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会社法改正と役員・使用人の報酬

テーマ:役員・株主

2006年10月 5日

解説者

弁護士 南繁樹

一 会社法の制定

新しい会社法の施行に伴い、会社の役員・従業員に支払う報酬・給与の税務上の取扱いが大きく変わっていますので、ご紹介します。


二 役員・使用人報酬の損金算入の趣旨

会社は、取締役や監査役との間で委任契約を締結して経営やその監督を委任し、また、業務遂行のために従業員(税法上は「使用人」との用語が用いられます。)を雇用します。これらの対価として、会社は役員や従業員に報酬・給与を支払うところ、この報酬・給与は、会社の経営上必要な費用ですから、会計上は費用として計上されます。
では、税務上はこれらの報酬・給与はどのように取り扱われるでしょうか。 法人税法 上は、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従って計上された費用は損金に算入されるのが原則ですが(第22条第3項・第4項)、報酬・給与は「別段の定め」(同条第3項)により、損金算入が制限されています。というのも、多くの中小企業では、会社のオーナーである株主が役員・従業員を兼ねているため、報酬・給与を支払うことは、会社の実質的収益を法人税が課されないまま株主に分配する方法(隠れた利益処分)となりうるからです。


三 役員給与の損金算入の制限

従来、役員に対する報酬・賞与については、法人税法上、報酬については原則として損金算入、賞与については損金不算入という枠組が取られていました(平成 18年度税制改正前法人税法第34条3項、第35条1項)。ところが、会社法においては、役員への報酬や賞与は「報酬」として一本化されました(会社法第 361条第1項、第453条)。
そこで、改正税法は、役員に支払う「報酬」「賞与」を、「役員に対して支給する給与」(役員給与)としてまとめ、原則として損金不算入とした上で、以下の3種類の例外に該当する場合のみ損金算入を認めました(法人税法第34条第1項)。
第一に、「定期同額給与」です(同項第1号)。毎月定額で支払う給与がこれに当たります。
第二に、「事前確定届出給与」です(同項第2号)。例えば、役員年俸を16分割して、夏と冬にそれぞれ2箇月分上乗せするような場合がこれに当たります。これは、税務署への届出を、<1>会計期間開始の日から3ヶ月以内(3月決算の会社では6月末日まで)又は<2>職務執行開始前までに行わなければ、損金算入が許されません。
第三は、「利益連動給与」です(同項第3号)。これは、業務執行役員に対する給与で、算定方法が、その事業年度に関する指標を基礎として客観的に算定されていることなどの要件を満たす必要があります。上場企業等の有価証券報告書提出会社に限られます。


四 ストック・オプションの費用計上と損金算入

ストック・オプションを役員や従業員に付与する場合、従来は、会計上、新株発行などと同様の資本取引と考えられ、毎期の損益には影響しないものとされていました。しかし、人件費を費用として計上しない点が批判され、その結果、ストック・オプションについても、その公正な対価を、株式報酬費用として費用計上することが義務づけられました(企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」)。
以上の会計基準の改正に対応して、税法上も、会社が個人から受ける役務の提供の対価として新株予約権を発行した場合において、「新株予約権の発行の時の価額に相当する金額」を損金算入できることになりました(法人税法第54条第1項、 法人税法施行令 第111条の2第3項)。但し、損金算入のタイミングは、取得されたストック・オプションが行使され、権利行使者について給与所得等の課税がなされた時点(「給与等課税事由」の発生時)であって、付与時ではありません。
また、ストック・オプションを取得する役員・従業員個人の所得税が(ストック・オプション行使によって取得した)株式の譲渡時まで繰延べられる(猶予される)税制適格ストック・オプション( 租税特別措置法 第29条の2)については、会社における損金算入は許されません(法人税法第54条第2項)。


五 特殊支配同族会社における役員給与

会社であっても個人企業の色彩が強い「特殊支配同族会社」については、役員給与につき、役員の個人所得税における給与所得控除に相当する額について、会社における損金算入が許されず、課税が強化されています(法人税法第35条第1項)。


(2006年6月執筆)


南繁樹 (ミナミシゲキ)
弁護士 ( あさひ・狛法律事務所 )
(経歴)
1995年 東京大学法学部卒
1997年 弁護士登録(東京弁護士会)
2002年 米国ニューヨーク大学ロー・スクール修士(会社法)
2003年 同ロー・スクール修士(租税法)
2003年 ニューヨーク州弁護士登録
2005年 LEC会計大学院教授(租税法)

(著作)
主要論文 「有価証券報告書虚偽記載とディスクロージャー上の問題点」(ビジネス実務法務 2005年3月号)、「各種防衛策と新会社法の影響」(税務弘報2005年10月号)

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e-hoki.com LIMMにおける掲載時点(2006年7月4日掲載分)での執筆物であるため、その後の法改正等により、情報が古くなっている場合も、あり得ます。

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