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法律コラム


[インターネット|2011年2月 3日]
弁護士 石井邦尚

インターネット上の発言と法的責任:プライバシー侵害

弁護士 石井邦尚

 インターネット上の発言と法的責任について、前回まで4回にわたり名誉毀損を扱いましたが、今回はプライバシー権の侵害について解説します。

【プライバシー権】

 「プライバシー権」は法的に保護されており、これを侵害した場合、民法上の不法行為として、損害賠償などの対象となります。プライバシー権とは、「私生活をみだりに公開されないという法的保障ないし権利」で、人格権の一種です。名誉毀損では、社会的評価を低下させる行為かどうかが問題となりましたが、プライバシー権の侵害には、社会的評価の低下は関係ありません。

 プライバシーとして保護されるのは、個人情報のうち、一般人を基準として、通常は他人に知られたくないと思うようなものです。

 プライバシー権の侵害は、インターネットが普及する前から、数々の裁判などで問題となっています。プライバシーに関するはじめての判決とされているのは、三島由紀夫の小説「宴のあと」についての1964年の東京地方裁判所判決です。過去には、小説の中でのプライバシー公開や、大学で開催された中国主席の講演会の参加者名簿を警視庁に提出したことなどがプライバシー権の侵害として問題となりました。

 インターネット上の言論についても、こうした過去の事例と同様に取り扱われることになります。ただ、これまでと大きく事情が異なるのは、一般の人々であっても、容易に他人の私事を公開してプライバシー権を侵害することができる(うっかり侵害してしまう危険性がある)ことです。

 例えば、ツイッターでの「つぶやき」は気軽に書き込むことできますが、それは独り言ではありません。軽い気持ちで他人の私事に関することをツイッターやブログに書き込んだところ、それが元でトラブルに発展するという可能性は否定できません。

 例えば「今、知人のAさんを有楽町の○○で見かけた、そのあと、女性と一緒に映画館に入っていった」という程度の書き込みでも、状況次第では、Aさんが大きな不利益を被り、書き込んだ人とのトラブルに発展する可能性があります(もっとも、このような情報が法的に保護される「プライバシー」に該当するかどうかは、ケース・バイ・ケースで検討するしかありませんが)。

【私事を公開すれば常にプライバシー侵害となる?】

 では、他人のプライバシーを少しでも公開すると、常にプライバシー侵害となるのでしょうか?

 私事の公開をプライバシー侵害として規制することは、表現の自由を制限することでもあります。あらゆるプライバシー情報の公開を禁止することは弊害が大きすぎます。例えば、政治家の私生活に関することは一切報道できないというのでは行き過ぎです。

 そこで、裁判では一般に、ある事実を公表されないという利益と、これを公表する理由とを比較衡量して、前者(公表されない利益)が後者(公表の理由)を上回る場合に、民法上の不法行為となるとされています。公表の理由が、公共の利害に関するような事実であるか否かは重要な考慮要素となります。こうした観点から、政治家に関する報道などは、プライバシーに関するものであっても、公共の利害に関するものとして公表の理由が優越し、プライバシー権侵害とはならないケースが多いでしょう。

 また、確立した判例となっているとまでは言えませんが、政治家や芸能人のような公の人物については、一定限度までは通常人なら享受しうるプライバシーの権利を放棄したものとみるべきという見解もあります。現実に、芸能人の記事では、一般人ならプライバシー権侵害となるようなものも少なくありません。

 ただし、こうした見解でも、全てのプライバシーが放棄されていると考えているわけではないので、注意が必要です。芸能人であっても、自宅の情報を公表するような行為はプライバシー権侵害となる可能性が高いと思われますし、明らかにプライベートの行動の一挙手一投足をツイッターに書き込むような行為も、場合によっては問題になる可能性があるでしょう。

【プライバシー侵害に対する救済】

 プライバシー権が侵害された場合、民法上の不法行為として、損害賠償請求が認められます。
 また、プライバシーはいったん侵害されると、いくら損害賠償がなされても、完全な回復は困難です。そうしたことも配慮されていると思われますが、プライバシーを侵害する行為に対する差止め、具体的には小説の出版の差止めが認められた裁判例もあります。ただし、差止めを認めることは、表現の自由をそれだけ強く制限することでもあるので、損害賠償と比べると、差止めが認められるためのハードルは高いと言えます。

 名誉毀損でもプライバシー侵害でも言えることですが、インターネット上の発言が問題視された事案の裁判例や報道などを見ていると、独り言を言っているくらいの気持ち、あるいは身近な友人との軽い世間話や井戸端会議の延長くらいの軽い感覚でブログやツイッターに書き込んだのではないかと思われるケースが少なくないように感じます。
 ブログやツイッターに書き込むときは、パソコンやスマートフォンの画面に向かって独りで書き込むことが多いことも影響しているのかもしれませんが、自分のその書き込みの先には、それこそ全世界の人々がいるということを自覚する必要があると思います。

氏名:石井邦尚

生年:1972年生

弁護士登録年・弁護士会:
1999年弁護士登録、第二東京弁護士会所属

学歴:
1997年東京大学法学部卒業、2003年コロンビア大学ロースクールLL.M.コース修了

得意分野等:
米国留学から帰国後に「挑戦する人(企業)の身近なパートナー」となるべくリーバマン法律事務所を設立、IT関連事業の法務を中心とした企業法務、新設企業・新規事業支援、知的財産などを主に取り扱う。留学経験を活かし、国際的な視点も重視しながら、ビジネスで日々発生する新しい法律問題に積極的に取り組んでいる。

所属事務所:
リーバマン法律事務所 http://www.rbmlaw.jp/

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