像権はプライバシー権の一種であり、人格的な利益を保護するものです。これに対し、パブリシティ権は顧客吸引力という経済的な価値、財産的な利益を保護するものであるという違いがあります。

 この違いが、パブリシティ権侵害か否かの判断にも影響します。芸能人の氏名や写真をまったく利用することができないということでは、新聞や雑誌の記事も制約を受け、表現の自由との関係で問題です。そこで、パブリシティ権侵害か否かは、氏名や肖像の使用態様などを総合的に考慮して、「氏名・肖像等のパブリシティ価値に着目しその利用を目的とするものであるといえるか否か」などといった基準により判断されます。
 とはいえ、自社や自社商品の宣伝のために芸能人の写真を利用したり、芸能人の写真を利用したグッズを作成して販売したりしている場合はパブリシティ権侵害という判断にあまり迷いませんが、限界的な事例ですと、判断が難しい場面が出て来ます。

 冒頭で、芸能人を応援するために自社ホームページにその写真を掲載するという例をあげました。このような例の場合、判断に若干迷いますが、「応援したい」という動機はともかく、客観的には、その芸能人の顧客誘引力により自社ホームページへ閲覧者を導いているということは否定しづらいので、パブリシティ権の侵害とされるケースが多いと思われます。
 また、これが仮に個人のブログで芸能人を応援している場合であったとしても、顧客誘引力により閲覧者を自分のブログに導いているという面があることは否定することは難しいように思います。「顧客誘引力」を商業的に利用していないからといって、パブリシティ権侵害とならないわけではないので注意が必要です。

氏名:石井邦尚

生年:1972年生

弁護士登録年・弁護士会:
1999年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1997年東京大学法学部卒業、2003年コロンビア大学ロースクールLL.M.コース修了

得意分野等:
米国留学から帰国後に「挑戦する人(企業)の身近なパートナー」となるべくリーバマン法律事務所を設立、IT関連事業の法務を中心とした企業法務、新設企業・新規事業支援、知的財産などを主に取り扱う。留学経験を活かし、国際的な視点も重視しながら、ビジネスで日々発生する新しい法律問題に積極的に取り組んでいる。

所属事務所:
リーバマン法律事務所 http://www.rbmlaw.jp/

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